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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第4章 黒騎士の過去編
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第2話 過去編その2

「ここがクーロディリスの街……でしたっけ?」



洋風な街並み、活気のいい露店通り……時代感はやはりと言うべきか向こうの現代とはかなりかけ離れ、文明もかなり後退していた。



スマホや車などと言う技術は無く、皆徒歩で移動し、貴族でも馬車で移動する、その珍しい光景に白斗は辺りをキョロキョロとしていた。



「いい雰囲気の街ですね」



そう言って目があった露店の店主に手を振る、向こうの冷たい現代の都会人よりかはこちらの人は暖かそうだった。



「それがこの国の誇りなんです!どんな時でも明るさを忘れずに生きる、それがこの国の強みでもあるんです!」



そう誇らしげに言うエスフィルネ、明るさを忘れず生きる……良い生き方だった。



見たところこの世界の人々の外見はどちらかと言うと外国の人より、だが完全に自分達日本人と顔が違うという訳でも無かった。



言葉では言い表せない何とも微妙なラインの顔、とにかく完全に日本人の自分が浮くと言うことは無かった。



エスフィルネに連れられてお洒落なカフェ通り、ショッピング街、王宮前のおみやげ屋がひしめく広場などに案内される、そして王宮前の広場にある噴水の椅子に座ると白斗とエスフィルネは一息ついた。



ふぅと息を吐き隣のエスフィルネを見る、すると同じタイミングで彼女もこちらを向き目が合ったまま二人は固まった。



するとエスフィルネはにこりと恥ずかしそうに笑いかけてくる、それを見て白斗は恥ずかしさで顔を背けてしまった。



何せ今まで自分は女性と関わりを持たず生きてきた、彼女も居らず、話した事も数える程……そんな自分が今こんなに可愛い少女と話をしていると言う事は本来ありえない事、その動揺が今の今まで来ていない事自体がおかしかった。



「どうしたんですか?急に顔をそらして?」



「い、いや、何でも無いですよ」



そう言ってチラッと彼女の方を見る、不思議そうな顔も可愛かった。



気持ち悪いと思われても仕方がない、だがここまで惹かれた人は生まれて初めてだった。



女性と関わりを持たないと言ったがそれは関わりを持ちたいと思える人物が居なかったから……だがエスフィルネは違う、初めて惚れた人、一目惚れの相手……もっと話しがしたかった。



だが何を話せば良いのか分からなかった。



辺りを見回して何か話の種を探す、するとふと気になる事があった。



「怪我をしてる兵士の人がやけに多いですね」



城門前の門兵や巡回兵が至る所に包帯を巻いている、あれ程の怪我で仕事を続けさせられるのは余程人が足りないか相当なブラック……気になった。



「あれは……戦争ですよ」



「戦争?」



「はい、隣の国オージギアとの……この国にかつて魔法使いが居たと言いましたよね?」



「そう言えば……」



ちょっと前に花畑でそんな事を言って居た気がした。



「その魔法使いのお陰でこの国は何とかオージギアから攻撃を受けずに居ました、向こうも報復が怖くて……でも居なくなった今、かなり頻繁に戦争を仕掛けてくる様になったんです」



「そんな事が……」



戦争が起きているのにも関わらずこの国の人は明るい……その強さに白斗は驚きを隠せなかった。



「ですが最近は向こうも戦力を温存してなのか仕掛けて来てないですから安心してください!」



そう言って笑顔で白斗を安心させる為か言う、この世界の勢力図は分からない……だがこの国の様子を見る限りもうボロボロ、普通なら一気に攻め立てる筈だった。



なぜ攻めないのか、それは分からない……だが悪いタイミングに来てしまったものだった。



「この世界の地図とかって何処で見れますか?」



エスフィルネともっと居たかったがいつ攻め込まれるかも分からないこの国にいつまでも居られない……ラノベの様な特殊な力を持っていれば助けられたが何もない、無力な俺に出来る事はただこの国から離れる……それだけだった。



何処か近くの……安全な国に身を寄せたかった。



「地図ですか……それなら王宮の書庫で見れますよ」



「王宮……一般の人でも入れるんですか?」



「普通なら無理ですけど……この国、クーロディリスの王女、私の権限を持ってすれば閲覧可能ですよ」



「それなら……ん?王女?」



「はい、王女です」



そう言ってにっこり笑うエスフィルネ、服装や雰囲気からは貴族辺りかとは思っていたが……まさかこの国の王女だとは思っても居なかった。



そもそも王女が花畑に一人というのがおかしい、しかも今は戦争中、護衛の一人もいないのは無用心にも程があった。



「え、エスフィルネさんが王女なら護衛の人は?」



「私は良く抜け出すんですよ……王宮をね?」



王女だと言う事に驚きながら聞く白斗に何故か悲しげな表情で告げるエスフィルネ、何故そんな顔をするのか……気になったが聞きはしなかった。



「見せますからついて来て下さい」



そう言って城の城門に歩いて行くエスフィルネ、そして彼女が門兵と話している時、不思議な光景を目にした。



普通王女は尊敬、又は敬わられる存在のはず……なのに彼女と話している兵士は終始嫌な顔をしていた。



「白斗さん、話はつけました、入っても大丈夫ですよ」



「はい」



元気のない声で返事をすると白斗はエスフィルネの二歩後ろを歩き城内に入って行く、そして長い中庭を歩いた。



エスフィルネに何か話かけようと手を伸ばすが白斗はその手を途中で止めた、ついさっき出会ったばかりの自分が何を言って良いのか……分からなかった。



2人とも無言のまま長い中庭を抜け王宮内に入る、王宮内は豪華な内装で高価そうな額縁がいくつも飾られていた。



高価な壺の隣を歩くだけで緊張する、その時白斗達はメイドとすれ違った。



メイドは話が通っていた白斗に笑顔を見せる、だがエスフィルネには居ない者の様な反応を見せた。



やはり……エスフィルネはどう言う理由かは分からないがこの王宮内関係者に疎まれている様だった。



街の人々はエスフィルネをそもそも王女という事自体知らない様だが……それを知っている人々は皆彼女に嫌な顔をする、何故なのか、その理由が気になった。



実の娘ではないが故なのか……また別の理由があるのか、それは分からない、だが彼女のあの悲しげな表情……見たくはなかった。



「ここが書庫です、地図を取って来ますから少し待ってて下さい」



そう言って書庫の中に入るエスフィルネ、彼女の言われた通りドアの側にもたれ掛かると腕を組み目を閉じた。



今は不思議と冷静……よく思い返して見るとついさっき目覚めたばかりなのに楽観的すぎた。



向こうの世界に戻れる保証はない、それにこの世界で安全に生きれる保証もない……なのに自分は他人の、エスフィルネの心配ばかり、自分でも思う、お人好しにも程があった。



まずは自分の心配……向こうの世界に戻るにしろ、この世界で生きるにしろ『力』が必要だった。



身体能力は他より少し高い程度、だがこの世界で生きるにはあまりにも心許なかった。



自身の掌を見つめる……とその時エスフィルネの声が聞こえた。



「白斗さん、これが大陸地図ですよ」



そう言ってエスフィルネに地図を渡される、それを廊下で広げ、立ったまま見ると気になる場所を見つけた。



この国から少し離れた最初の草原近くにある森、その森の名前に興味抱いた。



漢字で拳武神の森と書かれた場所……この世界でも漢字がある事に驚いたがそれよりもその森の名前が妙に気になった。



「この森は?」



「あ!その森は昔の大戦で大活躍した英雄が住む森です、ですが私以外の人が入ると襲われるんで誰も近づかないんですよ……」



そう言うエスフィルネ、少し妙だった。



彼女のこの国での扱い、それに加えて森での特別な扱い……彼女は何か特別な力でもあるのだろうか。



だがこんなにも近くに良い師となりそうな人物が居る……もう行く他無かった。



何をするにもまずは力、もう少しエスフィルネには協力してもらわなければならなかった。



「エスフィルネさん、もう少し付き合って貰えますか?」



「はい、勿論!」



そう楽しげな笑顔で言うエスフィルネ、その笑顔はこの王宮に居なくて済む……そう言った意味が込められている気がした。

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