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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第3章 覚醒の魔法使い編
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第10話 洗脳された国

一人旅と言うのは予想以上に寂しいものだった、1人に慣れていると思い込んで居たが喋る人が居ないと言うのはそれはそれでつまらないものだった。



砂漠地帯を無言でただひたすら歩きながら街を探す、この先にレムドと言う人口5千人程の小規模ながら国を名乗って居る街が地図によるとあるらしいがこんな砂漠のど真ん中で本当にあるのか怪しい所だった。



魔法で氷を生成し、額に当てて冷やすがそれにしても暑い、クロディウスに出会った奴隷会場のある街よりも余裕で暑かった。



鬱陶しいフードの服を脱ぎたい気持ちを抑えて歩みを進める、すると遠目に白い石造りの建造物が何個も見えた。



大小様々な白の建造物、あれがレムドの国だった。



カーニャは3日間歩きっぱなしの身体をやっと休められる嬉しさから歩む足が速くなる、そして街に入ると砂だった地面はアスファルに変わった。



久しぶりとも言えるこの硬い感触……感動した。



ふと1人感動に浸っていると壁に何やら紙が貼ってあるのが視界に入ってくる、何かと近づいてカーニャは見てみるとその紙に書かれてあったものに思わず声を出して驚いた。



「これって……」



壁に貼られた紙は手配書、そしてその手配人物は自分自信だった。



特徴の欄に無表情で髪色が水色と書かれ、備考の欄には魔女の末裔と書かれて居る……そして驚くべきは報奨金だった。



「い、一億……」



自分を捕まえれば子供はおろか、その子供の子供まで遊んで暮らせるほどのお金が手に入る……何処が出した手配書かを見るとカーニャは首を傾げた。



フィレンツェ……確かこの国は何者かによって滅ぼされた国の筈……だが何故その国から手配書が、それも自分の……分からなかった。



一先ず見た目を隠しながら情報収集をしようと近くの屋台に座る、適当に注文をすると店主に尋ねた。



「あの手配書、本当なんですか?」



「らしいなぁ、何でも最近シストリアの中心都市が滅ぼされたみたいでな、その犯人がその手配書の奴らしいんだ」



「シストリアが?!」



思わず声が大きくなる、数日前までいた国がこんなにも早く……誰の仕業かは恐らく検討がつく、あの影の男が関係して居るのだろう。



シストリアに起こった衝撃的な事実に驚いて居るとラジオが鳴り始めた。



『国民の皆様、ご機嫌如何ですか?この国の王、レムド3世です』



ラジオから聞こえてきた若い男の声、この国の王と名乗った男は衝撃的な事を言い始めた。



『この国に、魔女が居ると言う情報を掴みました、現在我が兵が追っていますが街の皆様も魔女にお気を付けて、外出を控える様お願いします』



それだけを告げてラジオが切れる、まさかこんなにも早くバレるとは……そう思ったが店主の反応をみてそれは自分では無いと分かった。



「魔女……やっぱりあいつだったか」



「誰か心当たりでもあるんですか?」



「おう、2日ほど前になアミーって言う水色の髪をした旅人がこの街に流れ着いたんだよ……なんか様子がおかしいと思ったが、そう言うことか!」



近くにあった包丁を持つとお代は良いと言って走っていく店主、その少女に少しカーニャは興味を示した。



自分と同じ髪色の少女……魔女の末裔は自分だけと思っていたが仲間が居たのだろうか。



何はともあれ、この国の人よりも先に見つけなくてはいけない、スープを飲み干すとカーニャは周りに人が居ないのを確認してふわっと浮き上がり見晴らしのいい教会の上に登った。



街をグルッと見回すが目立つ髪色の人は居ない、居るのは彼女を探す市民や兵士ばかり、だがこんなにも街を彷徨いていれば見つかるのも時間の問題だった。



「ひ、ひと、人が、うい、浮いた?!」



動揺した声が聞こえ下を見るカーニャ、するとそこには1人の黒い髪色をした短髪の青年が驚きで腰を抜かして座り込んでいた。



まずい、見られた。



カーニャはすぐ様この街を出ようと教会から降りると走ろうとする、だが青年は着地地点を予め予測して居たのか、カーニャの足を掴んで止めた。



「ま、待ってくれ、その姿、旅人の人だろ!少し話を聞いてくれ!」



そう言ってカーニャを止める青年、焦って居る表情を見るとカーニャを捕まえようとして居る様子では無かった。



「話し?」



「あぁ!ここじゃまずい、教会の中に!」



そう言って腰を抜かして居た青年に手を引かれ教会の中に入る、そして鍵が掛かった部屋の鍵を青年が中に入るとそこにはカーニャが大きくなったかの様な少女が居た。



「レイズ!彼女はだれ?!」



見知らぬ人が入ってきた事に動揺して立ち上がる少女、だがレイズと呼ばれた青年が大丈夫だと伝えるとホッとした表情でその場に座った。



「それで、話って何?」



「あぁ、実はこの国の国王に俺達追われて居るんだ……」



「魔女だから?」



「ち、違う!俺とアミーは普通のなんの力も持たない一般人だ!」



そう弁解するレイズ、だとすれば何故追われて居るのか疑問だった。



「なら何で追われて居るの?それにアミーだっけ、彼女の髪色は何で水色なの?」



「実は……俺がこの国の本当の王なんだ、アミーは俺の婚約者、つまり時期王妃……だがレムドって奴が現れた所為でこんな事に……」



悔しげな表情で言うレイズ、とても彼の言う事が信じれなかった。



「それが本当って言う証拠は?」



「あったらこんな事になってないよ……だが俺とアミーは本当に王室の人間だったんだ」



とてもじゃないが信じられない話をするレイズ、だが何故だろうか、彼が嘘を言って居る様に見えなかった。



普通の人なら妄想とかで済ますのだろうが……もう少し話しを聞いて見ても良かった。



「分かった、信じる……それで何で王室を乗っ取られたの?」



「信じてくれるのか!?ありがとう……確かレムドが現れたのは3日ほど前、奇妙な光が街を覆ったって言う日だったよ」



「奇妙な光?」



「そう、俺とアミーはちょっと宮殿の地下にある書庫で調べ物してたから見てないんだけど何でも暗い夜空に突然閃光が走る様に光が街を覆ったらしいんだ」



そう不思議そうな顔で話すレイズ、その光は今回の事と何か関連があるのだろうか。



「それでその後どうなったの?」



「その後は調べ物がひと段落したから部屋に帰ろうとした時レムドが現れたんだよ、そして王宮の兵士から逃れる様にこの教会に逃げ込んだ……どうにか話しをして偽物も伝えようとしたけど、どういう事か国民全員がレムドを三代続く国の国王だと思ってるんだよ」



拳を握りしめて悔しそうにいうレイズ、カーニャはその話を聞いて少し考えて居た。



3日前、レムドが現れた時と同タイミングに起こった国民全員が見た謎の閃光……そしてそれを見て居ないレイズとアミー。



見た国民はレムドを王と、見ていないレイズ達はそれを認めて居ない……つまりこれは恐らく洗脳能力の類いとカーニャは結論付けた。



だがそれを解く術が分からない、レムドを倒せば解けるのか、又は解除魔法を使わないと解けないのか……難しい顔をして居ると黙っていたアミーが口を開いた。



「そう言えばレムドが私の髪色を見て恐れていたの」



「アミーの髪を?」



「うん、私のこの髪、死んだお母様が好きだった水色を髪色にしたんだけどレムドはこの髪を見て魔女が何ちゃらって、そのおかげで逃げれたの」



そう言うアミー、一先ず彼女が魔女の末裔で無いのは分かった、そしてそれに加えてレムドは恐らくマグハール達の仲間だと言う事が分かった。



この髪色で恐怖を抱くのはその情報と強さを知っているマグハールだけ、ついこの間開花した能力なのだから魔女の伝説を知って居るだけの人ならそこまで恐れはしない、所詮伝説なのだから。



だがそれでレムドが恐れたと言うことは少なからずマグハールからその脅威を聞いたから、つまりシストリアが無くなった今、次の配下にこの国を選んだのだろう。



問題はどうやってレムドを倒すか、洗脳が主な力だとすれば自分も洗脳されかねない……作戦を立てた方が良さそうだった。



「レムドは私がどうにかする、それを実行に移すに当たって王宮の内部を書いた地図とか無い?」



まずはどんな構造になって居るかを知らなければこちらが圧倒的に不利、それにピンチの逃げ道も確保しておきたかった。



「あ、私が覚えてるからちょっと待って」



そう言ってベットの上に座っていたアミーが戸棚の引き出しからペンと定規、大きな紙を取り出す、そしてそれを机の上に広げると丁寧に内部構造を描き始めた。



「アミーは記憶力がいいんだ、それで俺は何かする事はあるか?」



アミーが内部構造を描いてくれて居るその隣でレイズに何か役割が無いかを考える、だが思い付くのはレイズの能力を把握する為の盾役ばかり、あまり他にする事は無かった。



何せ2人とも顔が割れて居る、この街で何かを調達させる訳にも行かなかった。



「そうだ!俺こう見えても王子の傍ら騎士もしててな、兵士の数とかなら分かるぜ!」



そう誇らしげに言うレイズ、彼が騎士なのは少し意外だったが洗脳が能力の相手に対して兵士の数を知るのはあまり意味があるとは思えなかった。



洗脳の特徴は誰でも自分の盾や兵士に出来るという事、つまり兵士の数を知った所で市民が洗脳で戦わされればその情報は無意味となる訳だった。



だが彼の好意を無下にするのもアレだと思いカーニャは一応聞いておいた。



「じゃあ兵士の数……聞かせてもらう」



「まず王宮には四つの門から入れるんだが南門に兵士が4人、北の正門に10人、東門と西門に5人ずつの見張り兵は24人だ、んで中には今はレムドの警護をしている兵士が凡そ40人、その他は王宮の側にある兵舎で休んでいるんだよ、因みに今は少ない方、レムドの命で昨日500程兵がフィレンツェに向かったからこの国には100人位しか今は居ないかな」



「予想より多い……」



この国には5000人しか人が居ないのにその十分の一以上、つまり500人以上が兵士なのは少し驚きだった。



その数の量をついこの間まで戦闘経験も無かった自分に捌けるのか……不安になるが今はもう引く訳には行かなかった。



「出来た!これが王宮の内部です!」



そう言って紙を広げて見せるアミー、それを見るとカーニャは頷き作戦を立てた。

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