第12話 女神の昔話1
「頭痛が……」
激しい頭痛に起こされる様に目を覚ますと視界に眩しいほどの光が飛び込んで来た。
しばらく目をこすり辺りに慣らすと周囲を見回す、何も無い真っ白な部屋……と言うよりも空間の様な所にユリウスは1人ポツンと立っていた。
「ここは……どこだ?」
辺りに人の気配は無い、確かさっきまでエリスと居たはず……何が起きているのか理解出来なかった。
気が付かないうちに異空間に飛ばされた……そう考えたが良く思えば激しい頭痛に襲われて意識を失った事を思い出した。
そうなるとここは意識の中なのだろうか……一般の人ならその答えには恐らく至らない、だがユリウスは導かれる様にその答えに至った。
暫く歩き続けると遠目に黒い物体が見える、そして近づいて行くとそれは大きな扉という事が分かった。
真っ黒……では無いが黒に近い色をした古い両開きの扉、その前に立つとただ茫然と眺めた。
「俺はここから来たのか?」
ふと扉に手を触れようとする、だがそれは謎の力で阻まれ火花を散らして弾かれた。
「厳密には貴方だけではありません、転生者全てです」
「誰だ?!」
何もなく誰も居ない筈の空間から声が聞こえ辺りを見回す、声質からは女性の様に感じた。
「私は姿なき女神です」
「姿なき?って事は俺をあの時助けてくれた女神さんか?」
「いいえ、あれは私の弟子です、私は言わばこの世界の創造神……この世界の母です」
「この世界の母……?」
話しが大きすぎて頭がこんがらがる……創造神やらこの世界の母やら、もしかするとこれは夢の中なのでは無いかとユリウスは思い始めて居た。
良く考えれば夢で無くてこの状況をなんと説明するのか……あまりの混乱にこの状況を夢と言う物事で片付け様として居た。
「それで女神さん、俺がここから出るにはどうすれば?」
「ここの時間は向こうとリンクして居ます、そして扉が開くのを待つのです……ただしそれがいつになるかは分かりませんが」
「それは困る、俺には助けなきゃ行けない人が居るんだよ」
夢とは言え早く目覚めてマキアを助けたい、ここの時間が向こうとリンクしているのならば尚更だった。
「ならば一つ、お話しをしませんか?」
「お話し?」
ぶっきら棒にそう言う女神、だが暇つぶしになればとユリウスはそれを承諾した。
「これは私が力を与えた悲しい1人の騎士の物語です」
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今から遠い昔、エリスが生まれるよりも少し前……その頃メギド大陸には既に無くなったとされている魔法がまだある時代の話。
その時代、大陸は五つの国ではでは無く六つの国で構成されて居た。
今ある既存の五カ国とクーロディリスと言う国、現在最大の国土を誇っているオージギアはこのクーロディリスを吸収したからだった。
この国は周りからかなり嫌われて居た、その理由が魔法……周辺諸国には使えない魔法をクーロディリスは使う事が出来妬みを買って居た。
そして今から話す話しはそのクーロディリスに住んでいた1人の青年の話し。
「その子の手を離せ!」
日が傾きかけた街のとある裏路地で声を震わせ明らかにビビりながらそう言って少女を襲おうとしている綺麗な純白のローブを羽織った魔法使いに叫ぶ1人の青年、彼の名はメリテス・レイル、しがない一介の魔法使いの男に過ぎなかった。
そんな地位も力も何も無い男が神にも等しいと言われている貴族の魔法使いに現在楯突いているのに特別理由も無く……ただ少女が襲われそうだからと言うそんな理由で無謀とも言える行動に出て居た。
無論少女とはこれが初対面、前から気になっていた訳でも無くこの青年レイルは人一倍正義感が強いと言う理由で剣を構えて威嚇していた。
「離せ?それは僕に向かっての命令かな?」
金髪のロングヘアーを靡かせキザったらしく聞く貴族、その間も少女は怯えていた。
「他に誰が居るんだ!!」
剣の先を男に向けてそう怒鳴りつける、すると貴族は取り巻きの男2人と顔を見合わせて大きく笑った。
「君、僕の名前が言えるか?」
「あぁ、知ってるさ!オスティマ・レイゼンだろ、それを知っての命令だ!彼女の手を離せ!」
レイルがそう言って叫ぶと貴族のレイゼンの表情が変わる、貴族と言う身分上ここまで舐められたのは初めての様でかなり頭に血が上っている様だった。
「貴族の魔力量は知ってるな」
「国を一つ……滅ぼせる程だろ?」
「厳密には跡形も無く消せる程だ……塵一つ残さずな」
懐から杖を出しそれをレイルに向ける、魔法使いと戦いをする上で杖を出させない……これは鉄則だった。
だがレイルは簡単に杖を出させた、それには訳があった。
レイゼンが莫大な魔力を持っているのは事前に……リサーチ済み、そして取り巻きは恐らくその威力を過去に見た事がある筈、となれば杖を出したレイゼンを見て少しひるむ筈だった。
「今だ!逃げろ!!」
予想は的中し、レイゼンの行動に少し距離を取ろうとした取り巻きの隙をついて少女が逃げる、それに気を取られたレイゼンはかなりの隙が出来た。
「どんだけの力を持っていても勝つか負けるかなんて分かんねーんだよ、この世に絶対はないだ!」
剣の柄の部分で首を殴りレイゼンを無力化すると服の首元を掴み取り巻きに渡す、すると取り巻きは無様にレイゼンを抱え、逃げて行った。
「1日1善、今日も達成だな」
満足気にそう頷くと帰宅路に着こうとする、すると後ろから呼び掛ける声が聞こえた。
「すみません!」
声に反応して後ろを向く、するとそこには綺麗な青髮の少女が立っていた。
「さっきは助けて下さってありがとうございます!」
深々と頭を下げてお辞儀をする少女、さっきは助けるのに必死で全然知らなかったがかなり綺麗な子だった。
「良いよ良いよ、当然の事をしただけだから」
そう言って顔を上げさせる、人に感謝されるのなんていつぶりだろうか。
「でも……報復とか大丈夫何ですか?」
「その時はその時さ、それに君を助けるのも運命のうちって考えれば楽なもんさ」
そう言って笑う、そしてふと思う……今のセリフ中々かっこよかったのではと。
「ふふっ、面白い人ですね……私はユリナス、恩人さんは?」
天使の様な笑顔を見せるユリナス、名前まで美しかった。
「メリテス・レイル、下級の魔法使いだよ」
「レイルさん……有難うございます、宜しければこの後御食事でもどうですか?」
「是非に!」
ユリナスのお誘いに速攻で返事をするレイル、彼女との出会いが後々様々な出来事を引き起こす事を今はまだ誰も知らなかった。




