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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第2章 正義の白騎士編
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第18話 女神の昔話 終

やはりと言うべきか……突撃隊は捨て駒に過ぎないのだろう。



燃え盛る街の中剣を地面に着き片膝をついて息を切らすレイル、周りにはオージギア軍兵士の死体が無数に数え切れないほど転がっていた。



オージギアの国内にある兵士達が拠点としていた街に攻め入り何とか死に物狂いで陥した……だが生き残ったのはレイルただ一人、その他の数百人居た兵士は帰らぬ人となった。



「よく頑張った」



それだけを言い後から来た騎士団長率いる本隊がこの功績を自分のものにする、だがそれは正直どうでも良かった……仕事を終えた自分はもう国に帰れる、早く国に帰ってユリナスに会いたかった。



レイルは足早に街を去り2日掛けてオージギアから国境を超えてクーロディリスに入る、すると不自然な光景がいく先々で広がって居た。



燃える村、大量の国に向かっている馬の足跡……だが国から本隊は来た筈、そんな訳であるはずがなかった。



最悪の事態では無いことを願いながら国に急いで向かう事更に2日、その願いは叶わなかった。



国から上がる火の手、遠目から見えるオージギア軍の兵士、虐殺される国民……その光景にレイルは崩れ落ちた。



「街が……」



至る所から聞こえる破壊音、だが幸いにも王宮にはまだ火の手は見えなかった。



ユリナスの無事を祈り街を走り抜けて行く、殺される国民を見て見ぬ振りしてただひたすらに……そして王宮に着くとレイルは剣を抜いた。



「ユリナス!ユリナス何処だ!!」



混乱している王宮の人々を押し退けてユリナスを探す、だが何処を探せどユリナスの姿は見えなかった。



まさかもう……そう思った時ユリナスの父、国王が襲われている……いや正確には国王が襲われている国民から身を呈して守っている姿が視界に入って来た。



「この命に代えても国民は殺させん!」



凄まじい気迫で兵士を圧倒する国王、だが数が多く押され気味だった。



剣が国王の喉元まで突き出されるが間一髪でレイルが助けると逃げる様伝える、そしてレイルは一瞬にして兵士を消した。



「れ、レイル君!生きて居て良かった!」



国民だけを先に逃がして戻って来ると手を握ってそう言う、その手はかなり震えて居た。



「国王様……ユリナスは何処に?」



「彼女なら……」



そう言って王室まで連れて行かれ隠し扉を開けてみせる国王、それを見てレイルはホッとした。



ユリナスはまだ生きている……扉の中に入ると急いで階段を駆け下りる、そして地下の大広間に出ると大勢居る人の中からユリナスの姿を探した。



辺りを見回して彼女の特徴的な髪色を探す、それにしても国民は皆不安げな表情で怯えて居た。



何故国民達がこんな思いをしなくてはならないのか……レイルは怒りでいっぱいだった。



「レイ……ル?」



どよめく地下の何処からユリナスのか細い声が聞こえ辺りを見回す、すると怪我人が寝かされて居る場所に血だらけでユリナスが寝転がって居た。



その光景を見てレイルは目を擦りもう一度見直す、だが怪我をして居るのは確かにユリナスだった。



「何で……ここに?」



「ユリナスさんが心配で……大丈夫ですよね?死なないですよね?」



不思議そうな顔をして居たユリナスにそう答えると震えた声で言うレイル、それにユリナスは何も言わずにニコリと笑いかけた。



彼女の出血量は尋常じゃなく呼吸も荒かった……死ぬのは本当に時間の問題、だがそんな現実をレイルは認めたくなかった。



「ねぇレイル……」



「何ですか?」



震える手を上げて腰を屈めるレイルの顔に手を当てた。



「キス……驚いた?」



「当たり前ですよ、あれ初めてなんですよ?」



必死に話すユリナスの言葉に涙を堪えながら話すレイル、もうわかって居た。



「もぅ、こんな時まで……敬語なん……だねー」



「俺の取り柄でもありますからね」



「ふふっ……そうだねぇ……」



天使の様な笑顔で微笑むユリナスの頭に手を置き撫でるレイル、するとユリナスは嬉しそうに目を閉じた。



「ねぇレイル……最後に言って欲しい言葉があるんだ……」



そう言って口をパクパクさせるユリナス、それを見てレイルは嬉しそうに笑った。



「言われなくても……ユリナス、俺と出会ってくれてありがとう……大好きだよ」



はじめてのタメ語で話すレイル、それを聞き届けるとユリナスは過去最高の笑顔を見せ力尽きた。



それを見届けた瞬間レイルの目からは涙が溢れて止まらなかった……久し振りに出会えた心休まる人、それがまた奪われた……レイルは憎んだ、オージギアでは無く戦争を引き起こす人間と言う生物を。



そんな時ある言葉が聞こえて来た。



『力が欲しいか』



その問いにレイルは自然と首を縦に振って居た。



ーーーーーーーーーーーー



「これからが良いところですけど時間ですね」



昔話に聞き入って居たユリウスにそう言う女神、本当に良いところだっただけに少し名残惜しいがこれでやっと戻れると考えると早く戻りたかった。



ゆっくりと立ち上がると徐々に開く扉の前に立つ、そして完全に開ききった扉に入ろうとしたがユリウスは止まった。



「女神さんよ、一つ聞きたい事がある」



「何ですか?」



「レイルって人はもう死んでるんだよな?」



「当たり前じゃ無いですか」



そう言う女神、ふとユリウスはレイルにクロディウスが被った気がした。



「最後に……貴方が倒すべき相手は身近にいます、どうかお気をつけて……正義の騎士様」



そう女神が言うと扉に吸い込まれるユリウス、何故だか最後の言葉が妙に引っかかった。

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