第4話
「おばさん!」
そう言いながら若菜の家に上がり込む。小さい頃から一緒にいるからお互いの家にはよく上がったけど、最近はやっぱり少なくなってしまった。けどそんな事は今はどうでもいい。若菜の手を取りながらリビングに向かう。
「あら、渚君。久しぶりね。どうかしたの?」
「おばさん。単刀直入に訪ねます。若菜に何をしたの?」
「……何のこと?」
「とぼけないでください!もう全部分かっているんです。若菜の事」
「……そう。それなのによく生きていたわね。そうよ、私が若菜にあの人格を憑けたのよ」
「どうして!?若菜はそれのせいで苦しんでいるんですよ!」
「……今はそんな事を話している暇は無いんでしょう?」
「そんな事って……」
「それより、今は若菜のもうひとつの人格をどうにかする事が先でしょ?」
確かに……
「……分かりました」
「いい子ね。いい?渚君。若菜には今は名前を明かせないけど大昔の妖怪の人格を埋め込んでいるの。それは若菜が特別なんじゃなくて私の家系がそういう事を代々する家系だったの。この人格を守り、いつの日か完全に封じ込めるようにって」
「…………」
「怪異を封じ込めるには怪異の力を使いしかないわ。でも、あの人格を封じ込めるほどの怪異はそう無いの」
「……ありますよ。若菜の人格に匹敵する怪異が、ここに」
「やっぱりね。いえ……やっと、と言うべきね」
「やっと?どういう事ですか?」
「怪異は惹かれ合うのよ。どんだけ本人達が嫌がろうが怪異の超常の力が引き寄せ合うのよ。この街は特に怪異の力が強い。若菜の人格1人じゃ説明が聞かないくらい」
「それで待っていたんですか……あの人格に匹敵する怪異を……」
「代々しきたりで成人したらこの事を話すはずだったのよ……でも、若菜のあなたを思う心ともうひとつの人格が混ざりあって、適合してしまったのね」
「……どうすればいいんですか?」
「簡単よ。あの人格を屈服させればいい。それだけよ」
「どうやって?」
「さあ?屈服させた事がなかったから分からないわ」
「行き当たりばったりってわけですね」
「地下に空間があるわ。そこで儀式を執り行うわ」
「……分かりました」
「ひとつ言っておくわ。あなたは多分あの人格と1回会ったかもしれない。でも、儀式の時には奴も本気を出してくるわ。最初は快楽のための動いていたけど、今度は混じりっけなしの殺意を込めて」
「気をつけます。……今のアドバイスは儀式を執り行うものとしてですか?それとも……」
「……さあ、どうでしょね」
いったん区切ります