第3話 転生者軍との出会い
国王殺しの白騎士、そう呼ばれグラントリアから追われ始め早1ヶ月、マキアとユリウスはシストリアの街はずれの森に身を潜めて居た。
記憶喪失事件の答えもヒントも得られぬまま1ヶ月、予想以上に進展は無い、焦る気持ちとは逆に進まぬ物事、かなり気持ちは穏やかでは無かった。
川のほとりで赤の剣を振り炎を纏わせる、能力はある程度慣れて来た。
最初のうちはコントロールが利かず色々と燃やしたり凍らせた、自分で言うのもあれだが流石元白騎士と言うべきか慣れるのは早い物だった。
「不思議な力だべなー」
空を見上げて視線を戻した瞬間、何の音も気配も無くユリウスの懐に潜り込み剣を触ろうと突如として現れた160手前の農家おじさん、その出現に驚き数発ダメージを与え距離を取るとその硬さに驚いた。
思い出す鎧の力、それにユリウスは拳を強く握り締めた。
「ただの村人じゃないな、誰だあんたは」
「おいらはゴルゴンズ、王の命であんたを連れてくるよう言われたんださ、なんでも大変気に入ってるみたいでな」
ボリボリと身体を掻きながら言うゴルゴンズの言葉に一つ……いや、二つ疑問を抱いた。
まず一つ、王とは誰なのか。
グラントリアの王は死に、その後継もまだ決まって居ない、とは言え同盟国にそんな事を言えば王が居ない事を理由に一気に攻め滅ぼされてしまう……まずグラントリアは無かった。
とは言え他の国も俺を捕まえて得する事は何も無い、これが一つ目の疑問だった。
そしてもう一つの疑問、それはその王が俺の事を気に入って居るという事、会ったことも無ければ話した事も無いはずの異国の王……俺の話しは確かに各国で聞く様になったがそれは国王殺しの謀反騎士としてであり昔の白騎士としてでは無い、これを聞いて気に入ったのならかなりのイカれ野郎だった。
「俺に拒否権は?」
「無論無いべ」
そう言い奥からガサガサと音を立てて気絶したマキアを連れた手下の様な男達がやって来る、それを見て一瞬怒りを感じだが直ぐに抑え込んだ。
「分かった、行こう」
「物分かりが良くて助かるだ」
そう言って息を吸い込むと大きく指笛を鳴らし出す男、すると大きな羽音を立てて空から中型のドラゴンが舞い降りて来た。
「な、ドラゴンが何故」
「これも王の力だべ」
そうとだけ言い手招きする男、最初は適当にあしらうつもりだったが少し興味が湧いて来た。
ユリウス達が背に乗ると雄叫びを上げ勢い良く空に舞い上がるドラゴン、不安定かと思いきや背中はやけに安定して居た。
「それにしても災難だったな」
「何がだ?」
「元の鎧だべよ」
「何故災難なんだ、この鎧でも事足りる、それに何故お前がそれを?」
「さぁ、何でだろうな」
分かりやすくとぼけ前を向く男、読めない奴だった。
確かにあの5代目白騎士の鎧は綺麗な純白だった、だがこの初代の鎧も年季が入っていていくつもの戦場を乗り越えた傷があるのは嫌いでは無い、何が災難なのか分からなかった。
それよりも、彼が何故あの時現場に居た俺と山賊頭しか知り得ない事を知って居るのかが気になった。
近くで見て居た?
いや。だがあの時気配は感じなかった。
ならば全て彼らが仕組んだ事なのだろうか、だがそれなら何の為に……全く訳が分からなかった。
「見ろ、あれが王の居る我らのアジトだ」
そう言って指差す男、王と言うだけあって国かと思っていたが指の先には穴ぼこの空いた山があるだけだった。
「あれがアジト?」
「申し遅れたな、俺はゴルゴンズだ」
「いや、知ってるよ」
「話しは最後まで聞け、ゴルゴンズ、転生者軍参謀のゴルゴンズ・セドリックだ」
見た目には似合わない名を言ったゴルゴンズ、転生者軍参謀とは何の事なのか……この時のユリウスにはさっぱりだった。
ドラゴンは再び大きい雄叫びを上げて滑空しそして穴の中に入って行った。