第20話 信じた道を歩む
「マキ……ア?」
洞窟に着いて早々、視界に入って来たマキアの姿は血だらけだった。
心臓部分にポッカリと空いた穴、その姿にユリウスは困惑して居た。
ふと隣を見ると黒騎士が立っている……それを見て直ぐ様ユリウスは理解した、黒騎士がマキアを殺したのだと。
「黒騎士ぃ!!!!」
凄まじい怒号を上げて剣を握り締めて飛び掛かろうとするユリウス、だがそれをエリスが全力で止めた。
「離せ!俺はあいつを許さない、絶対に殺してやる!」
完全に正気じゃないユリウス、それに困惑するエリス、ふと止める手が緩むとユリウスは一直線に黒騎士目掛け走って行った。
「クロディウス!」
「エリスか……積もる話もあるが今はこっちだな」
そう言って鎌を出現させると柄の部分で吹き飛ばす、勢い良く壁にぶつかるがユリウスは謎の光に覆われて無傷だった。
不思議な力を気にも止めず、ユリウスは再び剣城を握り締めると右に炎を、左に氷を纏わせる、そして右の剣で地面を刺した。
すると黒騎士の下から灼熱の火柱が上がる、だがそれをもろともせず黒騎士は歩いて火柱を抜けて来た。
「化け物めが……」
少し冷静になると氷の剣を氷で何個も複製する、それを黒騎士の兜の隙間めがけて何個も飛ばすとそれを弾く間に死角へと移動した。
そして剣の炎を消すと体を纏う光で剣を生成する、そしてその剣で黒騎士を切り裂いた。
「光魔法……成る程、この鎧じゃ無理か」
そう言って下がる黒騎士、その瞬間鎧にヒビが入り割れた。
鎧の下の服も切れ、腹部から血を流す黒騎士、この勝負にユリウスは勝機を見いだして居た。
光で剣を何個も周りに生成するとそれを手も使わずに飛ばして行く、それを黒騎士が闇の靄で防いでいるうちにユリウスは再び死角に移動しようとした、だがその瞬間凄まじい殺気を感じ後退した。
「下がったか……正解だな」
そう言うと黒い靄の中から大量の骸骨兵が出て来る……これはマキアの腕を奪った腐敗させる攻撃を持つ厄介な兵士……だがユリウスは謎の光を操ると人の形に変化させ大量の兵士を複製した。
何故か使い方が頭の中に流れ込んでくる……これが王の力、凄まじいものだった。
「行くぞ黒騎士!!」
そう言って突っ込もうとするユリウス、だが黒騎士は骸骨の兵を消した。
「偽物の光魔法……そんなものに頼るな」
そう言って闇が凄まじい勢いで辺りを包む、するとユリウスの光は簡単に消えた。
「な?!」
辺りを見回して黒騎士の気配を探す、だが黒騎士の姿など暗闇の中で見つけられる訳も無かった。
そして背後から殴られると地面に倒れこむ、そして闇は晴れた。
「その力……何処で手に入れた」
「殺すなら殺せ……何も言う気は無い」
「そうか……」
それだけを告げると背を向けると兜を投げ捨て歩いて行くクロディウス、倒れるユリウスを見てオロオロしているエリスを手招きして連れて行くとそのまま消えて行った。
「何故殺さない……マキアが居ないなら俺は何を頼りに生きればいい……俺は、俺は……」
仰向けになりながら腕を目に当て涙を流すユリウス、ずっとマキアに支えられて来た……それが無い今、何を頼りに生きれば良いのか分からなかった。
いっそのこと自害しようと剣を首元に持って行く、だがその時マキアの声が聞こえた。
「何してるのユリウス」
怒った声色のマキア、ふと体を起こし死体の方を見ると死体の側に光を放っているマキアが立って居た。
「マキ……ア?これは夢なのか?」
「違うよ、黒騎士が掛けてくれた魔法……ユリウスに言いたい事があってね」
魂だけを呼び戻し少しの間だけ定着させる魔法をマキアに……だが何故殺した筈のマキアにそんなことをするのか理解不能だった。
「一つ、黒騎士に殺されたんじゃ無いからね私」
「殺したのは黒騎士じゃないのか?!」
「うん、黒いオーラに覆われた男に私殺されちゃった」
笑顔でそう言うマキア、黒いオーラと言えばここに来る途中見た、あの血はそう言うことだったのかとユリウスは今理解した。
「二つ、ユリウスは王に騙されてるの」
「王に俺が騙されている?」
マキアの言葉に再度驚く、黒騎士の鎧を破壊できる程の力をくれた王が自分を……とてもじゃないが信じられなかった。
「証拠はあるの、でもその証拠を取り戻すには記憶が必要なの……だから黒騎士に会いに行って、彼なら戻してくれる……きっと」
「だがあいつは転生者を殺し回って……」
「それは事実だけどきっと何かある筈なの……だって彼私が死ぬ時にユリウスの振りをしてくれた、多分根はいい人なのよ」
そう言ってまた笑うマキア……すると光る彼女の体が徐々に薄くなって行った。
「あちゃ、お別れみたいだね……」
「そんな……俺はどうすれば……」
「もう、三つ……私はナヨナヨしたユリウスは嫌い……正義感が強く、弱きを助け、信じた道を歩いて行く白騎士ユリウスが好きなの……だから自分を信じて?」
「自分を信じる……」
確かに昔は思い出せないが少なくとも目覚めてからは何かを信じて歩んでいなかった……王を信じるに値する物も見せて貰っていないのにただ言われるがまま……その言葉にやっと目が覚めた気がした。
「良い顔つきになった……ありがとね、楽しい日々を……大好きだよユリウス」
そう言って光となり消えて行くマキア、その光を掴もうとしても指の隙間から出て来る……そして完全に消えた。
ユリウスは立ち上がるとマキアの死体近くまで行き片膝をつく、そして胸元のペンダントをそっと外すと首元から掛けた。
「ありがとなマキア……やっと思い出したよ、信じた道を歩いて行く……俺も好きだったよ」
そう言って黒騎士の歩いて行った方へ走って行くユリウス、その頬には涙が伝っていた。




