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転生者狩りの騎士と奴隷の少女  作者: 餅の米
第1章 記憶無き黒騎士編
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第1話 黒騎士と奴隷の少女

ss投稿掲示板の方でも同時に掲載させてもらっています

人は俺の事を無感情と言う。



だが怒ろうと思えば怒れるし泣こうと思えば泣ける、笑う事も出来る……ただ『人を愛せない』だけ、それに女神から受けた使命を全うする為に無駄な感情は一切捨てた、余計な同情は自分の身を滅ぼしかねないから。



廃れたギルドの酒場で座りながら入り口の扉を眺める、誰も居ない隣に一人の少女を出現させるが一瞬にして消した。



寂しいーーーー



他人の前じゃ余計な感情を見せはしないが流石に5年も一人きりだと寂しいと思えてきた。



手に入れた圧倒的な魔力で偽人を出現させるがそれは文字通り偽りの人、感情はあるものの自分と同じ『愛』と言う感情が無い、それに自分に忠誠を誓うと言う性格になる為少しめんどくさかった。



なにより自分自身で作り出したもので寂しさを埋めるのはなんだか虚しい。



「情報にあった街に行くか……」



大きな鎌を手に出現させた黒い穴にしまい立ち上がるとギルドを出る、2mを超えそうな背丈に黒い鎧を着た誰が見ても恐れる騎士を街の人は受け入れてくれるのか……否、答えはNo、受け入れてくれる筈がなかった。



転移魔法を使い砂漠へ移動し街に入る、すると街に入るや否や皆俺の事に注目し道を開ける、流石無情の黒騎士と呼ばれるだけあってかなりの人から恐れられて居た。



これで鎌でも持てば周りは逃げ出すだろう、だが他人などどうでも良かった。



「確か情報だと地下会場だったな」



砂漠地域の街とだけあり周りは白い石造りの家ばかり、まるで向こうの世界で見た砂漠地域の外国とおんなじ風景だった。



そんな街のある店に入り支配人に合言葉を伝える、すると店裏のエレベーターから地下へと連れて行かれた。



「貴方黒騎士様ですよね」



「そうだと言ったらなんだ?」



「いえ、私達第1世代転生者の希望は貴方だけです……どうか頑張って下さい」



エレベーターの到着音と共に深々と頭を下げる支配人、頑張って下さいか……



そんな言葉を投げかけられたのは何年振りだろうか、本当に久しぶり……だが嬉しくは無かった。



転生者狩りを第一転生者の為にやっている訳では無い、確かに無能力でこの異世界に送り出された事は同情するがそれは俺の知ったこっちゃ無い、こっちは愛する事を失ってまで力を手に入れたのだ、その代わりに転生者を狩っているだけであり女神が第一転生者を殺す命令をすれば殺す事など容易いことだった。



上に上がって行くエレベーターを無言で見つめながらざわつく会場に入る、今回のターゲットの特徴は真っ黒なスーツに白い髪……何とも分かりやすい特徴だ。



一先ず有名な黒騎士姿の見た目を魔法で変え笑った表情のお面をつけたローブ姿の男に姿を変える、そして会場に入るとやはり皆顔を何かしらで隠して居た。



この街で奴隷オークションをしていると風の噂で聞いたがまさか本当とは予想して居なかった。



全く悪趣味なオークション……だが目的はそれでは無く転生者を狩ること、一先ず空いている席に座ると無言で辺りを見回した。



黒のスーツと言う事は主催者側なのか、辺りにはそれらしき人は居ない……これはオークションの奴隷を見ない事には会えなさそうだった。



しばらく豪華なVIPの座る様な椅子に座り待っていると前方方向にある大きな舞台が明るくなる、そして脇からボロボロの白い膝丈までの服を着た虚ろな表情をしている青髪の少女と進行役と見られる仮面をつけた黒髪の男が出てきた。



「お待たせしました!今回の商品はこちらの少女、何と魔女最後の生き残りと超レアですよ!」



魔女最後の生き残りと司会者がマイクで言うと会場の客は我先にと多額の金額を各々に叫ぶ、一方の自分も魔女という事に少し驚きフリーズしていた。



魔女ーーーそれは文字通り、魔を操る女……向こうの世界に居た時でもその存在は居なかったが言葉では皆知る程有名な一つの種族、この世界にはそんな魔女が『かつて』存在して居た。



だがこの転生した異世界に今はもう居ない、転生する直前に滅んだ様でお目にかかる事は無かったがまさかこんな所で魔女の末裔、最後の生き残りと出会えるとは思わなかった。



「500万でどうだ!!!」



一人の客がそう叫び辺りがどよめく、そして司会者がその客に決めようとした瞬間俺は立ち上がり舞台に上がった。



「どうしましたか?」



「1000万だ」



その言葉に会場は静寂に包まれる、買われた少女も驚いた表情をしていた。



1000万と言えばこの世界の住人が一生かけても稼げない……そんな金額、富豪が集まるこの会場でもそんな大金出せる奴など居なかった。



「そ、それでは落札者は彼に決定します!次の商品までしばしお待ちを!」



明らかに動揺している司会者に連れられ舞台脇の通路を5分ほど歩き豪華な部屋へと入る、するとそこには目的の白髪に黒いスーツと特徴的な転生者が居た。



「これはこれは、今回は1000万での落札誠に有難う御座います、商品引き渡しの前にお名前とお金を」



「名はクロディウス、またの名を黒崎……この先は分かってるな」



黒い鎧を徐々に身に纏っていくクロディウス、それを見て白髪の青年は腰を抜かしその場に座り込んだ。



黒い鎧を完全に身に纏い鎌を手に持ったクロディウス、そして彼を前にして白髪の青年は思った。



何故彼が此処にーーーー



クロディウスは能力のある第2転生者を狩っていると言うのを噂に聞いた事がある、その特徴は黒い鎧に大きな鎌、完全に一致していた。



「神に祈れ、次はまともな所に転生出来る様にな」



そう言い鎌を構え振り下ろそうとする、だが鎌は青年には当たらず鈍い音を立てて弾き返された。



「あ、危ねぇ……俺の能力物理攻撃を跳ね返すが無かったら死んで……」



言葉が途中で止まる青年、そんな青年の目に見えていたのは心臓を持ったクロディウスだった。



「な、何故……」



クロディウスが心臓を掴む手に少し力を入れると急に苦しくなる、あの心臓はやはり自分の物だった。



「物理攻撃が無理なら魔法で心臓を転移させれば良い……ただそれだけだ」



「ま、待ってくれ!」



必死にこちらに訴えかける青年を無視して心臓を潰す、すると青年は血を吐いてその場に倒れた。



「汚れたな……」



鎧を布で拭き血だらけのカーペットと青年を何処かに消し飛ばすと部屋を出た。



「金は部屋に置いてある」



「かしこまりました……」



外で待っていた髪の長い男にそう告げると少女の待っている控え室へと長い一本道の廊下を歩いて行く、防音魔法で音は外に漏らさず中には彼の見た目を真似た人形を置いてきた、これで多少時間は稼げる筈だった。



廊下の突き当たりにある部屋の前に着くと扉に手を掛ける、この先にあの少女が居る……だが今思えば何故彼女を落札したのだろうか。



魔女だから、それとも可哀想だから……どれでも無い、ただ落札しなくてはならないと言う使命感に駆られたのかも知れない。



「手のかからない子だと願うか」



少し身長を魔法で縮めるとクロディウスは鎧を脱ぎ少女が待つ部屋の扉を開けた。

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