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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第4章 黒騎士の過去編
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第5話 過去篇その5

「ありがとうございます、拳武神……アーノルドさん!」



頭を深々と下げお辞儀をする、1年間に及ぶ修行、今日でとうとう終わりを迎えた。



体の至る所にある傷が修行の熾烈さを物語っている、だがその傷の分……力を手に入れることが出来た。



軽く拳を握り締めるだけで分かる、この他を圧倒するほどの力……だがこの力はエスフィルネの為に、守る為だけに使う事を師であるアーノルドに誓った。



出来るなら使う事が来なければ良い、そんな事を思いながら久し振りの街へ足を向けた。



それにしても修行内容の組手……結局最後までアーノルドに勝つ事は出来なかった、一年経った今でも当てるのがやっと……過去にあんな化け物が戦争に居たと考えると敵も可哀想だった。



「戦争……」



そう言って空を見る白斗、ここ一年でエスフィルネが定期的に訪れる時に教えてくれた情報で気になる事が何個かあった。



それはオージギアについて、一年前この世界に来たばかりの時、あの国は今にもクーロディリスに攻めて来そうだった……だが結局1年間何もなく、これ程怖いものは無かった。



そして国の上層部の動き、何やら各地に出向いて怪しげな物を調達しているらしいが……戦争の匂いがした。



そんな事を考えているうちに城門が見えてくる、懐かしい……あのそこそこに年が行った門兵もまだ暇そうに働いていた。



「お久しぶりですね門兵さん」



「おお、いつかのにいちゃんか!そう言えば今国はあんたの話題で持ちきりだぜ!」



「俺……の?」



特に何かをした覚えは無い、なのに何故国は俺の事を知っているのか……エスフィルネが話したとしても聞く耳を持つ様には見えないし、不思議なもんだった。



兵士に指さされ街の中に入る、すると市民が白斗を見るや否やまるでスターに群がるファンの様に白斗の周りに殺到した。



「森の外れの怪物を手懐けた異国の戦士だ!」



「あの森が危険でなくなったお陰でシストリアに行きやすくなった、ありがとう異国の人!」



そう口々に礼を言ってくる市民、その様子に白斗は驚きを隠せなかった。



森の外れの化け物……何故彼はアーノルドをそう言う風に認識しているのか、怒りが込み上げてきた。



国を……魔法を使えなくなってまで救った英雄を何故此奴らはそんな風に言えるのか、怒りが込み上げて来るがグッと右手を握って抑えた。



アーノルドは元々魔法使いの母を持つ混血の魔法使い、今の魔力は皆無だが魔法使いとしてはそこそこに名が通って居たらしい。



魔力は母からの唯一の形見……そう言って居たアーノルドが形見を捨ててまで助けた国民にこんな事を言われる、何故あんな所で荒んで居たのか理由が分かった。



ふと市民の群れの中に一際目立つ服を着た男を確認する、年齢は30後半程……誰なのだろうか。



「君が噂の異国人、白斗君か」



「そうですけど……貴方は?」



整った身なりに綺麗な茶髪のオールバック、如何にも騎士の様な男だった。



「私はこの国の騎士をしている者、名はエクリス……単刀直入に言います、白斗君、君の力を貸してくれ、今この国には強い人物が必要なんだ」



公衆の面前でそう頼み込む騎士の男、その姿に騒つく市民……要は戦争に出てくれと言う申し出、断りたいがこんな公衆の面前で断れば彼のメンツが丸潰れ……断りにくい雰囲気を先に作り出す、面倒くさいやつだった。



ふと城の方を見るとエスフィルネが4階の自室からこちらを眺めて居た。



「そう言えばエスフィルネが半年前から姿を見せて無かったが……どうしたんだ?」



そう白斗が言うとエスフィルネの居る方向を悲しげな表情で見る、そして白斗の方を見ると背を向けた。



「城の中でそれは話そう……」



そう言って騒つく市民の中を歩いて行く、それに白斗は疑問符を浮かべながらもついて行った。



エスフィルネが半年前から急に来なくなったのは心配だった、だが定期的に手紙は届くし生きて居るのは確かでその点は安心した……だが自室からこちらを見ていたという事は城を出られないという事は、やはり俺を戦争に駆り出すところを見ると余程この国は切羽詰まって居るのだろう。



敬礼する門兵を横目に城内へと入って行く、そして大きな螺旋状の階段を上がると三階の縦長の机が部屋の中央に置かれ、豪華な椅子がいくつも並べられた部屋に案内された。



椅子には若い男や女性、老人が座っている、見た感じ皆高位の存在の様子だった。



「ラベルド、コイツが噂のアーノルドの弟子か?」



1人の老人杖を向けそう言う、杖と言い蓄えられた白い髭と言い……魔法使い見たいな老人だった。



「はい、彼が異国の民、白斗です……彼の強さはアーノルド様のお墨付き、我が軍に加えれば確実に大きな戦力になりますよ」



「ふむ……戦神シャフリンと呼ばれた儂が戦場に出りゃすむ事だが儂も歳、戦友の唯一とも言える弟子の力試させて貰うかの……」



そう言って一人納得するシャフリンと名乗った老人、すると間髪入れずにこの緊張感漂う部屋にまるで迷い込んだかの様な少女が話し始めた。



「あの頑固なお爺様が許した……何者なの貴方!」



猫の耳の様になっているカチューシャを付けた少女、何だろうか、心なしか彼女の瞳が煌めいている様に見えた。



「ユーリ、彼が誰かはさっき説明しただろ……そもそもお前はここに居るべきじゃない、シャフリン様の孫と言う事で居るだけのお前に……」



嫌味ったらしく隣に居たスーツの様な服を着た眼鏡の白髪の若い男がそういうとユーリと言われた少女が笑いながら立ち上がった。



「いい度胸よ!インテリ眼鏡が私に勝てるって言うの?」



「ふん、すぐ実力で来ようとする、お前はこのクーロディリス国第七位階の中でも一番下なのだから出しゃばるな」



そう言う眼鏡の男、第七位階と言ったがこの場には騎士の男を合わせても5人しか居なかった。



しかも何故か俺はこの国に加わる流れになって居る、だがここまで来たらもう別に構わなかった。



元々この力はエスフィルネを守る為、なら彼女が愛するこの国を守るのも同じ意味だった。



国から嫌われても尚この国を愛するエスフィルネの為にも。



「そうだ、軽く皆んなの説明をしておくよ」



そう言って騎士は自席に座り説明を始めた。



第七位 ユーリ・レグス


ネコミミの様な黒いカチューシャに輝いて居る瞳が特徴の少女。

純粋な戦闘力ならクーロディリス国でもトップを争える程の強さ、17歳でエリート部隊と言われる第三部隊の副隊長を務めるこの国を始まっての天才。


第六位 レイブラ・マラル


赤いロングの髪の毛に3本の腰にかけられた剣が特徴の女性。

かつて四剣聖、フィリアの使っていた神速の剣技を使う捨て駒の突撃部隊と言われる第1部隊の隊長。

その第1部隊で5度、戦争に駆り出されるが全部生存すると言う強さを誇る、騎士達の中では姉と慕われて居る。


第五位 シェリズ


この国では無い異国出身、2メートルを超えるそのガタイとスキンヘッドで戦場に出ると必ず巨神と呼ばれる斧使い。


第四位 マキシ・メリド


ユーリの事を馬鹿にして居た眼鏡に白髪が特徴の男、戦闘はからっきしだが、クーロディリス国の頭脳と言われる最高の軍師、彼のお陰で勝てたと言われる戦場が無数に存在する程の神軍師。


第三位 アーノルド・フェイス


白斗の師にしてこの国の英雄、だがその過去の戦闘、伝説を知るのは今やこの七位階メンバーと国の上層部のみ、だがその実力は未だ健在の世界最強とも言われる拳武神。


第二位 モーツェル・レグス・シャフリン


ユーリの祖父にしてあらゆる属性の魔法を操る事が出来るエスフィルネとは対照的な尊敬される魔法使い、彼の魔法一つで戦局は変わり、勝敗を左右する程の強さ。


第一位メリテス・ラインハルト


かつてこの国の英雄であり、この国を破壊しかけたメリテス・レイルを祖先に持つ騎士、年齢は20代程でその強さは人間の範疇を超えて居るとの事。

この第七位階には姿をあまり見せず、国の外を常にふらふらして居る無法者、だがこの国の騎士団長を務めて居るとの事。



ここまでの説明を受けてここに居るメンバーが只者ではない事は十分に分かった、このメンバーを揃えても勝てないオージギアの戦力も気になるが第一位の存在が気になった。



人間離れした強さ……アーノルドよりも強いと言われるその強さを一目見たいものだった。



「最後に、この七位階には入れないけど一応第三部隊の隊長をやって居る、レスフィル・ラベルド……宜しくね白斗君」



「は、はぁ……」



気乗りはしないがレスフィルの差し出された手を握る、するとレグスが立ち上がり近づいて来た。



「さて、白斗じゃったか……お主の参戦も決まった事じゃし、こちらから仕掛けるかの」



そう言った瞬間に廊下から気配がし、カランと何か落ちる音が聞こえた。



その気配と音に反応した中でも一番早いレイブラが扉を蹴破る、すると誰かが居た痕跡が残されて居た。



「この紋章……オージギアのスパイですレグス様」



そう言って拾い上げたドクロが王冠を被る気味の悪いマーク、恐らくこちらが攻めてくる事を伝えに国へ戻ったのだろう。



「なに、心配するな、今回は第七位階から3人戦場に出す、それと白斗、お前はレスフィル、ユーリの居る第三部隊に入ってもらうぞ」



それだけを告げ、解散する第七位階……だがこの国の騎士として呼ばれたと言うことは城の出入りが自由になったと言う事だった。



部屋を出ると螺旋階段を登り4階に行く、すると登った先にエスフィルネが泣きそうな顔で立って居た。



「なんて顔、してるんだエスフィルネ」



「だって、だって……白斗が戦場に……」



そう言ってヨタヨタ近づいてくるエスフィルネ、彼女を強く抱きしめると白斗は頭を撫でた。



「大丈夫……エスフィルネ、この国に愛してるんだろ?」



「うん……」



「お前が愛した国だ、俺も愛してやらないとな……異国の民だとしても」



そう言ってエスフィルネの顔を見て笑い頭をポンポンするとエスフィルネも笑顔になった。



「そうだ!白斗が居ない間に私料理の勉強したから部屋に来てよ!」



そう言って笑顔のエスフィルネに手を引かれる……この幸せがずっと続く為にも、俺は戦う事を選択した。

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