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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第4章 黒騎士の過去編
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第1話 過去編その1

痛む身体、霞む視界、まだ意識はハッキリとしなかった。



「痛ぇ、確か俺は車に轢かれて……」



まだハッキリとしない意識の中、最後に見た光景を思い出す。



友達と今後の進路を話しながら横断歩道を渡り……友達が車に気付かないのを俺が身代わりに轢かれた、筈なのだが何故か身体は痛むし意識はある、助かったのだろうか。



だが不自然なのは周りに人の声がしない事、するのは風が吹くと草がガサガサと揺れる音くらいだった。



だんだん意識がハッキリとし、霞む視界も晴れる、そしてそこは自分が元いたビルが立ち並ぶ都会の街並みではない事に気が付いた。



目の前に広がる一面の草原、遠くには中世のヨーロッパを彷彿とさせる城が薄っすらと見えていた。



「此処はどこだ?」



自分が車に轢かれている間に何があったのか、死んだとすれば此処は天国かまたは地獄か……頬をつねって見るが痛みはある、そもそも天国と地獄に痛みが無いのかは知らないが取り敢えず夢では無さそうだった。



痛む身体を無理やり起こすと立ち上がって辺りを見回す、何度見ても草原、北方向に国、西と東は遥か彼方まで草原、そして南は広大な森とどこの国か全く想像がつかなかった。



一先ず何か情報を得ようと遠くに見える城の方へと歩く、見知らぬ土地、最後に見た死の光景……その時ふと気が付いた。



もしかするとこれは異世界転生という奴なのでは無いのかと。



良く本屋などで目にするラノベの定番、死んだら異世界にとか言うあれ……その状況にぴったりだった。



自分はそう言うのは読まないが妹が良く読み話して来たのを覚えている……それがこんな時に役に立つとは思わなかった。



異世界転生、もう一度人生を与えられたのは良いが家族や友達に会えないと考えると悲しかった。



まだ親孝行もしていないし友達とも遊び足りて居ない……人生これからだと言う時に、何か戻る方法は無いか、妹との記憶を振り返るがラノベの主人公は皆その地で順応して生活していた……つまり戻る術は無いと言う事なのだろうか。



「参ったな……」



頭を掻きながら草原を道なりに歩く、すると脇に花畑が広がっているのを横目に確認した。



綺麗な花々、その時真ん中に一人の少女が座っているのが見えた。



第1村人……では無いが彼女に此処が何処で何なのか、聞いて見るしか無かった。



「あのー、すみません」



そう言って近づいていくと少女は驚いてこちらを振り返った。



「わっ!びっくりした……こんな所に人なんて珍しいですね」



「驚かせてすみません、実はちょっと道に迷ってて」



驚く少女にそう嘘を言い現在地を聞き出そうとする、すると少女は何か分かったような顔をして手をポンっと鳴らした。



「旅人さんですね!此処はクーロディリス、最近まで魔法使いが居た地域でもあるんですよ!」



そう笑顔で言う少女、魔法使い……その言葉を聞いて分かった、この世界は元いた世界とは違う事を。



それが分かった今、今後どうするかを考える、その時少女の顔を良く見て見ると凄く可愛かった。



首元までの水色が綺麗なショートボブの髪の毛、そして綺麗な青い瞳……向こうの世界では見た事も無い程の可愛さ、そして度々見せる笑顔に段々と初対面なのに惹かれた。



「どうしましたか?」



「あ、いや、なんでも!」



そう言って顔を伏せる、恐らく今自分の顔は恥ずかしさで赤くなっている筈だった。



「面白い人ですね、お名前はなんて言うんですか?」



「名前、名前ですか……えーっと、黒崎 白斗です」



一瞬自分の名が出てこなかった事に焦るが直ぐに思い出しそう答える、良く黒白と呼ばれていた事を思い出した。



「白斗さんですか、珍しい名前ですね、何処の出身ですか?」



「あー、それは……」



言葉を濁す白斗に疑問符を浮かべる少女、彼女に日本と言っても伝わる筈が無かった。



とは言え他に言う場所も無い……ここは冗談に聞こえるよう答えておいた。



「日本ですよ、日本の東京」



「に……ほん?よく分からないですけどそうなんですね!遅れましたけど私の名前はエスフィルネ、宜しければ街を案内しましょうか?」



そう申し出るエスフィルネの言葉に白斗は間髪入れず首を縦に振り返事をした。



「是非にお願いします!」



「こちらこそ!」



そう笑顔で言うエスフィルネ、恐らく自分は彼女に……一目惚れしてしまったのだろう。



無邪気で、可愛くて、そして明るい……さっきまでの悲しい気持ちが嘘のよう、彼女と街を歩くのが楽しみだった。



エスフィルネのに手を貸し立つのを手伝うとエスフィルネは服に付いた花を払う、よく見ると彼女の服はかなり高価そうな服だった。



それに上品な言葉遣い……だが特に気には止めなかった。



「それじゃあ出発しますか!」



「そうですね」



意気揚々と歩き出すエスフィルネの後ろを白斗は軽い足取りで着いて行った。

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