「悪役令嬢と婚約破棄について、男の視点から考察してみた」補足版。
あらすじにもかきましたが、もう一度こちらに記しておきます。
・これは私の個人的観点から書かれたものであり、これ以外の考え方があってしかるべきであると考えます。
・女性向け作品への差別的意識で書かれたものではございません。この旨、明記しておきます。
・題材故熱が入りやすいものだと思いますので、感想投稿などの際に、今一度利用規約、ガイドラインなどの参照をお願いいたします。
前回書いたエッセイに賛成のご意見、ご感想や、様々なご指摘、ご感想などをいただきました。今回はそれをふまえて、もう一度、「悪役令嬢」と「婚約破棄」について問い直してみたいと思います。実際の論点としては、前回とほぼかわりがありません。「リアリティ求めすぎ」という指摘もありました。リアリティを付けやすくなるといいな、もっと理由付けを見えやすくしてくれるといいな、という意味で書いています。
「悪役令嬢」と「婚約破棄」がセットになっているのは、いわば女性版なろうチートハーレムであろう、という指摘がいくつかありました。私自身もそんな気はします。手軽に読めて、カタルシスを楽しめる。その点は、男性向けとも共通していると思います。
以前に書いたエッセイの中で「悪役令嬢じゃないやんけ!」ということを私が書きましたが、それについてもいくつかご指摘をいただきました。詳しくは記しませんが。繰り返しますが、「悪役令嬢」じゃない別のものなのだから、「悪役令嬢」という言葉を当てるのはおかしい、とまではいいませんが、意味が通らないのではないかと私は思います。私は前回、「むしろ「婚約破棄」の被害を蒙っているのだから、「被害令嬢」というべきではないでしょうか」というようなことを書きました。「私別になにもしてないのだもの、ひどいわ!」と悪役令嬢が泣くような作品の場合は特に。
「悪役」でもなんでもないのに、「悪役令嬢」というものが一人歩きしている、わざと悪い言い方をしてしまえばまかり通ってしまっているのでないか、ということなのです。「悪役にされた」パターンが多い状態では特にこの「ことば」から見える意味と乖離しています。
つまり、より正確かつ本質的に述べるならば、「悪役にされてしまった令嬢」、または「悪役という被害を蒙った令嬢」を略して「悪役令嬢」ということになりますでしょうか。本来の意味とは大分異なりますが。
決して日本語的におかしい、ということを問題にしているわけではないので、あしからずご了承ください。
さて、様々なご指摘を頂く中で、「乙女ゲーム」というものがよく出てきます。作品の中にも「○○という乙女ゲームの○○家令嬢になっちゃった! このままだと婚約破棄だからなんとかしなきゃ!」というパターンのものがありますね。「ゲームの中に転生してしまった」ならば、いわばシナリオどおりに進んで「婚約破棄」される、というのはまったくもって違和感がありません。「回避しなきゃ破滅しちゃうわ!」というのもわかります。いわば、世界線がそのように確定されている世界です。「ゲームのシナリオどおりになる」というのは普通のことです。
「悪役令嬢の努力で、ゲームのシナリオが変わる」というのも、ちょっと頭にハテナマークは浮かびますが、そういうルートがあったんやで、ということなら違和感はありません。例えば、第三者視点で本当にゲームをしている人がいたらそれはそれで困るでしょうが。
しかし、「ゲームだと思ったが、ここはよく似た別の世界だ。私はこのままでは婚約破棄されてしまう」というものがあります。ちょっと待っていただきたい。
「なぜあなたは悪いこともしないのに婚約破棄と思うのか。もうちょい、ポジティヴに考えようぜ」ということ。そして、「なぜゲームと同じようなことが起きると思うのか」ということ。「『よく似た別の世界』だというのに、ゲームと同じように進むと思うのか」ということ。
私が疑問に思ったのはこのようなところでしょうか。「ゲームによく似た世界」なだけで、「別の世界」ということがわかっているのに。「ゲームと同じように進む」と思う。シュタイン○・ゲートもびっくりです。
友人(女性)に頼み込んで借りて実際の乙女ゲームをやってみました。ライバルはいました。悪役令嬢、出てきませんでした。……乙女ゲーム(なろう式)が正しいようです。
つまり私がながながと何を言いたいかといいますと、「乙女ゲーム式悪役令嬢」というパターンもひとつの頂点をなしているでしょう。しかし、それは現実にある乙女ゲームとは少しだけ違うよ、ということなのです。
さて、ここまでは令嬢や乙女ゲームといった、いわば主役について個人的に補足をしてみました。続いては、ある意味影の主役ともいえる、王子やその類について考えてみたいと思います。
私は前回の「悪役令嬢ものについてのお話」のなかで、「王子が王子の責任をなしてない」という意味のことを書きました。そこについても、さまざまなご指摘、ご感想がありました。「現実世界ではありえないって言っているけど、普通に馬鹿みたいなことしたやついるやんけ!」という指摘もありましたし、「どれだけ馬鹿にできるかが重要なんやで」というご感想もありましたので、それらをふまえてもう一度考えてみたいと思います。
私は、王子が馬鹿者である、という状態を否定しません。なぜなら、古今東西、王族が馬鹿をやらかす、というのはたくさん例があるからです。例えば、殷の古代中国、殷のチュウ(糸に寸)王、女に狂った挙句国を滅ぼされたあれです。現実世界をひもといてみれば女性問題でやらかした王族の多いこと多いこと。
元々馬鹿者であった場合も、周囲に上手く誘導されたとか、酒に酔った勢いとか、子どもをすでに作っちゃったとか、色々理由があるでしょう。それを書いて頂けると「馬鹿だと思っていたけど、予想より馬鹿だったのだな」と納得できます。
有能であったけど馬鹿者になったということも否定しません。何かしらの理由があって馬鹿になってしまったということでしょう。チュウ王はまさにその例にあたるでしょう。
その背景をしっかり作品に書いてもらうと、すんなりと「ああ、この王子馬鹿になっちゃったんだな」とわかります。
つまり、「婚約破棄される令嬢」の敵役であるヒロインかなにかがとんでもない謀略でも遣ったのか麻薬でも食事にぶち込んだのか肉体で篭絡したのかわかりませんが、とにかく「有能な王子」が「馬鹿王子」になるだけの理由付けがほしい、ということですね。
さて、王子が馬鹿をやらかす、という点については「理由付け」があると、わかりやすい、ということでいいのですが、次はその周囲について考えを述べたいと思います。
元々、王子の婚約者という立場を傘に着て、やりたいほうだいわがままほうだいでどうしようもない令嬢が婚約破棄された場合、周囲が助けに入らないのはわかります。
しかし、「私何も悪いことしていないわ!」というタイプの令嬢の場合。私個人としては「君ら上のほうの貴族なのになんで助けに入らないねん」ということなのです。例えば、「侯爵令嬢」の場合だったら、もっとも単純化した貴族制の場合、公候伯子男(本来ならば準男爵だ騎士だ一代貴族だなんだかんだと色々ありますが割愛)の5つと考えられるので、上から二番目です。ぶっちゃけ、どうにでもやりようがあるはずです。調査とかその他色々できるのになぜ婚約破棄されるのを黙ってみているんですか、あなたたち。と私ならばそう突っ込みをいれてしまうでしょう。いざいわれのない婚約破棄をされたとして、「その権力をなぜ使わないのか」、という点です。
貴族制もドイツを基にしたり中国を基にしたりした場合はもっとややこしくなりますが(大公だ王領伯だ公主だ王だなんだかんだ)、それも割愛します。
つまり、一言で言うなら「動かない周囲はなにかあるのか」、ということです。例えば、「これこれこの場所で侯爵令嬢が男爵令嬢をいじめているのを見た」という証言があって、裏づけも取れている。侯爵令嬢本人はやっていないと言っているといったような場合。「真実は本当にやっていなくて、魔法を利用して作り出した虚像にいじめられているように見せかけた男爵令嬢の罠だった」というような理由があったら普通に納得できます。たとえ物語が婚約破棄から始まっていても、物語がすすむ過程でこういったことが明らかになるならば、私は全然面白いトリックだと思います。
それでは、「婚約破棄」について、さらに補足をしておきたいと思います。「婚約破棄」についてはそれ相応の理由が必要ですよね、というようなことを私が書きました。理由なく婚約破棄するような王子は私が見た中では今のところいません。
「婚約破棄」した場合どうなるか、ということも前回書きましたので割愛して、その影響についてちょっとまとめたいと思います。
王権が強い場合は多少の影響がある程度で済むか、その後の治世がやや停滞する程度で済むでしょう。
しかし、王権が弱い場合。「婚約破棄」というのは大変に危険です。現実世界の例で言うならば、中世フランス前期、カペー朝やヴァロワ朝のような王権の状態だった場合。すなわち、「王というのは大諸侯の代表者であって、同程度の力を持つ諸侯が国内に存在している」という場合です。カペー朝やヴァロワ朝に対してのイングランドのプランタジネット朝のようなものです。
つまり、「大諸侯の令嬢(むしろこの場合は姫君)を切ってその辺の木っ端諸侯の娘を選ぶ」ということはぶっちゃけ戦争の危機です。私が王だった場合は王子を幽閉して謝罪使を送るか、王子を処刑して別の王子を立てます。大体第二王子とかそういった立場と結婚するような作品が多いので、まぁほかにいるでしょう。いなかったら血統の近いところから養子を迎えればいいだけです。
私が侯爵側の人間だったら、この身分軽視を大義名分にして諸侯を集めて反乱を起こします。「我が家の令嬢を姑息な手段で陥れた君側の奸である男爵家を許すな!」とでも言えば、低い身分に反発する貴族がずらずら集まってくるでしょう。
『銀河英雄伝説』の構図です。……このパターンだと私は負けてしまいますが。
話がそれました。反乱を起こした際に、正当性を令嬢本人が担保できれば、「無実の令嬢を婚約破棄した第二王子はその身分にふさわしくない」とでも理由をつけてひきずりおろすことも恐らく出来るでしょう。ここまで細かく設定するのは私もやらないでしょうが、頭の片隅にでも。
影響に関しては、この程度にします。なんか別の話にずれていきそうなので。
続いて、「婚約破棄されたので別のところに嫁ぎます」といった作品のヒーロー像について簡単な質問のようななにかを。
あくまでイメージですが、俺様、冷酷、イメージカラーは黒もしくは赤、そんな感じのヒーロー像が多いような気がします。
なぜなのかは正直、感覚的な問題なのでしょうから、私にはなんとも致しがたいです。男性向けでいうと、釘○さんが担当なさるようなツンデレキャラでしょうか。
相当前ですが、読んだ作品のヒーローに「自分に敵対する自軍の軍人、自身の官僚、自国の貴族を殺してきた冷酷な皇帝に嫁ぐことになった主人公」のような作品がありましたが、その皇帝陛下のイメージカラーが赤、というのも相まって、「赤い皇帝じゃねぇか!」と思ったことがあります。
こういう場合、私個人としては全力で結婚をご遠慮させて頂きたいのですが、こういった冷酷系ヒーローについて、女性向け作者、読者の皆々様はどのようにお考えなのか、という点ですね。
もっと俗物的な視点にしてしまうと、私個人は「なんかすごい嫌なやつじゃないのかなぁ」と思ってしまいますが。
長くなってしまったので、この辺で終わりとさせて頂きます。
お読みいただきありがとうございました。ご感想などは大歓迎です。重ねて申し上げますが、悪意ある意図で執筆したものではありません。よりよいものになってほしいという意図です。