第9話 過去編その9
シリズの死は明るさを忘れず生きる国民達を悲しみで5日経った今でも包んで居た。
シリズが死んだ事により第七位階は第六位階になる……と言う事は無く、シリズ以下のレイブラ、ユーリの序列が上がりラベルドが第七位階の新たなメンバー入りを果たして居た。
だが当然ラベルドもそれを喜んだりはして居ない、むしろ第五位は永久欠番を皆望んで居た……だが誰かが務めないと行けない、そうシャフリンは判断したらしい。
シリズの死を見て居ることしか出来なかった自分の弱さを悔いた。
「難しい顔して何考えてるの?」
エスフィルネの部屋で天井を見つめ、うなだれて居る白斗を心配そうに見つめ尋ねる、彼女の顔を見ると不思議と心が安心した。
「なあ、久し振りに街に行かないか?」
「街?」
「うん、ここ半年……まともにその、デートとかしてなかっただろ?」
突然の申し出に疑問符を浮かべて居るエスフィルネに恥ずかしげな表情でそう言う白斗、それを聞いた途端エスフィルネの表情はパッと明るくなった。
「行く!着替えて来るからまってて!!」
そう言って走り部屋を飛び出すエスフィルネ、それと入れ違うかのか様にシャフリンが何処と無く暗い表情で入って来た。
「少し良いかな?」
声色も暗い……嫌な予感しかしなかった。
「何ですか?」
「エスフィルネがお主だけ呼び捨てなのは気づいて居たか?」
「そう言えば……」
あまり気にはしなかったがエスフィルネは何故か俺だけ呼び捨て、レイブラはともかく二個下のユーリにまでさんを付ける……確かに俺とは恋人という関係性もあるが、だがそれが何なのか分からなかった。
「それはお主に心を許しているという事、この世界でも2人しか許して無かったのに……お主はその3人目と言う事じゃ」
「俺が3人目……?」
アーノルドは分かる、だが他のもう1人が見当もつかなかった……ただ、男では無い事を祈った。
「うむ、1人はアーノルド、もう1人はあいつの妹じゃ」
「エスフィルネに妹が居たのか?!」
「今は消息不明じゃがな」
いきなり凄いカミングアウトをするシャフリン、良く思えば俺は彼女の事を何も知らなかった。
黒魔法を使う国からの嫌われ者という事くらい……彼女の過去、家族の事は何も知らなかった。
「そこで心を許して居るお主に頼みがある、この無駄な戦争を終わらせる為、エスフィルネの黒魔法を操ってくれ」
「黒魔法を……操る?」
その言葉に疑問を感じ首を傾ける白斗、そしてシャフリンはその方法を白斗に告げた。
一方エスフィルネは鼻歌を歌いながら上機嫌で服を選んで居た。
「どの服で行こっかな……白斗可愛いって言ってくれるかな」
色々な衣装を真剣な顔で合わせて行く、彼の好みが分からないだけにかなり悩ましかった。
だが彼から誘ってくれたのは意外だった、戦争の事やシリズの死……色々な事が一変に起こり、混乱して居るだろうとデートの申し出は後回しにして居たが、まさか彼から言ってくれるとは思っても居なかった。
嬉しさで顔を覆い悶えるエスフィルネ、するとその時白斗の怒鳴り声が聞こえた。
「ふざけるな!エスフィルネを何だと思って……いくら戦神と言えど言って良い事と悪い事があるぞ!!」
初めて聞く白斗の怒りに満ちた声、しかもそれはシャフリンに向けて……エスフィルネは咄嗟に掴んで居た服を着ると走って自室に向かった。
そしてそこで目にしたのは涙を流す白斗だった。
「エスフィルネ……シャフリンさん、あの話し……俺は絶対に受けませんから」
エスフィルネが来たのを見て涙を拭き足早にエスフィルネを連れて去って行く白斗、その背中をシャフリンは仕方無さそうな表情で見つめて居た。
城を出て城門前広場のベンチに腰掛け暫く無言のままの白斗をチラチラと何度も見るエスフィルネ、彼が涙を見せた事に驚きを隠せなかった。
私を助けてくれる時もどんな時も決して涙を見せなかった白斗が泣く程の出来事……気になって仕方が無かったがそれを聞く事は出来なかった。
そんな事を考えて居ると白斗が重い口をゆっくりと開けた。
「さっきの事は忘れてくれ、それより今日は何処に行きたい?」
忘れてくれ、そう言われるが記憶に焼き付いて忘れ様にも忘れられない……だが今日1日はそれを忘れて楽しみたかった。
「じゃあ……」
シリズの死は明るさを忘れず生きる国民達を悲しみで5日経った今でも包んで居た。
シリズが死んだ事により第七位階は第六位階になる……と言う事は無く、シリズ以下のレイブラ、ユーリの序列が上がりラベルドが第七位階の新たなメンバー入りを果たして居た。
だが当然ラベルドもそれを喜んだりはして居ない、むしろ第五位は永久欠番を皆望んで居た……だが誰かが務めないと行けない、そうシャフリンは判断したらしい。
シリズの死を見て居ることしか出来なかった自分の弱さを悔いた。
「難しい顔して何考えてるの?」
エスフィルネの部屋で天井を見つめ、うなだれて居る白斗を心配そうに見つめ尋ねる、彼女の顔を見ると不思議と心が安心した。
「なあ、久し振りに街に行かないか?」
「街?」
「うん、ここ半年……まともにその、デートとかしてなかっただろ?」
突然の申し出に疑問符を浮かべて居るエスフィルネに恥ずかしげな表情でそう言う白斗、それを聞いた途端エスフィルネの表情はパッと明るくなった。
「行く!着替えて来るからまってて!!」
そう言って走り部屋を飛び出すエスフィルネ、それと入れ違うかのか様にシャフリンが何処と無く暗い表情で入って来た。
「少し良いかな?」
声色も暗い……嫌な予感しかしなかった。
「何ですか?」
「エスフィルネがお主だけ呼び捨てなのは気づいて居たか?」
「そう言えば……」
あまり気にはしなかったがエスフィルネは何故か俺だけ呼び捨て、レイブラはともかく二個下のユーリにまでさんを付ける……確かに俺とは恋人という関係性もあるが、だがそれが何なのか分からなかった。
「それはお主に心を許しているという事、この世界でも2人しか許して無かったのに……お主はその3人目と言う事じゃ」
「俺が3人目……?」
アーノルドは分かる、だが他のもう1人が見当もつかなかった……ただ、男では無い事を祈った。
「うむ、1人はアーノルド、もう1人はあいつの妹じゃ」
「エスフィルネに妹が居たのか?!」
「今はラインハルトが連れ回しておるがな」
いきなり凄いカミングアウトをするシャフリン、良く思えば俺は彼女の事を何も知らなかった。
黒魔法を使う国からの嫌われ者という事くらい……彼女の過去、家族の事は何も知らなかった。
「そこでじゃ、いつ帰って来るかも分からんラインハルトが連れ回しておる妹に変わって、心を許して居るお主に頼みがある、この無駄な戦争を終わらせる為、エスフィルネの黒魔法を操ってくれ」
「黒魔法を……操る?」
その言葉に疑問を感じ首を傾ける白斗、そしてシャフリンはその方法を白斗に告げた。
一方エスフィルネは鼻歌を歌いながら上機嫌で服を選んで居た。
「どの服で行こっかな……白斗可愛いって言ってくれるかな」
色々な衣装を真剣な顔で合わせて行く、彼の好みが分からないだけにかなり悩ましかった。
だが彼から誘ってくれたのは意外だった、戦争の事やシリズの死……色々な事が一変に起こり、混乱して居るだろうとデートの申し出は後回しにして居たが、まさか彼から言ってくれるとは思っても居なかった。
嬉しさで顔を覆い悶えるエスフィルネ、するとその時白斗の怒鳴り声が聞こえた。
「ふざけるな!エスフィルネを何だと思って……いくら戦神と言えど言って良い事と悪い事があるぞ!!」
初めて聞く白斗の怒りに満ちた声、しかもそれはシャフリンに向けて……エスフィルネは咄嗟に掴んで居た服を着ると走って自室に向かった。
そしてそこで目にしたのは涙を流す白斗だった。
「エスフィルネ……シャフリンさん、あの話し……俺は絶対に受けませんから」
エスフィルネが来たのを見て涙を拭き足早にエスフィルネを連れて去って行く白斗、その背中をシャフリンは仕方無さそうな表情で見つめて居た。
城を出て城門前広場のベンチに腰掛け暫く無言のままの白斗をチラチラと何度も見るエスフィルネ、彼が涙を見せた事に驚きを隠せなかった。
私を助けてくれる時もどんな時も決して涙を見せなかった白斗が泣く程の出来事……気になって仕方が無かったがそれを聞く事は出来なかった。
そんな事を考えて居ると白斗が重い口をゆっくりと開けた。
「さっきの事は忘れてくれ、それより今日は何処に行きたい?」
忘れてくれ、そう言われるが記憶に焼き付いて忘れ様にも忘れられない……だが今日1日はそれを忘れて楽しみたかった。
「じゃあ……カフェとかどう?」
「たまにはのんびりお茶か……それも良いな」
そう言って頷く白斗、それを見るとエスフィルネは手を掴んだ。
「そうと決まれば私のとっておきの場所に連れてってあげる!」
そう言って走り出すエスフィルネ、今日はいつに無く積極的で少し驚いた。
この国ではそこそこ有名になった白斗の手を引き走るエスフィルネ、その手を引く少女は誰なのかと彼のファンから妬みの表情を向けられるがエスフィルネは全く気にして無かった。
寧ろ終始ドヤ顔だった。
走るスピードを落とさずにカフェ通りへ入るとお洒落な通りから離れ、奥の廃れたカフェに入る、そして外の席に座るとオーナーに『いつもの』と伝えた。
「ここ最近の行きつけなんだ、とにかく隠れ名店って感じで凄く美味しいんだよ!」
そう言って幸せそうな顔で待つエスフィルネ、何が美味しいのか良く分からないが彼女の幸せな表情見れるだけで自分も幸せだった。
だが、心の奥底でどうしても気になっている事があった。
それは彼女の妹の事……だが自身の話をあまりしないエスフィルネにその事を聞いていのかと、白斗は躊躇った。
だが結局、好奇心が勝った。
「なぁ、エスフィルネ……言いたく無ければ良いんだが、妹の事教えてくれないか?」
「私の妹?全然良いよー」
意外にも軽い口調でそう返事をする、そしてエスフィルネは料理が運ばれて来るのを横目に妹の事を話し始めた。