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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第1章 記憶無き黒騎士編
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第26話 死霊の森

青い空、広い草原、吹く風は全て心地良く過去最高の気象条件と言ってもいい……だが隣を歩くエルネの所為で最悪の気分だった。



上機嫌で歩くエルネを見ながら今後の事で頭を悩ませる、まず結城達と仲良くはなれないだろう……だがエリスの時見たいに以外と相性が良いかも知れない、そんな淡い希望を抱いてはいるがやはり結局は無理そうだった。



「クロディウスはこの2年間何してたの?」



「何ってそりゃ転生者を狩ってたんだよ」



「相変わらずだねー、何でそんなに転生者を狩るの?」



「それが俺の使命なんだよ」



「かっこいいー、僕惚れそうかも!」



笑いながら言うエルネ、使命とは答えたが何故転生者を狩るのか……考えた事も無かった。



女神の命令という事で淡々とこなして居たがたまに快感を覚える……普通の一般人を殺したくらいでは得られない程の快感を。



ある程度強いから……それとも記憶の無い五年前以降に何かあったのか……それは分からない。



ただ分かるのは殺す事で心が楽になる、だから俺は転生者を狩る……誰の為でもない自分の為に。



「クロディウス?」



顔は見えずとも怖い雰囲気を感じ取り恐る恐るクロディウスに話し掛けるエルネ、嫌われたのでは無いかと不安げな表情で機嫌を伺って居た。



それもそのはず数年前、少し行動を共にして居た時どうしても許せずアタマにきた出来事があった、その時に俺はあの塔にエルネを閉じ込めた。



このご機嫌伺いはあの時の反省なのだろう。



少し不機嫌なオーラを出しエルネを黙らせながら草原を抜ける、するとさっきまでの明るさが嘘の様に木々に陽の光が阻まれ薄暗く気味の悪い森が目の前に広がって居た。



獣の鳴く声や時折吹く風の木々を揺らす音が不気味さをより一層強める、エルネの表情が心なしか暗かった。



「迷子なると死ぬからなこの森」



恐怖だけを煽り進んでいくクロディウス、その言葉にエルネは少しゾクッとした。



この森の名は死霊の森と言う。



かつてこの森に存在した偉大な盗賊グラミスと言う男がこの森を抜けた先にあるアラガドールと言う街の兵士達を大量に虐殺したと言われこの森には殺された兵士達が彷徨っているとの事だった。



だが所詮噂……それが本当かも確かめたく帰り道にこの森を選んだ訳だった。



「クロディウス手握っていい?」



「握る前に言えよ」



もう既に手を握り横を歩くエルネにそう言いつつも手は振り解かないクロディウス、手など繋いだのはいつ以来だろうか。



数年前……そう思ったが良く良く思い出せばカーニャと繋いで居た、別れた時に記憶から消したつもりだったが結局忘れられてなかった。



「笑えるな……」



何とも言えない気持ちになる、これを何と表現するか……それを探っているとエルネの歩く足が止まった。



「く、く、クロディウス!ま、まえ!」



この上なく動揺して震えた声で指を指す、その指の指された方向を見ると白いオーラを放つ鎧にダサい兜を被った片腕と腹が少し抉れている兵士が歩いて居た。



まさか本当とは思わなかった、幻術の類いは俺に効かない……催眠もまた然り、俺に見えると言う事は本物の死霊だった。



「生きてる感じはしないな……」



近くに落ちて居た小石を拾い上げ兵士に投げる、だが体を通り抜けて木に当たった。



「物理干渉不可と……」



こちらに気が付かずよろよろと歩く兵士を観察する、見た感じ害しか無さそうだが物理干渉不可となると害は無い筈だった。



「く、クロディウス、もう行こうよ」



今にもチビりそうな顔でクロディウスに言うエルネ、これ以上見ていても何も起こらない、そう思った瞬間周りから嫌な気配がした。



「囲まれて居る……」



気配が無く、全く気が付かなかった、辺りを見回すといつのまにか無数の兵士が取り囲んでいた。



だが物理干渉不可な筈、取り囲んだ所で特に脅威にも何にもならない……筈なのだが嫌な気がしてならなかった。



「クロディウス、転移しようよ、僕この状況多分だけどかなりマズイ気がする」



今回ばかりはエルネの意見に同意だった、転移しようとエルネの肩に手を乗せる、すると一体の兵士がこちらに近づいてきた。



転移しようと思えばできる、だが彼が何をするのかが気になって転移出来なかった。



槍を持ち振りかぶって投げる、槍は一直線にクロディウスの頭目掛け飛んできた。



鎧姿では無い今当たれば怪我をする、だが物理干渉不可の筈……しかし避けなければ行けない気がした。



頭の位置を数センチずらし槍を避ける、すると槍は少し離れた木に突き刺さった。



「向こうからは干渉出来るのか」



驚いた、まさかこちらからは攻撃出来ないのに向こうからは攻撃出来るとは。



周りに居た兵士達もゆっくりと迫ってくる、一先ずその場凌ぎの結界を張り兵士達の進行を止めるが彼らを倒す算段が全く立たなかった。



「エルネ、催眠は効きそうか?」



首を横に振る、そうとなれば本格的に為すすべが無くなった。



こう言う場合は浄化の魔法などで祓うのだろうが生憎と俺の魔法は黒魔法、白魔法の類いは全く使えなかった。



転移すれば済む話なのだが然程強くも無い死霊如きに逃げ出すのも癪……どうにかして消し去ってやりたかった。



「消し去る……あぁ、そうか」



「どうしたのクロディウス?」



「こいつらを消す算段が出来たんだよ」



そう言って結界から外に一歩出ると地面に手を置く、彼らは森に囚われて居る……と言う事は森自体を消せば消える筈だった。



「死霊の森も呆気ないな」



手に大量の魔力を集め放出する、結界の中からその姿を見ていたエネル、クロディウスの手から魔力が放出された瞬間に砂埃が凄まじく舞い上がり視界が何も見えなくなる、そして視界が晴れると暗い森は綺麗さっぱり消え去り茶色の地面が剥き出しになった荒野の様な光景が広がって居た。



「森が消えれば奴らも消える……単純だが俺にしか出来ない方法だな」



街一つ分の大きはあった森が消えたことにより見えなかったアラガドールが見えてきた。



「クロディウスもやんちゃだね」



「そうかもな」



そう言ってエルネの肩に手を乗せるクロディウス、目的は果たしもう歩く意味も無かった。



広がる荒野の様な光景を横目にクロディウスは転移した。

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