第25話 催眠少女
ガラハッドとの戦いはそこから先は覚えて居ない……扉の中に入り気が付けば気絶して居た。
クロディウスが私の隣に立ち虫の息のガラハッドに容赦無くトドメを刺す……その姿に私は恐怖を覚えた。
そしてその日の夜、何気無い会話をしながら次の目的地の話しをして居た時突然クロディウスの表情が変わりカーニャと言う子を助けた……そしてその翌日里親に、これがアーリス教で起こった出来事だった。
「エリス、結城、暫く家で待機してもらってもいいか?簡単に言えば暫く休暇をやる」
それだけを告げ彼女達の前から姿を消す、セイラ……彼女の話しが本当なら一大事だった。
アーリス教の表側の教祖ガラハッドを殺しひと段落した所でセイラを起こし催眠にかけ問いただした……その時彼女は転生者の王の計画を話した。
現在転生者の王に集まっている同胞は5000人……これだけでもとんでも無いがその上近くの国々の兵士達を取り込み能力を与え自分達の兵士にしているとの事……これは発見が遅れるに連れ自動的にこっちが不利になるシステムだった。
それに加えて何処に拠点を構えてるのかすら分からない、これは骨の折れる仕事だった。
何が厄介かと言うと女神からの命に背く事は出来る、だが背いたとしても転生者は俺の事を殺しに来るから休まる時間が無いのだ。
転移先に選んだ広い草原の先にある怪しげな塔を眺めて思う、あの2人を置いて来て良かったのだろうか。
まぁ転生者を殺しに行くわけでも無く今回も仲間集めの一環……それに今回のはあの2人よりも少しクセが強い奴だから会わせたら爆発しかねなかった。
「これは……クロディウス!!」
塔の扉の前まで行くと中から響く可愛らしい声……本当に彼女を仲間にして良いのだろうか。
人を殺すのにも即決だが彼女の場合は即決とはいかなかった。
この中に居る少女の名はエルネ、エリス見たいな強さも無く結城の様に超再生も持っていない……なら何故仲間に引き入れるのか、それは彼女の能力にあった。
心技体全てが桁外れの俺は掛かった試しが無いが彼女は第1転生者の中でも珍しい能力持ちでその名も完全催眠だった。
彼女の半径5メートルに居る人間を催眠状態にする、かなり強い能力だった。
結城は囮、エリスは戦闘要員、そして情報を引き出すのがエルネ……と言うわけだった。
「開けるからな……分かってるよな?」
「分かってるよー!」
柄にも無く焦った様子のクロディウス、そのまま扉を開けると癖っ毛がある銀髪の少女がクロディウス目掛けて飛び込んで来た。
「やっと会えた!ぼく2年前からずっと待ってたんだよ?!」
「そ、そうか、すまんな」
「でも会えたから許すー!」
そう言い抱きついてくる……本当にこいつにはペースが乱される。
はっきり言って苦手だった。
そろそろ男の仲間も欲しかったがこればっかりは仕方がない……取り敢えず彼女に事情を説明した。
「ふーん、それで女の匂いがいっぱいしたんだ……良かったー、僕てっきり浮気されたかと思った」
「お、おう、そうか」
何故こんなにもラブの矢印を向けて居るのかと言うと一度、たった一度だけ助けただけ……それでこの好かれ様だ。
あの頃は転生者を狩り始めて確か一年も経ってない頃、何やら兵士に追われて居る少女が居たから助けたが甘かった。
彼女はその当時全大陸で指名手配された今で言う黒騎士的存在の危険人物……それを助けた俺も当時はえらく追いかけ回されたが今はだいぶ落ち着いて居た。
「それで僕連れて何処行くの?ホテルとか?!」
「馬鹿言っとけ、取り敢えずここから徒歩2日の家向けて帰るぞ」
「いきなり家なんてクロディウスも大胆!」
いい加減ムカついて来た……ここで殺してしまおうか。
これじゃ軽いハーレム、確かに嫌いでは無いがこうも面子が濃いと疲れる。
「僕達の愛の巣にいざ行こうか!」
「はいはい……」
反論するのもめんどくさくなったクロディウスの無気力な返事とともにエルネは歩き出した。