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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第4章 黒騎士の過去編
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第29話 過去編その29

シャフリンのパンチがジルドの頬を掠め空を切る、その瞬間に空を切った拳の先にあった街が拳圧によって半壊した。



「凄まじい威力だな……そう言えばお前は国民を愛してると聞いたが」



その言葉にシャフリンの表情が変わる、下をふと見るとそこには先程火炎魔法で燃やし尽くされた国民達がジルドの魔法によって蘇っている光景が視界に入ってきた。



ジルドはシャフリンの様子を見て不敵な笑みを浮かべる、彼の目的は戦力を増やすことでは無かった、国民を生き返らせれば少しだけでも隙ができる……シャフリンにダメージを与えるには十分過ぎる隙だった。



シャフリンに生じた一瞬の隙を突いて目の前に移動する、両の手には火球、その瞬間にシャフリンはかわせないと判断し、両の手で火の玉を掴んだ。



その瞬間に火球の爆発は手の中で最低限に抑えられる、ジルドの手も巻き込み自分だけではなく、ジルドにもダメージを与えられた……筈だがジルドは不敵な笑みを浮かべて居た。



「俺にダメージを与えたと思ったか?残念だな……後ろ、気を付けな」



その言葉にシャフリンは後ろで膨張する炎の魔力に気がつく、だが気が付いた頃にはもう既に遅かった。



「シャ、シャフリンさん!?」



白斗の声が響くと同時に凄まじい爆発が辺りを覆う、白斗は必死にエスフィルネを爆風と熱風から庇おうと覆いかぶさった。



だが爆風の影響が白斗には一切なかった……白斗は顔を上げると其処には超至近距離で爆発を受けた筈のシャフリンが前に立ちはだかり白斗達を庇うように爆風を受けていた。



「安心せい、儂は死にはせん……魔神族?ふん、格の違いと言うのを見せてやる……小僧、歯を食いしばれ」



「強がりを……?!」



シャフリンの言葉に嘲笑して余裕の表情を浮かべたかと思えばシャフリンを中心に凄まじい風が巻き起こる、先程とは比にならない魔力……シャフリンの強さは人の域を既に離れ、神にすら到達し得る強さだった。



上空で浮かんで居たジルドが一瞬にして地面に叩きつけられる、その攻撃にジルドはなにが起こったのかすら理解出来て居なかった。



「何処にそんな力が……」



覚醒したシャフリンの力に動揺を隠せないジルド、一旦態勢を立て直そうと後ろに下がるがシャフリンはその更に後ろを取り、一方的な状態になって居た。



「これがシャフリンさんの本気……」



見たことも無い次元の強さ、チートすぎるレベル……恐怖すら感じるレベルだった。



「どうした、その程度か?」



「ぐ……がっ……」



怒涛のラッシュで喋る暇すら与えない、ジルドの意識は既に飛びそうになって居た。



「終わりだ」



シャフリンが額に込めた渾身の一撃がジルドの体を貫く、そしてその瞬間にジルドは口から血を吐いてその場に崩れ落ちた。



返り血がシャフリンの体に多量に付着する、この勝負に決着が着いた……そう思った瞬間、シャフリンの体を赤色の棘が貫いた。



「な?!」



「油断したな……俺の血は硬質化が可能だ……楽しかったぞシャフリン」



「こん……なくらいで、儂を倒したつもりになっているのか?」



膝を震わせながらも立ち上がるシャフリン、だが魔法は解けかかり、戦う事すらもうでき無さそうだった。



「俺が戦った中で一番強かったぞ老兵、じゃあな」



ジルドがそう言い放つとシャフリンの体を突き刺す、その光景に白斗は絶望感でいっぱいだった。



あれ程強いシャフリンが殺された……ラインハルトの魔力も感じられない、レイブラにレスフィルも恐らく戦闘中、だがアーノルドは敵地に突っ込んだ……もうこの国には自分とエスフィルネしか居なかった。



「エス……フィルネ、逃げとけ」



「ん……?なんだお前」



震えた手で剣を握り近づいて来る白斗に疑問の表情で首をかしげた。



「俺が……俺がやるしか無いんだ、この街を、この国を守るには俺しか残って居ないんだ!」



剣を持つ手が尋常では無いほど震える、アーノルドの魔力、レイブラにレスフィルも……既に消えているのに気が付いて居た、だが彼に立ち向かうのが怖くて何処かで生きていると信じて居た、だがもうそれも無駄、エスフィルネを守る為には自分が立ち向かうしか無かった。



「確かに……もう生き残りはお前達2人、あのお方が出て来てはアーノルドとやらも話しにならんだな、だがお前は他に比べて弱すぎる、すぐ死ぬぞ?」



「そ、それでも!俺はエスフィルネを守る為に戦う!」



勝てないのは分かっている、だがせめてエスフィルネを逃す時間だけでも稼ぎたかった。



抜いた剣をジルドに向ける、そしてそれを見たジルドが剣を抜こうとしたその時、男の声が聞こえた。



「ジルド様、待ってください、ここは私に……」



何処からとも無く、大きな大剣を担いで現れた黒髪の少年、彼の風貌を見た瞬間白斗は転生者だと理解した。



「君も転生者だろ?ならどうだ、ここは転生者同士で決着を付ける、勿論君が勝てば見逃す……良いですよねジルド様」



「まあ面白そうだ、勝手にしろ」



特に興味を示すわけでも無く、めんどくさそうな表情で後方に腰を下ろした。



「それじゃあ自己紹介、私は黒木……じゃあ始めようか」



「悪いが俺はエスフィルネと共に生きなければならない……本気で行くぞ!」



剣を抜き黒木目掛け白斗は駆けていく、その時空は不穏な雲で覆われて居た。

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