第5話 会いたい
「クロディウス……成る程、名前は分かった、それで外見や性格は?」
「黒い鎧を着てて……性格はいつも冷静で怖い感じですね」
クロディウスとの記憶を辿り彼の情報を引き出す……だが彼の事をよく分からなかった。
出会ってからの期間はおよそ2ヶ月……その間に色々な事があったがカーニャはクロディウスの事をよく考えれば何も知らなかった。
彼の素顔、彼の過去……何もかも、分かるのは黒い鎧を身に纏い、無慈悲に転生者を殺すと言う事だけ……ならば何故自分は彼にまた会いたいのだろうか。
カーニャの答えを待つアフロの紳士を他所に考える……クロディウスは自分に名前を付けてくれた、だがそれ以外の事は何もと言っていいほどしてもらっていない。
むしろ普通の人ならあの態度に恐怖すら覚えるはず……なのだが何故か不思議と居心地が良かった、無慈悲で、いつも怖いクロディウス……なのに何故かもう一度会いたくて仕方がなかった。
「特徴はそれぐらいです……」
「クロディウスか……分かった、少し解析に時間をくれ」
カーニャの言葉を聞き、そう言って紙に書いた文字をなぞり額に当てる、指でなぞった部分は綺麗に消え、指を当てた額が青く光って居た。
不思議な力、恐らく彼もいわゆる転生者なのだろう……だが何処からどう見ても普通の人、見分けが付かなかった。
暫くその場でボーッとアフロの解析が終わるのを待つ、思ったよりもあっさりと居場所が分かりそうで少し拍子抜けと言うか驚きだった。
アレスの言った言葉を思い出すが癖があるのは見た目だけ、中身は至って紳士だった。
そんな事を考えているうちにアフロの解析が終わったのか大きく溜息をついて額の汗を左手のハンカチで拭く、カーニャはもう待ちきれなかった。
「クロディウスは今オージ……」
アフロが言葉を話そうとした時、突然言葉が止まった。
「どうしたんですか?」
「まず……い、まさかここが見つかる……とは」
途切れ途切れにそう言い血を吐くアフロの男、すると後ろから1人の男が現れた。
「君を尾行して良かったよお嬢ちゃん……やっとこいつを殺せた」
そう言ってアフロから剣を抜き血を払うと鞘に収める、そしてフラフラとしているアフロを蹴り倒すと男はカーニャに近づいて来た。
「僕の名前はマグハール、シストリア王国騎士団を纏める騎士団長……ずっとこの男を追って居たのですよ、個人的にね」
長い銀髪をなびかせ赤い瞳でじっとカーニャを見つめるマグハール、彼の名はオーリスから聞いた事がある……だが何処から付けられて居たのか全く分からなかった。
そもそも何故彼が騎士団長から狙われて居たのかも分からない……もう既にアフロは生き絶えて居り得られた情報はオージのみだった。
「怖くて声が出ませんか?大丈夫です……君は殺しませんよ」
そう笑顔で言うマグハール、だがこんな現場を見て無条件に返してくれるとも思えなかった。
「何が望み……」
少し睨みつける様に言うカーニャ、それを見てマグハールは少し可笑しそうに笑った。
「何が可笑しいの」
「いや、オーリスからあまり感情を見せない子って聞いてたから少し可笑しくてね……まぁ安心して、僕は君に何もしないよ……大事な身代わりだからね」
「身代わり……?」
「そう、この男は第2騎士団の団長、そして僕の秘密を握るものだったからね……だから殺した、そしてその罪を君に被せるって訳」
そう言うマグハール、だが言っている事がめちゃくちゃだった。
なぜ自分が身代わりにならなければならないのか、何故彼が殺されなければならないのか……理不尽だった。
「それじゃあ……頑張ってね、大罪人のカーニャちゃん」
鼻に付く様なムカつく言葉を残してマグハールは壁をすり抜けて行く、暫くカーニャはその場に立ち尽くす事しか出来なかった。
久し振りに見た人の死、やはり呆気ないものだった。
生きるのはこんなにも辛く、難しいのに……死ぬのはこんなにもあっさりと、もう何が何だか分からなかった。
国を守る騎士団長がこんなにも簡単に人を殺し……正義だと思っていた騎士に騙され身代わりとされた、一体何が悪で、何が正義なのか分からなかった。
ふらふらとした足取りで外に続く階段を上がる、恐らくこれから自分は追われる身となる、だがクロディウスが何処に居るか分かった以上この国、シストリアに用は無かった。
目指すはオージギア、アフロの言ったオージとは恐らくこの国の事……ここから遠いと言えば遠いがシストリアが中心国なだけにまだマシだった。
大体3ヶ月もあれば着く……それまでの辛抱だった。
階段を上がると光が見えてくる、その光はとても眩しかった。
手で光を遮りながら外に出るとアレスが待っていた。
「どうだ?情報は得られたか?」
何も知らずに聞いてくるアレス、その姿に少しムカついたがすぐに平常心を取り戻した。
「うん……でもアフロの人は死んだ」
「え?!アフロってあの人が!?なんでだよ!」
突然のカーニャの言葉に動揺を隠せないアレス、事の顛末を説明しようとした時、アレスの後ろから大量の兵士が走ってきて居るのが目に入ってきた。
これは誰でも分かる、逃げなきゃまずいやつだった。
「説明は走りながらする、今は来て!」
そう言ってアレスの手を引くと一先ず富裕層に戻る様頼む、それにアレスは無言で頷くと走り出した。
「それで、何があったんだ」
「マグハールって人が突然アフロの人を殺した……何か秘密を握られたからって」
「ま、マグハール……」
その名にまた動揺するアレス、それは無理もない、何せこの国の英雄と言ってもいい程の男……その人がこの国の実質No.2を殺したのだから動揺も当然と言えば当然だった。
「成る程……普段ならとても信じられないが……何だろうな、お前が嘘をついて居る様には見えない」
「信じてくれるの?」
「あぁ……今日出会ったばっかりなのにな、不思議だよ」
そう笑って言うアレス、次第に富裕層へと近付き壁が見えてきた。
「大分とやばいな……」
当然と言うべきか壁の門周辺は兵士で補強されていた。
自分は戦えず、アレスも多少戦える様子だが15歳、後ろから追って来て居る兵士も合わせて50は超える兵士達を2人で倒すのは不可能だった。
とは言え後ろにも追って、2人はなす術を持たず兵士が待ち受ける門へと走って行った。




