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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第3章 覚醒の魔法使い編
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第7話 マグハールの幹部

おかしい……静まり返った豪華な富裕層の街、近づいた途端引き返して行った門前の兵士達、不自然でしか無かった。



富裕層の人々は予め逃げる様に言われたのかと思ったがちらほら窓からこちらを覗き込んで居るのを見るとまだ居る様……だがこの静けさは異様だった。



「うーん……恐らく向こうはミリエルの親を交渉のカードに使う気だろうな」



「交渉のカード?」



アレスの言った言葉にオーリスが反応する、交渉のカード……どう言う事なのかカーニャも気になった。



「オーリスさんの実力はこの国でも五本の指に入りますよね」



「まぁ自分で言うのも恥ずかしいがな」



照れながら言うオーリスを他所にアレスは説明を続けた。



「つまり戦争が完全に無くなっていない今、貴重な戦力を失うのは向こうも避けたいはず、となればミリエルの親とカーニャを交換する様要求して来るはずです」



「成る程……」



意外と頭の回転が早いアレスに驚きを隠せないカーニャとミリエル、自分はともかく幼馴染のミリエルまで知らなかったとは本当に幼馴染なのだろうか。



「じゃ、じゃあどうするのよ!」



焦りを隠せないミリエルの肩に手をポンと乗せるアレス、この様子は何か策でもあるのだろうか、彼が凄く頼もしく見えた。



「正直言ってオーリスさん頼みだ」



それだけを告げるアレス、先程の頭のキレはどこに行ったのだろうか、アレス以外の3人が呆気に取られていると再びアレスが話し始めた。



「正直俺は兵士を2人ぐらいしか相手に出来ない、それにミリエルも精々1人が限界……カーニャは戦闘経験なさそうだし、オーリスさん以外は戦力にならないんですよ」



そう淡々と言うアレス、冷静な分析だった。



確かに15歳の子供が3人……何か出来るわけでも無い、それにアレスとミリエルは剣術指導を受けていたと言えど殺し合いの経験は無い……つまりこの場で頼れるのはオーリスだけだった。




こんな時クロディウスが居れば……その考えばかりが頭をよぎる、その時一直線に続く富裕層のお洒落な店が立ち並ぶ道のど真ん中に1人の男が椅子に座って剣を肩にかけ、項垂れているのが視界に入った。



それを見た途端オーリスの表情が険しくなった。



「後ろに下がって……絶対に戦おうと考えるなよ」



剣を抜いて鬼気迫る表情でそう言うとゆっくりと男に近づいて行くオーリス、殺し合いの戦いは幾度と無く見てきたがかなりの緊張感が走っていた。



「オーリス、俺は君が裏切って悲しいよ……あんなに仲が良かったのに」



「何を言うかと思えば、エリド……お前と俺は然程話した事無いだろ」



「あれ?そうだったっけー」



ゆっくりと椅子から立ち上がると長い前髪で前が見えないのかふらふらと少しオーリスとはズレた方向に歩いて行く、だがオーリスはそれを見ても警戒心を緩めはしなかった。



エリド……実力が謎に包まれていると言う謎が多いマグハール部隊の幹部、だが分かっていることは一つだけあった。



それは強いと言うこと、マグハールの部隊で幹部になるのはかなりの実力が必要と自分自身がよく分かっている……自分も元幹部なのだから。



殺されたアフロも同様に幹部、そして一番マグハール、つまり次期団長候補に近い位置に居た……今は死んだ様だがアフロとほぼ変わらない位置に居たエリドを侮る事は絶対に出来なかった。



「行くか……」



そうエリドが呟くと突然消えオーリス顔にフワリと風が当たる、その瞬間腹に激痛が走った。



「なにが……」



腹部に目線を向ける、すると鎧のお陰で決して深くは無いが浅くも無い程の傷ができていた。



そして後ろを振り向くとエリドが首を鳴らしながら前髪をかきあげて立って居た。



「早い……」



目で追えない、鎧が無ければ恐らく死んで居た。



「あれ?オーリスってその程度だっけ」



「うるさい……お前と手合わせなんてした事ないよ」



「はっはっ、そうだったねー」



小馬鹿にした様な喋り方をするエリド、そのやり取りをカーニャは観察して居たが恐らく彼は転生者では無く、自力であそこまで速くなったのだろう。



「俺にはこの後も戦いが控えてるんでな、最初から全力で行くぞ!」



そう言うとオーリスが剣を構えて走って行く、それをエリドは確認するや否や不敵な笑みを浮かべ足に力を込めた。



オーリスが斬りかかろうとした瞬間にまた消える、そしてまた後ろに現れるとオーリスの胸に傷から血が噴き出した。



「おっそいなぁ……」



「もうお前は攻略した……」



「は?」



オーリスの言葉に少し困惑するエリド、二撃浴びた癖に何を言っているのかさっぱりだった。



「じゃあこれを避けてみろよ!」



そう言ってまた消えるエリド、だがオーリスは片手を突きその場にしゃがむと1秒後また立ち上がり後ろを向いた。




今度は無傷、そして後ろに立って居たエリド目掛け剣を振り下ろした。



その瞬間剣戟の声が響き渡る、そしてオーリスは休む暇も無く攻撃をした。



「どうした、お得意の速さを見せてくれよ」



「くっ……」



挑発するオーリスに悔しげな表情を浮かべるエリド、何故あの速さで反撃しないのか、それは足に理由があった。



二撃を受けて見て気が付いた、エリドは動く前に数秒、話しで気をそらし足に力を込める……つまりそれはあのスピードを出すのに時間が多少かかると言う事、こうして絶え間なく攻撃すればあの速さは封じれると言う訳だった。



「お粗末な剣さばきだ……お前に恨みは無いがここで倒れてくれ」



そう言って剣を握る手の神経部分を丁寧に切ると足の腱も同様に切る、するとエリドはその場に倒れこんだ。



「くそっ!何で、何で裏切ったオーリス!」



剣を鞘に納めカーニャ達の方へ向かおうとして居たオーリスに怒鳴る様尋ねるエリド、何故裏切ったのか……それをマグハールのやって来た裏の悪事を知らないエリドには到底分かるはずも無い、オーリスは何も言わずに背を向けた。



「だ、大丈夫ですかオーリスさん?」



「大丈夫だよアレス君、それよりも先に急ごう……兵士がいないうちにね」



そう言うオーリスの表情は勝ったと言うのに暗かった、何故だろうか……何か不安を抱えているかの様だった。



何故なのかを聞こうとカーニャは口を開こうとする、だがそれを聞くのはやめておいた。



時には知らない方がいい事もある……それをクロディウスに教わったから。



「そうですね、それじゃあ急ごう……皆んな」



そうカーニャが言うと走り出したオーリス、そして彼を先頭にカーニャ達はついて行った。

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