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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第4章 黒騎士の過去編
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第15話 過去編その15

「まずい事になったな……」



「そうですね、シャフリン様」



第七位階の会議室で深刻そうな表情をして話し合うメリドとシャフリン、その端の方ではユーリが暗い表情で立っていた。



「ユーリ、確かに白斗は魔法では無い力を見たと言うのか?」



「はい、私が見つけた時にそれだけを伝えてくれと……」



帰りが遅く草原に出て少し探すとボロボロの体で倒れていた、オージギアの不思議な力を使う者にやられたと言っていたが転生者でもなければ向こうのいわゆるラノベの知識がないユーリには魔法との違いが分からなかった。



白斗が言うには魔法は魔力を消費するが能力は消費せず、使用限度も無いという事……だがそんな力どうやって手に入れたのか皆目見当もつかなかった。



「魔力が無い……と言うのが厄介だな」



「はい、防衛戦の前に偵察をしないと確実に負けますね……」



防衛戦は2日後……完全に切羽詰まっていた、ここに来て新情報なのだから当たり前と言えば当たり前だが万全の気持ちで臨む予定だった三者にとっては不測の事態……表情では皆平然を装っているが内心かなり焦っていた。



「おじい様、私は白斗の様子を見て来ます」



そう言って第七位階の部屋を出る、今回の戦争で私は白斗に少し期待していた部分があった。



初めて手合わせをした日……あの日はただの雑魚にしか感じなかった、だがシリズが戦死した闘いの時、少し感じるものがあった。



国を絶対に守りたいと言う意志……本来ならあの場で死んでもおかしくなかった筈、なのに何故か生き残った……シリズのお陰もあるが不思議で仕方が無く、気に入らなかった。



そもそもアーノルドに稽古を付けて貰ったと言うことからまず気に入らなかった、この私でさえ門前払いだったのに何故あんな他国の彼が……



「あー、ムカつくけど聞きに行くしかないか……」



何も無い天井を見上げて怠そうにそう呟く、そしてユーリはゆっくりと螺旋状の階段を登って行った。



ーーーーーーーーーーーーーー



「ここは……」



目を覚ますと真っ先に視界に入って来たのは天井だった、記憶が途切れて居てあまりはっきりとは覚えて居ないが生きていると言う事ははっきりして居た。



取り敢えず起き上がろうと身体に力を入れると全身に激痛が走った。



「痛っつ!」



思わず大きな声を出してしまう、何とか痛みを堪えて起き上がるとソファーでエスフィルネが寝て居た。



「エスフィルネが俺を運んで……」



「運んだのは私、これで借り一つね」



開いているドアをノックする音が聞こえ白斗は視線を移す、するとそこにはユーリが少しだけ不機嫌そうな顔で立って居た。



指を一本立てたまま近づいてくるユーリ、そしてベットに座わった。



「この借り、どう返して貰おうかなー」



指を見ながらそう言うユーリ、普段なら軽く流している所だが彼女は言わば命の恩人……流す訳にも行かなかった。



「なんだよ……言っとくけどこの体じゃ無理な事の方が多いからな」



めんどくさそうな顔をしてそう答える、するとユーリの表情があからさまに明るくなった。



「大丈夫、私は話が聞きたいだけだから」



そう言ったユーリの言葉に白斗は首を傾げる、彼女が聞きたい事……異国の話なのか何なのか、全く分からなかった。



「私が聞きたいのは白斗の強さ、それだけ」



「俺の強さ?」



真剣な表情で聞いてくるのを見ると冗談では無さそう、だが俺は一度彼女と手合わせをして圧倒的な実力差を見せられている、それにシリズが死んだ戦場でも彼女の戦いには驚かされた、本気で戦わずしてあの強さ……そんな彼女が俺に何を聞くと言うのだろうか。



俯き考え込んでいるとユーリがベットの上を這って白斗の顔を覗き込む様に近づいて来る、二人分の体重が乗ったベットは深く沈んだ。



「私が最初に手合わせして感じた、此奴は戦場に行けば直ぐに死ぬと……だけど白斗は二回も生き残った、何故なの?」



「何故って言われてもな……」



確かに良く良く考えると何故自分は二回も生き残れたのだろうか……一回目はシリズのお陰もあるが二回目に至っては完全に実力と言い切れる、その時俺は何を考えて居たのだろうか。



逆転の手、相手の動き、能力の確認……全部違う、あの時俺が思って居たのはエスフィルネの事だった。



大切な人を守りたい、死んで悲しませたく無い……その一心で戦っていた、恐らくそれが通常以上の力を出させてくれた答えなのかも知れなかった。



「敢えて言うなら……守りたい人が居たからだな」



かなり悩んだ結果出した答え、その言葉にユーリはきょとんとして居た。



「守りたい人……ねぇ、本当だか」



「本当だよ、お前も恋人作れ、恋人」



疑いの眼差しを向けてくるユーリに親父の様な言葉を投げ掛ける、するとユーリは可笑しそうに笑った。



「私に恋人って、この国で私なんて言われてるか知ってる?」



「何て言われてるんだ?」



「死神よ」



そう言ってベットの上に立ちジャンプをして下りるユーリ、そのままドアの方向へ歩いて行くとドアの前で止まった。



「死神に恋は許されないのよ」



そう言って扉を開けて出て行くユーリ、その時に見えた横顔が凄く悲しそうだった。



この国での呼び名が死神、シャフリンの話しでは天才の子と聞いたが……彼女の過去が気になった。



「んんー……」



寝ながら何かを言っているエスフィルネの声が聞こえふと視線を移す、彼女も嫌われ者の魔女……ユーリと何故か重なった。



「どの世界でも嫌われ者は居る……か」



そう呟くと白斗はベットの上に寝転がった。

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