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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第4章 黒騎士の過去編
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第16話 過去編その16

ユーリが部屋に来てから1日が経った、怪我の調子は初日に比べれば、かなり回復に向かっているが異世界といっても前の世界と同じ身体、完治するまで凡そ3ヶ月と言った所だった。



こんな身体じゃ戦争に参加する事はおろか、まともに生活すら出来なかった。



ベットに寝転がり天井を見上げたまま溜息を吐く、エスフィルネは動けない白斗の代わりに料理の買い出しと言って出掛け、現在部屋で一人、ボーッと暇をして居た。



この身体では街に行ける訳もなく、何もする事なくただ天井を見つめ時間が過ぎて行く……それにしても昨日、ユーリの言った言葉がかなり引っかかって居た。



『死神に恋は許されない』



かつてして居たかの様な口ぶりだった。



彼女が恋を出来ないという事、それに加えて死神と呼ばれている事から予測すると恐らく恋人が何らかの形で死んだ……だから彼女は恋をしないのだろう、自分への罰として。



とは言え飽くまでも予測……結局の所ユーリに聞かなければ分からなかった。



「そろそろ動けるか……?」



ゆっくりと寝転がった状態から上半身を起こす、多少の痛みはあるものの、前日よりかは大分マシだった。



身体に巻かれた包帯に滲んだ血が傷の痛々しさを物語っている、だがこんな所でいつまでも寝転がっている訳には行かなかった。



ベットの側に置いてある机の上から剣を取ると服を着替える、そして着替え終わると壁を支えにゆっくりとドアの方向へ歩いた。



「ボロボロだな」



扉に手を掛けドアを開けるといつから居たのかレイブラが立って居た。



「昨日よりかは大分マシだけどな」



「そうか、なら良かった……それより」



普通の表情から途端に暗い表情となるレイブラ、何かを言おうとしている様子だが、その口は重かった。



「どうした?俺に何か用なのか?」



「実は……シャフリン様が呼んでいるんだが」



「シャフリンさんが?」



彼女の浮かない表情と言い、重い口調と言い、あまりいい呼び出しでは無さそうだった……だが何故ボロボロの俺を呼び出すのか、何の用なのかは全く見当がつかなかった。



一先ずレイブラに知らせてくれた礼を言い、危なっかしい足取りで螺旋階段を下りる、そしていつもの会議室に入るとそこにはシャフリンとメリド、それにアーノルドがあまり良い表情では無く、無言で椅子に座って居た。



「シャフリンさん、俺に用とは?」



部屋に入ると序列一位が座る長机の端にある椅子とは逆側にある椅子に座る、すると座ったのを確認してシャフリンが立ち上がった。



「白斗、お主に頼みたい事がある」



「頼みたい事……?」



妙に重っ苦しい雰囲気、正直あまり聞きたくは無かった。



「白斗、お主にオージギアの国内部に潜入してもらいたい」



シャフリンの言葉に耳を疑った、こんなボロボロの状況の俺に敵国へ忍び込めと言うのだから……死ねと言っている様なものだった。



「理由だけ聞かせてください」



「この国、第七位階でお主が寝ている間に話し合った……お主はこの国ではない出身と言ったな」



「ええ、まぁ」



「そして、妙な力を使う奴らの事を多少知っていた……白斗、エスフィルネから聞いたがお主は日本とか言う場所の出身らしいな、オージギアに居るスパイからの情報で妙な力を使う奴らからも同じ名前が出た、つまりだ……この情報を探れるのはお主しか居ないわけだ」



「そう言う事ですか……」



確かに転生者の情報は頭の中に入っている、身なりから凡そ見分けもつく……だがこの怪我では流石に無理があった。



断ろう……そう思い口を開こうとした時、シャフリンがこちらに近づいてきた。



「少しじっとしていろ」



そう言ってシャフリンは手を白斗の肩に当てる、すると黄緑の光が白斗の身体を包んで行った。



「これは……」



痛みが引いて行く、この色と良い、この心地良さと言い……回復魔法なのだろうか。



光はやがて小さくなり、完全に消える、光が消えると同時に痛みは嘘の様に消えてしまった。



「これは騎士としてのお主に下す命令だ、白斗よ、オージギアへ即刻向かい、異能の力を持つ者達の情報を手に入れてこい」



そう言い放つシャフリンの言葉に黙って頷く、傷が無ければ行くに決まって居た。



こんな危険な任務、顔が売れている第七位階にさせられる訳もない……自分が本当に適任だった。



「了解しました……」



呟く様にそう言うと部屋を出る白斗、足音が小さくなり行ったのを確認するとシャフリンはため息を吐いて椅子に座った。



「シャフリン、どれほど持つ」



「長くて3日……短くて1日半と言った所だな」



そう暗い顔で言うシャフリン、先程掛けた魔法は回復魔法では無かった。



あれは一時的に痛覚を抑え込む幻術の様なもの、白斗には酷だが彼に託すしか無かった。



「上手くやれると良いが……」



罪悪感を感じながらもシャフリンはそう呟くと椅子にもたれ掛かり天井を見上げた。

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