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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第3章 覚醒の魔法使い編
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第4話 アフロの紳士

「ここが貧民層……」



辺りに散らばるゴミ、半壊の建物や過去に荒らされた形跡のある店、戦争が起こった街の様に荒れ果てて居た。



路地に座って居る人々は皆痩せ細り……過去の自分を見て居るかの様だった。



「お前この街を見ても以外と平気なんだな」



意外そうな表情でカーニャに話し掛けるアレス、そう言う彼も富裕層にしては大分この状況になれて居る様子だった。



「俺か?俺はまぁ……こっち側の人間だからな」



カーニャの顔を見て何か感じ、悲しげな笑顔でそう言うアレス、だが彼はミリエルと幼馴染の筈……少し気になった。



「どう言う事?」



「単純な話さ、八年前に両親をここで殺された……そんな俺を拾ってくれたのが今のマルコス家、本当なら今頃くたばってるのにな」



笑いながら一軒のボロボロになった家の前でそう言うアレス、恐らくここが彼の元々住んで居た家なのだろう。



扉を開けようとするとボロボロ過ぎてそのまま倒れて行く、そして凄い量の埃が舞った。



思わず咳き込むカーニャ、中は思った程荒れては居なく、埃は凄いものの家具などはちゃんとあった。



「懐かしいな、八年ぶりか……」



暗くてアレスの表情は見えないが恐らく悲しげな顔をして居るのだろう、だが自分にはこう言う思い出の場所も無い……悲しいものだった。



「よし、俺の目的は済んだ!後は例の男を探すか!」



パチンと何かを叩く音と共にアレスが元気よく言いカーニャの手を引っ張って外に出る、ふとアレスの顔を見ると涙が伝った跡が見えた。



彼と会ったのは今日が初めて……だがその初めてで色々と知り過ぎた、カーニャは少し複雑な気持ちだった。



アレスに引かれるがまま薄暗く不気味な路地を走る、一片の迷いも無く走って行くアレスの目的地が分からなかった。



例の男とは言ったが居場所は大まかな貧民層という事しか分からない、だがアレスはどんどんと迷路の様な道を進んで行く……例の男と言うのはこの街ではかなりの有名人だったのだろうか。



「なぁ、やっぱ聞いていいか?」



「何を?」



突然立ち止まりそう言うアレスの問いに不思議そうに聞き返すカーニャ、彼の声は何処か真剣だった。



「お前は一体誰を探して居るんだ?わざわざこんな危険まで侵して……オーリスさんと言えばこの国では知らない人は居ない騎士、何故彼に聞かないんだ?」



「それは……」



「聞けない理由があるのか」



図星で言葉を返せないカーニャ、無表情な筈なのに何故彼は分かるのだろうか……少し怖かった。



「今日会ったばかりで当たり前だがお前は謎が多過ぎる、過去に、表情に探し人に……何故お前はそこまでその人にこだわる」



その言葉に俯くカーニャ、何故そこまでこだわるのか……そんなのは決まって居た。



「私に名前をくれた人だから……私の唯一の居場所だから」



「お前の家族なのか?」



「家族……では無い、でもそれと同じくらい大切な人なの」



カーニャと言う名をくれたクロディウス、たとえ突き放されて今ここに居るのだとしても私は彼の元に戻るつもりだった。



彼はおかえりと笑顔で言って迎えてくれる様な性格では無いのは分かっている……だが自分にはあそこしか無いのだ、どれだけ危険があろうとも……あそこでまた結城とクロディウスと……旅をしたかった。



「そうか、それだけの覚悟があれば大丈夫だな……例の男は結構クセが強いから気を付けろよ」



顔見知りの様に笑って言うアレスが指差す先をみると下へと続く階段あった、どうやら彼は着いては来てくれない様だった。



暗い点滅して消えかけそうな明かりが灯る地下へ続く階段を下って行く、少し心細いが怖くは無かった。



階段を下りきり暫く真っ暗な一本道を歩く、すると突き当たりにポツンと灯りがついた隠れ家の様な居酒屋がそこにはあった。



「ようこそ、小さな依頼主さん……」



カーニャが扉に手を触れようとした瞬間に扉が開きアフロ頭のスーツを着た男が紳士に出迎える、まるで前から来る事を予想して居たかの様……だがカーニャは然程不思議がらなかった。



今はクロディウスの居場所で頭がいっぱいだった。



「聞きたいことが!」



珍しく声を張り上げそう言うカーニャ、それに対してアフロの男は指を口に当て静かにする様ジェスチャーした。



「探し人ですね……奥へ」



ロビーの様な場所からアフロに奥へと連れられ扉を開ける、そして連れてこられたのは良く貴族などが座って居る豪華な椅子と机があるだけの殺風景な部屋だった。



「さぁ、話を聞きましょう」



椅子に座り机の上に足を乗せる男、今までの紳士な態度とは真逆の行動、こればかりは少し不思議だった。



だがそれを口にする事なくカーニャは男が座る机までゆっくりと歩いた。

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