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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第4章 黒騎士の過去編
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第17話 過去編その17

「ふぅ……結構時間掛かったな」



汗をエスフィルネに貰ったタオルで拭いながら地図を広げる、オージギア国の国境を超えて首都の街にやって来たは良いが予想通り外壁に囲まれて居て、通常であれば侵入は厳しそうだった。



高さは凡そ30メートル、壁の分厚さは20はある、しかも鉄製の壁と来たものだ、この世界には不釣り合いな建築物……と言うのだろうか、その外壁を前に白斗はため息を吐いた。



一先ず辺りをグルッと見回し入り口を探す、今の自分は飽く迄もさすらいの旅人、侵入には恐らく困りはしないだろう、だが問題は別にあった。



「問題は転生者だなぁ……」



転生者、しかも自分とは違う異能の力を持った……この転生者達を俺は区別をつける為に第二世代と呼んで居る、第二世代は恐らく最近転生したばかりの奴らの筈だった。



しかし不思議だった……ここ一年で何故、能力持ちの転生者が増え始めたのか、だがそれをここで考えるのも無意味だった。



「一先ず入り口に行くか」



何処までも果てしなく続く外壁を伝いながら白斗は入り口を探して歩いた。



しかし歩けど、歩けど、あるのは鉄の外壁のみ、するとその時前方方向に白斗より少し遅めのスピードで歩いて居るこの世界とは少し違った和服の様な服を着ている髪を後ろで結んだ黒髪の男が歩いていた。



まさか一人目の転生者がこんなにもあっさりと……一先ず白斗は剣を抜きやすい位置に変え、いきなり攻撃されても対応出来るよう男に近づいた。



「すみません、オージギアの人ですか?」



少し距離を取り後ろから声を掛ける、すると呼ばれた男は後ろを振り返った。



「如何にも、俺はオージギアの騎士だ、そう言うお前は何者だ?」



白斗の服装を見ながらそう尋ねてくる、見た所彼の方は転生者と気付いて居ない様子だった。



「この世界を旅してる旅人です、オージギアの国内も立ち寄りたいと思って訪れたんですけど入り口が分からなくて」



笑いながら男にそう言う、これで多少警戒心を解いてくれれば良いが……



「そうか、この国は良いとこだ、入り口ならここから城壁伝いに1キロ先の所にある、俺が案内しよう」



そう言って先導してくれる男、見た所警戒心も無く、普通の旅人と思い込んでくれた様だった。



俺の任務は飽く迄も転生者の能力や数を知り、生きて国に伝える事……オージギアに入らずとも彼から聞き出せれば良いが、今は普通の旅人という設定……何か怪しまれずに転生者の戦力を聞き出せないか考えていたその時、この国の外に居た人間だからこそ聞ける話を見つけた。



「そう言えばこの国とクーロディリスが争っているって本当なんですか?」



何気無く、世間話しの様な雰囲気で尋ねた。



「あぁ、まぁそうだな……旅人も間の悪い時に来たもんだ」



「やっぱりそうだったんですか、それで戦況は?」



話しの流れに沿う様に尋ね様とする、だがその時男の雰囲気が変わった。



「旅人のあんたが何故それを気にする……」



気が付けば男の剣に手が掛けられている、だがこう言う場面も想定済みだった。



白斗はカバンからペンと一冊の本を取り出すと自分はこの世界を旅してその時の記録を本にする作家という事を伝える、すると男は剣に掛けていた手を下ろした。



「旅の作家だったか、知らずとは言え剣に手を掛けた事を許してくれ」



礼儀正しく頭を下げる男、我ながらによく出来た作戦だった。



「間の悪い時期に来た俺にも非はありますよ、気にしないでください」



「そうか……それより今の戦況だったよな、それは近々起こる戦争で分かるさ」



「近々起こる戦争……?」



恐らく明日か明後日頃にクーロディリスに到着する軍隊の事、だが何なのだろうか……この絶対的な自信は、彼の目には勝利しか映っていない様子だった。



「クーロディリス国への進軍、その兵士の数は何か分かるか?」



「1万……ぐらいですか?」



聞いた情報によると1万5千、わざと数を外してみるが答えは想像以上だった。



「3万だ、それと旅人は魔法では無い力を信じるか?」



「魔法じゃない力?」



「そう、こんな力だ」



そう言って剣を抜き地面に刺す、そして手を合わせると地面に刺さっていた剣が一気に10本も増え宙に浮かんだ。



「魔法では無い別の力、通称異能力と言う、これを使える兵士が3000人、クーロディリスに向かってるんだよ、我が軍の勝ちは明白だ」



そう言って先に歩いて行く男、その言葉を聞き白斗は衝撃を隠せずに居た。



一人でもあそこまで苦戦した能力持ちが3000も……絶望だったがこの情報を早く国に伝えなければならなかった。



「ありがとう……」



剣をそっと抜き後ろから男に突き刺す、そして剣を蹴り抜くと白斗は付いた血を振り払った。



「な、何故だ、旅人……まさか?!」



「そのまさかだよ、人は簡単に信じるな」



そう言って男を絶命させる、ここからクーロディリスまでは全力で恐らく一日、白斗は剣をしまうと全速力で走った。

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