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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第1章 記憶無き黒騎士編
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第7話 偽りの黒騎士

「この廃城か?」



廃城と言うには余りにも原型がなく城の跡地と言った方が正しい瓦礫の山が目の前には広がっていた。



「その様だな」



そう言って先に何処かへと行っていくグレアス、相変わらずカミラは俺の事を見てべったりだった。



「あんまり強い気配は感じないけど本当に居るのかしら、ねーセラスー」



腕をツンツンと触り言うカミラ、彼女が転生者なら確実に殺していた、とにかくうざい。



カミラの腕を振り解きカーニャの手を引いて辺りを見回す、根城を移したのか黒騎士と呼ばれて居る人物らしき存在は感じなかった。



「空振りか……」



カミラ達に帰ろうかと伝えようとした時ほんのかすかな鎧と鎧が触れ合う音が聞こえた。



グレアスのガチャガチャした音とは違うもう少し静かな感じの音、カミラは際どい服装で音などなる筈も無くカーニャも同様、そして俺自身も鎧では無かった。



となれば別の誰かが此処に潜んで居る……索敵魔法で辺りを索敵すると近くの物陰に反応があった。



「そこか!」



反応があった物陰に向かって剣を振り建物を吹き飛ばす、するとスッキリとした物陰から手足を縛られ口に布をつけた座っている青年が出て来た。



「これが黒騎士?」



確かに鎧はちょっと黒っぽくもあるがとても強そうには見えない、言ってしまえば騎士にすら見えない、これはどう言う事なのだろうか。



口に布を巻かれている所を見ると誰かに捕まった後なのか、必死に何かを言おうとしていた。



「何だこいつ」



布を外そうとした時に感じた違和感、彼は一体誰に捕まったのだろうか……索敵魔法で索敵しても彼以外にはカミラ達しか居ない、だが彼女達は先程ギルドで出会ってずっと一緒に行動している、謎な青年だった。



布を取り縄を剣で斬ると青年の喉元に剣を当てる、これで下手な動きは出来なかった。



「お前が何者か聞こうか?」



「き、聞いて下さい!あの2人は危険です!今すぐ逃げて下さい!」




「あの2人?」



そう言い後ろを振り向くがカミラとグレアス以外に人は居ない、彼らがこれをやったと言うことなのだろうか。



だが簡単に青年の話を信じる訳も無く話しを聞き流し先程と同じ質問をした。



「本当です!彼らは冒険者なんかじゃ無い!不思議な力を使う悪党です!」



そう言い叫ぶ青年、この表情と必死さからはとてもでは無いが嘘は感じられなかった。



「何言ってんのこの糞ガキ」



後ろから気配も無く現れそう言い放つカミラ、声色がまるで別人だった。



手につけて居た手袋を外すとカミラは青年の口に突っ込む、さっきの青年の瞳を見てからどうにもカミラが怪しく見えた。



心を読む魔法もあるが魔法ばかり使って居てもつまらない、どうにか自分の今まで培ってきた判断力で見極めたかった。



「しかしこついが黒騎士だったらなんか呆気ないな」



報酬に全く見合っていないクエスト内容、これでクリアと言われたら疑問しか残らない、なんだか気持ちが悪かった。



「帰るかカーニャ」



カーニャを撫でながら帰ろうとグレアスが何処かに行った方向を見る、すると遠目だが誰かが走って来るのが見えた。



「グレアスなのか?」



周りには聞こえない程の声量で呟くクロディウス、近づいてくるグレアスは傷ついているように見えた。



だが誰に……周りには人は居ない、カミラもずっと一緒に居た。



「やばい!此処には奴が居る!逃げるぞ!!」



そう言い重たそうな身体を揺らし逃げようと走るグレアス、だが次の瞬間突然その場に倒れた。



「グレアス?!」



慌てて駆け寄るカミラ、クロディウスも近寄り脈を確認すると既に事切れて居た。



外傷で死に至っては居ない、透視で内臓を見るがそれも死に至るほどでない……となれば何がグレアスを死に至らしめたのだろうか。



様々な方法でグレアスの死体を調べて居ると、ふと何かの気配を感じた。



周りを見回すが無言でグレアスの死体を見つめるカミラとカーニャ以外誰も居ない……その時に気が付いた。



あの青年が居なくなっていた。




そして少し原型が残って居た廃城の一部の屋上に目線を移す、するとそこにはさっきの青年が着ていた鎧とはまた別の黒く光り輝く鎧を着た騎士が立っていた。



「誰だあんた」



剣に手をかけ問いかける、だが騎士は何も言わずにその場から飛び降りクロディウスに近づいて来た。



一体何を考えているのか、恐ろしく静かな辺りに不信感を抱き見回すとまるで時が止まっていた。



ぱっと見ただ静かなだけなのだがカミラが目から流した涙が宙に止まって一つの芸術の様になっている、これは明らかに時止めだった。



「転生者か」



剣を捨て鎌を出現させようとする、だが黒騎士は予想よりも早くクロディウスの目の前まで迫って来ていた。



荒い呼吸音がうるさい程聞こえてくる、久し振りに『マズい』と感じた、しかし予想とは反し黒騎士は何もせずしばらく無言で目の前に立っていた。



「転生者の王が動く、協力者を募れ最後の希望よ……」



数分の沈黙の後それだけを告げて消える黒騎士、転生者の王とは一体何なのだろうか。



初めて聞いた言葉、女神からそんな存在居るとは聞いていなかった。



「クロディウスさん?」



その場でずっと立ち尽くしていたクロディウスを心配に思い覗き込むように顔を見るカーニャ、彼女の様子を見ると先ほどの力は時止めでは無いのだろうか。



恐らく意識を異空間に飛ばす感じの能力、だが今はそれよりも転生者の王の存在が気になって仕方が無かった。



「クエストは失敗だな、すまないカミラさん」



グレアスの死体を掴み泣き崩れて居るカミラに謝るとカーニャと共に廃城を後にした。

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