第6話 冒険者ギルド
「クロディウスさんお腹が空きました」
そう言いクロディウスの裾を引っ張りレストランの方向を見るカーニャ、ここ1週間でかなり自分から話しかけるようになって居た。
だがまだ恐怖心と言うのか信頼して居ないと言うのか分からないが顔色を伺うのを見る限りあまり心を開いている様子では無かった。
「まぁまて、任務が終われば食わしてやるよ」
そう言い頭を撫でる、最近は軽いスキンシップ位は出来るようになって居た。
「わかりました……」
口を八の字にしてあからさまに拗ねるカーニャ、可愛いのだが拗ねたいのはこっちの方だった。
なんせシルバは死なないからともかくセイラを殺さなかったことに女神様がご立腹で冒険者になって転生者のグループを調査すると言う罰を与えられている最中なのだから。
当然黒騎士のままでは冒険者は出来ない為にわざわざ変身魔法でかなりのイケメンになってまでの任務中……本当に面倒臭かった。
首からかけられた白のタグをいじりながらギルドの中へと入る、すると周りから好奇の目で見られた。
白のタグ、それは冒険初心者を意味していて言わばひよっこ、馬鹿にされるのは至極当たり前の事だった。
ランクは白、銅、銀、金、プラチナとあり金ともなれば大抵の場所や国に行けるらしく一先ずはそれを目標に目指さなければならなかった。
具体的に金で出来ることは上記の事と他の冒険者の情報にアクセスできる事、プライバシー的にどうかとは思うが金に到達するにはかなりの高レベル依頼をこなさなければいけなく、早々辿り着ける物ではなかった。
ギルド内の依頼書に目を通し何か良さげな依頼が無いかを確認する、すると黒騎士討伐と言う依頼があった。
「これは……」
依頼書を手に取り内容を確認する、『廃城を根城にする殺人黒騎士討伐求む』と書かれた依頼内容、報酬は望む物で受注条件は金以上と何が何だか分からなかった。
黒騎士は確か自分の筈、だが廃墟など根城にした事がない……偽物なのだろうか。
受けたいがランクが足りない、受付を説得すればどうにかなるのだろうか。
「すまないがこの依頼受けられないか?」
黒騎士討伐の紙を受付カウンターに置き座っている受付嬢に話しかける、クロディウスのタグを見るや否や何も言わず手で帰る様にジェスチャーした。
「どうにかならないか?」
「無理です、死にたいんですか?」
「大丈夫だ、俺は強いから死なない」
「そう言う人はごまんと見てきました、わかったら帰ってください」
そう言い全く取り合わない受付嬢にすこしイラつく、普段なら適当に対象を殺して終わりなのだが今は冒険者と言う身、無茶な事は出来なかった。
「分かった、報酬は要らない、だから受けさせてくれ」
その言葉に少しだけ反応する、あともう一押し何かアクションを起こせば受けれる気がした。
「じゃあパーティを組んで下さい」
「パーティだ?」
「はい、2人ほど仲間を集めてからまた来てください」
そう言うとまた作業に戻る受付嬢、こんな訳の分からない依頼にパーティを組むなど冗談じゃなかった。
ギルドに居るのは大して戦力にもならなさそうな奴等ばかり、だが今回ばっかりは受付嬢の言う通りにしないといけなさそうだった。
パーティ募集掲示板に強者募集とだけ書いてギルドの酒場の端で待つ、その間に料理を頼んでやるとカーニャの表情が無表情から少しだけ明るくなった。
余程お腹が空いていたのか一心不乱に料理を食べ続けるカーニャ、いつも決まってご飯を食べる時だけ無表情では無くとても幸せそうな顔になる……彼女は一体どんな環境で育って来たのだろうか。
興味本位、魔法で過去を少しだけカーニャには悪いが覗かせてもらおうと頭に手を当てた瞬間激しい頭痛が走り手が弾かれた。
「な、なんだ今の……」
手は若干ビリビリする、カーニャは特に何事も無くただ料理を食べて居るだけだがさっきのは一体何だったのだろうか。
魔女の過去は覗けない、とでも言うのだろうか、これはまた厄介な少女だった。
「お兄さんパーティメンバー募集してるのぉ?」
色っぽい艶のある声でカーニャを見ていたクロディウスに話し掛けてくる、誰かと後ろを向くと何とも際どい服を着た巨乳のサキュバスみたいな女性が立っていた。
胸を見て明らかに怯えるカーニャを横目に彼女のタグを探す、すると胸元から金色のタグを取り出した。
「お探し物はこれ?」
「あ、あぁ……でも何故パーティに?」
「決まってるわよー、貴方が可愛いか・ら」
「は、はぁ……」
そう言いクロディウスのおでこをピンっと弾く女性、一体彼女は何なのだろうか。
「取り敢えず俺はセレス、んでこっちがカーニャだ」
「私はカミラ、宜しくね」
セラスと偽るクロディウス、理由は単純、あの名前は余りにも有名過ぎる。
一先ずは1人目を確保しもう1人を待とうとその場に座ろうとする、するとカミラの後ろからかなりガタイの良い男がやってきた。
「待たせたなカミラ!」
「あー、グレアス……存在忘れてたわ」
頭を抱えグレアスと言った男から見えない位置で微妙な表情をするカミラ、ストーカーなのか知らないが追い払おうとした時腕につけていたタグを見て気が変わった。
「あんたも金冒険者なのか?」
「お?そうだがカミラ、この白いひよっこは誰だ?」
「黒騎士討伐の任務受けたい子なんだって、可愛いでしょ」
「ハッハッハ!黒騎士退治とはまた大きく出たもんだな!」
そう言い笑うグレアスとクロディウスの肩に腕を回すカミラ、真面目にやる気はない様子だったが俺からすればそれぐらいがちょうど良かった。
「依頼受けて来るから外で待っててくれ」
そう言いカーニャだけを連れて受付嬢の元へと行く、するとこちらを見ていたのかすんなりと受注できた。
「どうも」
「あなた、あまりあの2人に守ってもらう事期待しない方が良いわよ、実力は確かだけど自己中心的……死なない事を祈るわ」
「ご心配どうも」
そう言ってギルドを出る、強いものは自己中心的なのが丁度良い、そに守ってもらう予定も無い。
外で待って居る2人の元へ行くと廃城への道のりを歩み始めた。