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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第1章 記憶無き黒騎士編
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第5話 不死者

助けた少女の豪邸で得た報酬、それは騎士と言う安定した職業に就く事が出来る権利、だがセイラにはその報酬はあまり嬉しいものでは無かった。



試しに仕事をこなして見るが内容は街の警備に周辺諸国の緊急時の応援など、しかし平和なこの世界では騎士と言う職業は暇でしか無かった。



周りに自分より強い者も居らず稀にある戦地に行っても無双状態、そんな日々が続いた時アグネス湿原と言うシストリアの外れにある湿原で盗賊狩りの任務をしていた最中であのお方と出会った。



「セイラ!陣形を乱すな!」



団長の怒鳴り声に少し驚きながらも四方向を4人でカバーする陣形を保つ、盗賊には稀に自分の様な強い奴が存在するがまさかここまで強い奴が居るとは思わなかった。



剣から斬撃の様な風を纏った何かを飛ばして来る、それに仲間は次々とやられ、残るは自分のみになる、湿原の地面の所為で足がぬかるんで素早く動けない今の状況じゃあの盗賊との相性は最悪だった。



倒れた味方を眺めながらどう出るかを考える、すると盗賊の男は突然剣を鞘に納めゆっくりと近寄って来た。



「あんた俺の仲間になれよ」



突然そう言った男の言葉に驚きを隠せずにいるセイラ、確かに騎士と言えど国にそこまでの忠誠は誓っていないがまさかこの短時間にそれを見抜かれたのだろうか……もしくは自分の美しさに当てられたか、しかし彼の仲間になるにはあまりにもデメリットが大きい気がした。



シストリアには騎士団長が数人居てその強さは私の数倍らしく彼の仲間になると言う事はそんな化け物を敵に回すと言う事、それをするのはあまり賢い判断では無かった。



「断ったらどうなるの?」



「自ら茨の道を行くとはな……」



剣を構える盗賊の男、こうなれば彼を倒す他生存する方法は無かった。



「そうなるよね……」



ダルそうにゆらりと刀を構えると少女は一歩前に近づいた。



数分後地面に倒れ天を仰ぐセイラ、完全に負けた……完膚なきまでに叩きのめされた、完敗とはこの事を言うのだろう。



彼の強さはかなりの物、今の自分では到底かなわない実力、だが実力を付け直して再戦などは無理だろう、ここで死ぬのだから。



「つまらない世界だったな……」



「それが遺言だな」



そう言い剣を振り上げる盗賊、それを何の抵抗もせずにただゆっくり瞳を閉じると人生が終わるその瞬間まで待った。



あまりに呆気ない、生温い世界だと調子に乗っていた所為だろうか……本音はまだ死にたく無かった。



「安心しな新兵……俺が来た」



優しい男の声が聞こえ次の瞬間には凄まじい剣と剣が交わる音が聞こえる、私は助かったのだろうか。



恐る恐る目を開けると盗賊の姿はもう無く白銀の鎧を着た黒髪の青年が剣についた血を拭き取っていた。



「良く増援まで耐えたね、あいつは逃げたけど多分長くは無いよ」



「あ、あんたは?」



「シルバ・ディストリア、又の名を白永 栄……君と同じ転生者だよ」



そう言って手を差し伸べるシルバの手を握り立ち上がるセイラ、これが騎士団長、命の恩人との出会い……この日から人生がガラリと変わった。



真面目に訓練を積み何をするにも団長に着いて行く、そして数々の依頼もこなした……そして黒騎士の存在を知らされた時も団長ならやってくれると信じていた、だが現実は違った。



団長は倒れ仲間も居ない、そして自分はもう死ぬ直前……希望は無かった。



「団長……助けてくれてありがとうございました」



目を閉じ今度こそ死を覚悟する、もう助けてくれる人は居ない……団長のお陰で楽しい人生だった。



「安心しろセイラ……俺が居る!!」



団長の声が聞こえ鎌と剣が交わる音が辺りに響く、急いで目を開けるとそこには黒騎士に切り裂かれた筈の団長が立っていた。



傷は癒えていないが痛がる様子は無い、どう言う事なのだろうか。



「だ、団長……一体何故?」



「俺の能力は不死者、どんなに斬られようが殴られようが毒を盛られようが死なないんだよ」



セイラにそう説明するシルバ、普通にチート能力だった、とは言え倒す算段が無くなった訳でも無くクロディウスは少しだけシルバから距離を取った。



「あいつが距離を取っているうちに逃げろセイラ!」



クロディウスが一歩下がったのを確認した瞬間にセイラまで一気に距離を詰められない様直線上に入り叫ぶシルバ、だが当然と言うべきかセイラは躊躇していた。



「迷うな!お前には生きる権利がある!俺は死なないんだ、行け!」



「で、でもシルバ様……」



「良いから早く行け!」



怒鳴るシルバに後退りしながら逃げようとするセイラ、殺そうと思えば2人とも殺せたがクロディウスはあえてそれをしなかった。



仕事中は冷酷にを心掛けていたがたまにはこう言うのも面白いと思っていた、このセイラと言う少女が今後どう成長して立ちはだかるか……中々楽しみだった。



セイラが遠ざかり見えなくなるまでクロディウスは適当にシルバと剣を交える、そして見えなくなった途端にまた距離を取った。



「死なない俺を倒す算段はあるか?」



少し余裕の表情で尋ねてくるシルバに少し腹がたつ、殺そうと思えばいつでも殺せる雑魚にそう言われるとムカつく物があった。



「殺す算段は無いが別の方法がある」



「別の方法?」



予想外の答えだったのか驚いた表情をするシルバ、クロディウスはまた一歩下がるとシルバの足元に出現させていた魔法陣を発動させた。



「なっ、いつからこれを!?」



いつ書かれたのか分からない魔法陣の上から逃げようと試みるが時既に遅し、もう逃げる事は不可能だった。



「簡単な話だ、俺が距離をとるに連れてお前も少し詰めてくる、それをセイラとか言う少女に意識が向いている間に魔法陣を中間に出しさっきの行為を繰り返しただけだ」



「だ、だが俺は何をされても死なない!一体何をする気だ?」



「異空間に放り込む、ただそれだけさ」



そう言った瞬間シルバの頭上に大きな黒い穴が出現し徐々にシルバを飲み込んでいく、シルバの最期の叫びが聞こえるがそれを全て無視してクロディウスはその場を離れた。



異空間に閉じ込められた騎士団長、もしセイラがシルバは死んで居らずクロディウスを殺せば解放できると知ったらどうなるのだろうか……死にものぐるいで頑張るに違いなかった。



「我ながら悪趣味な事をするな」



重圧な笑い声を上げながら街を後にするクロディウス、たまにはこう言うストーリーを自ら作り上げて暇潰しをするのも良い息抜きになった。



転移魔法を使い森の中の我が家に転移すると笑い声が聞こえる家へと帰った。

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