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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第2章 正義の白騎士編
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第4話 目覚め

白騎士ユリウス、お主に力を授けよう



その言葉しか覚えて居ない。



酷く長い間眠ってしまった様な感覚、ドラゴンに連れられ穴の中まで入ったのは覚えている、思い出せないのはそこからだった。



大きな玉座に座る巨大な何か、黒いモヤに覆われて見えない……それに俺は何かをされた、微かに思い出せたがそれだけ……それ以降は何も思い出せなかった。



辺りを見回すが気絶した俺を誰かが運んでくれた様で中くらいの洞窟のスペースに作られた雑なベットの上に寝かされて居た。



横には丁寧に武器と鎧が置かれ、自身の身体は半裸状態、頭の上に氷水につけられたタオルがあるのを見ると熱でもあったのだろうか。



「お、ユリウス起きたー?」



マキアの声が聞こえる、妙に上機嫌だった。



鼻歌交じりに扉を開け中に入ってくるマキア、その姿はまるで別人だった。



顔や髪は変わって居ない、だが色々な柄が施され、腰辺りに帯を着けた妙に豪華な服を着ているマキアのその姿は少し美しかった。



「いいでしょ、これ着物って言うんだ」



「着物?」



初めて聞く言葉、あんな服王族でも着ている人物は見た事が無かった。



「そう、描いた絵を現実にする力の人が居たから描いてもらったんだ」



嬉しそうにそう言ってその場で周り子供の様に喜ぶマキア、彼女の一言にユリウスの意識は着物から力に集中した。



力……そう、俺は力を授かった筈、だが身体の変化は特に無い、だが失敗した様子も無さそうだった。



根拠は勿論無い、だがそんな気がした。



白い鎧を身につけ兜を被ると剣を腰に携えて部屋を出る、辺りを見回すとまるで迷路の様だった。



だが道は分かった。



まるで何度も通った道の様に、そこを曲がれば何処へ着く、そこの部屋は誰の部屋……だが不思議では無かった。



理由は分からない、それより不思議なのは起きた時から頭の隅にあるモヤモヤとした感覚だった。



何が忘れた訳でも無い……無いのだが何か大切な物を忘れた気がする、矛盾しているがそう言う気がして居た。



「そう言えばユリウス、黒騎士討伐どうする?」



「あー、そうだな、これから王に会うからそれから討伐しに行こう」



何の違和感も無く進んだ会話、その会話にマキアもユリウスも違和感を抱く事なく、昔からその目的を抱いて居たかの様に表情を両者とも変えず会話は終えた。



黒騎士……我が軍の同胞、転生者達を殺してまわっている忌々しい存在、一刻も早く排除して起きたかった。



暫く迷路の様な通路を歩き大きな扉がそびえ立つ開けた場所に出る、その扉を力いっぱい押す、すると扉は重々しい音を立てながら開き王座への道を開いた。



「王、ただ今目を覚ましました」



膝をつき胸に手を当てるマキアとユリウス、当然この行為にも両者は何の違和感も抱かなかった。



「気分はどうだ」



「頭の隅に違和感は残りますがそれ以外は問題ありません」



「そうか、ならば即刻ガレアスとマーシェル、マキアを連れて手始めに北西のフィレンツェを攻め落とせ、期間は1ヵ月……分かったな」



「黒騎士はどうなさいますか?」



王の予想外な命令に少し動揺するがすぐさま平常心を取り戻す、恐らくこれは自分とマキアを仲間にするかどうかの試験と言った所なのだろう。



「今のお前達には荷が重い、もう少し力を探らせる、お前達はフィレンツェに集中しろ」



「心得ました」



そう告げ王座から出て外を目指す、気がつくと後ろにでかいスキンヘッドの盗賊顔の男と銀髪ロングヘアーの男が付いて着て居た。



「名は?」



「俺はマーシェル、んでこっちのハゲがガレアスだ、宜しくな隊長さん」



隊長さん、その言葉に少し疑問を感じつつもマーシェルの印象は好印象、だがガレアスはユリウスが隊長という事に納得がいって居ない様子で不機嫌だった。



「俺は弱い奴は認めねぇ、フィレンツェで力を示せ、それだけだ」



それだけを告げてユリウスの前に出て先に歩いて行くガレアス、見た目とは裏腹に余計な事は喋らないタイプの様子だった。



「すまんな、あいつは俺がコントロールするよ」



パッとみ好青年のマーシェルが笑顔でそう言いガレアスを追いかけて行く、これはまた面白い隊になりそうだった。



後ろから走って来たマキアを見て頭を撫でると少し恥ずかしげな顔をする、恐らく彼女は俺に好意を抱いて居る……メンバーの性格や心境の把握は裏切られた時の武器となる、一先ず一番信用出来るのはマキアだけの様子だった。



微かに見えてくる光を浴びながらユリウスは兜の裏でそっと笑った。

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