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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第2章 正義の白騎士編
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第5話 危険な物

木々に囲まれた綺麗な自然広がる獣道を歩きながらふと視界に入ったゴミを拾い上げようと手を伸ばした。



その瞬間頭に走る激痛……まただ



謎の激痛、目を覚ましてからこれで2度目だった。



1度目は気まぐれにこけそうになったマキアに手を伸ばし助けた時……あの時からおよそ10分、これが不定期に来るものなのか定期的なのか、それが分かるだけでも随分と違った。



手練れとの戦いで一瞬の怯みは死につながる、この頭痛はかなりの痛み……今の自分にはスキを見せずにやり過ごすには無理な痛みだった。



時間を測りながら前を歩いて行くガレアス達に着いて行く、痛みに備えながら10分を迎えるがユリウスに頭痛が訪れる事は無かった。



定期的に来るものでは無いと分かった……そうとなれば相当厄介だった。



恐らくこれは不定期に来る頭痛、となれば戦闘中に来る場合もあった。



「厄介な物抱えたな……」



ボソッと呟き兜の裏で唇を噛む、目を覚ましてからずっとおかしい、言葉に表せない頭の隅の不快感、それに加えてこの頭痛……あの転生者の王に能力を貰った代償として何かされたのは間違い無かった。



だが何の代償を受けたのか……正確に分からないのが腹立たしかった、気が付けば強く噛みすぎて唇から出た血が兜の隙間を流れ真っ白な鎧に赤い線を描いていた。



「フィレンツェに着いたぞ」



マーシェルが立ち止まり指を指す、さっと血の跡を拭き木々の間から身体を乗り出し指を指した方を見る、すると真下が崖で危うく落ちるところだった。



「おいおい、ここで脱落はシャレに何ねーぞ」



あまりにも緩やかすぎて気が付かなかったがどうやらこの森、少し山の様になって居る様だった。



下に広がるフィレンツェの街を見下ろしながら何処から攻め入るかを考える、幸いにも崖の真下は城、だがそれを鵜呑みにするのも少し危ない気がした。



「どうしたユリウス、考え事か?」



話しかけて来るマーシェルに黙る様ジェスチャーしてまた考える、マーシェル達は気が付いて居ない様だが恐らくこの下にある城には国王は居ない。



少し考えればすぐ分かる、こんな立地条件最悪の攻め入られ易い場所に国の最高司令者が居るはずが無い……だが一概に居ないとも言えなかった。



さっきとは言ってる事が違うが少し出来る参謀が居る国であるのならばこの立地条件を逆手に取り、遠目に見える街の中心部にもなって居る城を囮に使う可能性もある……少し厄介だった。



「二手に分かれるか」



「そうだな、じゃあ俺とユリウス、マキアとガレアスで良いか?」



マーシェルの提案に少し迷う、マキアは常に側に置いておきたい存在、ガレアスと言う危険人物の側に居るのは少し危険が伴う……だがここで反対すれば不審がられる可能性もある、ここは大人しく従って置く必要があった。



「分かった、それじゃあ行くか」



崖の壁を利用しながら勢いを殺し40メートル程の高さから城の側に降りると辺りを見回す、まだ気が付いては居ない様子だった。



他の奴らにも降りて来る様指示しようとした時、上から隕石の如くガレアスが降って来た。



「あ、危ねぇ!」



すんでのところで避けるとユリウスが居た所にガレアスが着地する、その周囲はまるでクレーターの様に凹んで居た。



後に続きマキアとマーシェルも降りて全員が揃う、城壁伝いに良さげな侵入ポイントが無いかを探って居ると凄まじい殺気を感じた。



「マキア、ガレアス……向こうの城を担当してくれ」



「俺はお前の指図は受け……」



兜越しからユリウスに睨みつけられその威圧感に途中で言葉が止まるガレアス、彼の額からは多量の汗が出ていた。



「早く行くよー」



ガレアスの服を引っ張りマキアが走り去って見えなくなる、それを確認すると何も言わずマーシェルに近づく様ジェスチャーした。



「居るな……」



自然と声が小さくなるマーシェル、彼も気が付いた様だった。



「あぁ、どっちがやる?」



「俺に行かせてくれ」



そう言って剣では無い刃が片方しか無い奇妙な剣を細長い筒から抜くマーシェル、その瞬間彼の雰囲気が変わった。



長い銀髪が少し逆立つ、かなり強そうだった。



「銀髪……お主転生者だな」



どこからとも無く声が聞こえ辺りを見回す、すると城壁の上にマキアと同じ服を着て髪を結んだ男がマーシェルと同じ剣を持って立っていた。



「そう言うあんたもか?」



「うむ」



マーシェルの問い掛けに頷きふわっとその場で舞い上がるとゆっくりと城壁から落ちて来た。



「我が名は朽木 以蔵……主は?」



「マーシェル、旧名をまだ使ってる奴は久々に見た、早くこの世界に慣れな」



剣の先を以蔵に向けてそう言うマーシェル、その瞬間以蔵はその場から煙を上げ消えマーシェルの背後を取った。



「速い?!」



そのスピードに驚き少し態勢を崩すマーシェル、戦いの外側から見ていたユリウスには以蔵の速さ……つまり能力が何か一目で理解できた。



あれは速いのでは無く擬態や幻術と言った違うものを見せる能力の類、能力発動は城壁に俺達が注目した瞬間、ふわふわと降りて来たのは恐らくその力が擬態だったから……その証拠に煙が晴れ以蔵が居た位置を見ると枯れ葉が落ちて居た。



緑が生い茂る芝生に座るとのんびりと戦いを観戦する、両者とも力は五分五分と言ったところ、だが能力を発動して居ないマーシェルを見ると少し以蔵は不利だった。



マーシェルの剣が以蔵の身体を捉え横に切り裂く、だがすぐ様辺りを見回すと上空から攻撃して来た以蔵の攻撃を否した。



マーシェルが斬り裂いたのはまたも枯れ葉、そろそろ彼の体力は限界に近づいて居た。



静かに目を閉じて音だけに集中するユリウス、すると水が流れる音が4メートル程離れた場所から聞こえて来た。



「水?」



一人で格闘するマーシェルを放って置いて音が聞こえた方へ歩いて行く、すると城を囲む様に横幅約5メートル程の深くも無く浅くも無い一面に枯れ葉で埋め尽くされた水路が流れて居た。



「こんな所に水が流れて居たのか」



その場にしゃがみ込み水面をじっと眺める、そして水面に手が届く距離に落ちて居たと理由で枯れ葉を手に取って見る、すると細く視認できるかどうか怪しい糸の様なものが水路に続いて居た。



「成る程な……」



枯れ葉で埋め尽くされた水路、その枯れ葉に繋がった糸、あまりにも単純過ぎるトリックにユリウスは呆れた。



以蔵の能力はどんな力か知らない、枯れ葉を自分の姿に映すだけなのか、もしくは擬態させて居るのか……だがはっきりするのは大した力では無いと言う事だった。



水路から離れ元の位置に戻るとその場に座り戦いをまた見始める、マーシェル、彼は仲間にするには値しない。



「ぐっ……これじゃきりが無い……」



とうとう膝をつき息を切らすマーシェル、すると水路から以蔵が枯れ葉を身に纏い出て来た。



「お主手は出さぬな?」



「勝手にどうぞ」



「早まる真似はするなよ」



マーシェルを始末するに当たってユリウスに横槍を入れぬ様そう言うと剣を構える、この以蔵は本物の様だった。



初めから以蔵は俺たちの前に姿を現しては居ない、ずっと水路で枯れ葉に糸を付け操って居ただけ……厄介な能力だがこうして姿を見せれば始末するなど容易な事だった。



「マーシェル立て、早い所この城落とすぞ」



「城?い、以蔵はどうした?」



死を覚悟し、目を瞑って居たが訪れなかった死に動揺を隠せずに居るマーシェル、ふと辺りを見回すと以蔵は胸に深い傷を負い一撃で絶命して居た。



「お前がやったのか?」



「他に誰が居る」



そう吐き捨て易々と10メートルはある城壁に登ると先に行って行くユリウス、彼には危ない物をマーシェルは感じた。

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