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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
91/191

28話 ヒロイン攻略開始です。


鬼女降臨から一週間。

朝に私一人、座禅の時間が追加された。・・・まあ、仕方なし。


今日も慎ましく淑女に相応しい行動を


部屋にそんなスローガンが掲げられた。

垂れ幕に刺繍というルルーの傑作である。・・・心身が引き締まる。


ミシルのお見舞いも静かに、クラスでも大人しく、食堂では優雅に食した。

それはそれは《大丈夫か?》と亀様に心配されるほど。


「ルルー、そろそろ許してあげてよ。お嬢の隈が大変な事になってるよ・・・」


アンディの一言でやっと垂れ幕が外された・・・長い、闘いだった・・・!





「おにぎり・・・?」


ミシルの目が見開かれた。学園医マージさんの誘惑にも屈せずに食事をほぼ取らなかった彼女は、私の握った塩むすびをじっと見た。


淑女強化週間がやや(・・)解除されたので、休日の今日はダジルイさんが王都商店街で手に入れて届けてくれていた米を自室のキッチンで炊いた。飼料扱いだったけど、良かったー、売ってたー。


調べたミシルの国の食事は米を主食にした「日本」と同じ。島国なので肉よりも魚がメインで副菜は野菜がたくさん。と言っても時代劇ドラマで見たような精進料理っぽいもの。残念ながらアーライル国では食材の輸入どころか交易がなかった。

ミシルの村の食事の様子は完全にはわからなかったけど、米が主食って言うならばおにぎりで気を引けるはず! そして私も食べたい! 鰹節か昆布で出汁をとった味噌汁が飲みたい!なぜ無いのだ!?王都市場よ!


そういう訳で、いまだ保健室にいるミシルに米だけ差し入れ。


「炊きたてよ~!と言いたいところだけど、熱くて握れなかったから少し置いちゃった。でもまだ温かいわよ。一緒に食べよ」


塩むすびと同じように私を見てくるミシル。


「・・・米を、食べたことが、あるの?」


「美味しいわよね! 大好きよ! おにぎりが食べにくいならお粥にしようか?」


ミシルのベッドに腰かけ、二個だけおにぎりを乗せた皿を差し出す。躊躇いながらもミシルは一つを手に取った。・・・よし!


「こんなに綺麗なご飯・・・お母さんに会った時に食べたきりだ・・・」


・・・ん?


「い、いただきま、す?」


「どうぞ召し上がれ。よく噛んでね」


普段あまり食べていないのに急に人並みに食べると胃がびっくりして痛くなるから、気をつけてもらうのにそう言ったのだけど、なぜかミシルは泣いてしまった。


はらはらと涙が流れる。それでもミシルはおにぎりを見ていた。

私はハンカチを取りだし、そっと彼女の頬に押し当てた。


ミシルは静かに泣きながら、ゆっくりと、少しずつ、食べきった。濡れ布巾で手をしっかり拭いて、ルルーが差し出した白湯も受け取り、少しずつ飲む。


「もう一つどうぞ?」


「それは、あなたのでしょう? 私はお腹いっぱい。ご馳走さまでした・・・ありがとう」


ふっ、と、微かに笑った。


・・・感無量!


「あなたは・・・どうして私に関わろうとするの?」


一人感動に浸っていた私にミシルが聞いてきたので力一杯答えた。


「独断と偏見によりあなたと友達になりたいからよ!」


貴女が好きなキャラだから!なんてどう説明するのさ。私の後ろではマークとルルーががっくりしている気配がする。

まあ、第一にはそういう事で。

ぽかんとするミシルに今度は私から質問。


「私の魔力を感じる事はできる?」


「な、なんとなく、他の人より多いことはわかる」


「ふむふむ。それを見込まれて、学園長にミシルの魔力操作の補助をするように頼まれたの。これもその一つ」


ミシルの手首にある、この間作った腕輪を指すと驚いた。正しくは亀様の作だけど。


「学園長から聞いたあなたの話だけでは魔力を押さえつけるしかないのだけど、そうするといつまで経ってもミシル自身での魔力の操作ができない。で。私たちの結論の一つとして、あなたに取り憑いていると思われる魔物の正体を知りたいんだ。教えてもらえる?」


魔物・・・

と、何やら複雑な表情をしたミシルは黙りこんでしまった。

まあ、おにぎりを一つ食べたし、今日の重要ミッションは終了したので他の色々は明日以降でも構わない。


「それと、私の事は知っている? 親は奴隷王と呼ばれていたのだけど」


話が変わった事に顔を上げてまたもぽかんとしたミシルは、首を横に振った。


「じゃあそれはおいおい説明するとして、私の目の前で飢えるなんて許さないという信念のもと、これからもミシルに食事を持ってくるわ。私に興味ができたら何でも聞いて、何でも答えるから。お友達になりましょ!」


頷いてはもらえなかったけど、前よりは確かに当たりが柔らかくなったのを良しとして保健室を出た。途端。


「俺が言うのも何だけど、お嬢口説くの下手過ぎ・・・」


「ふふ。直球なのがお嬢様の良いところよ?」


「・・・好きな女の子を待たすだけ待たせたボンクラを見て学んだのよ」


「すいません!本当すみません!!」




そうしてその日は一日色々と料理をして過ごした。ストレス発散!

ダジルイさんの仕入れた米は飼料扱いなだけあって量が多かったので大量に炊いたのです! 

外で! 


自領から持ち込んだ簡易かまど三台!釜(二升炊き。土鍋以外にも作ってもらった)!薪!水はまあ食堂から。外で調理しても良いけど、場所的に食堂の近くにしか許可が下りなかった。まあそだね。


休憩中の食堂スタッフが見学する中、ご飯を炊き(だらだらと(こぼ)れかける様子に気が気でなかったよう)、豚の生姜焼き(玉ねぎ入り)、鶏の唐揚げ(ルルー担当)、キャベツ千切り(マーク担当)で外ご飯! は~、鰹出汁昆布出汁の味噌汁が飲みたい! どこよ海の乾物~!


ご飯の量に合わせての肉メニューの作り置きだったのだけど、食堂スタッフにもお裾分けしたところ大好評。皆揃って「酒が飲みたい!」と叫んだ。わはは。

匂いに釣られて来たマークのクラスメイトの一般寮生にもお裾分け。屋台慣れをしてるのか、立ったままの食事も平気らしい。米だと知ってびっくりしながらも美味しいと言ってもらえた。飼料としては知られているんだな~。


「そのままでも充分だが、このソースが付いたコメがまた旨い!」「しょうゆ?聞いたことがない!どこで手に入る?」「酒場で出せば大儲けじゃないか?わっはっは!」「まだまだ知らない料理があるなぁ・・・」「ドロードラングは旨いものがあるって聞いたことがあるけど、本当だった!」「旨い!ワシの知らん料理がまだあったのか!」


いつの間にか紛れ込んだ学園長の許可をとり、寮の一般メニューに豚生姜焼きと鶏の唐揚げが追加されました。ぃ良し!!


後日、この騒ぎを聞きつけた王様がレシィと団長と共に非公式訪問。


「爺がグダグダと自慢するから食べさせろ!」


ついでにセン・リュ・ウル国との転移門設置の承諾を取った。


「は!? あそこの武門一派と交流!? は!? 武術を習っている!?」


おお、王様はシン爺ちゃんたちの国を知っていた! そしてその隣にいた団長の目がキラキラに。くれぐれもお仕事をしっかりしての休日に領地に来て下さいねと念を押した。


この数日後にドロードラング領に現れたのは、団長とギラギラとした笑顔のマミリス様だった。

シン爺ちゃん、ギンさん、よろしく・・・ごめん!


さらにアンディのリクエストにより、アンディの部屋で専属のシェフと一緒に生姜焼きと唐揚げを調理。


「最初の時に僕も呼んでよ。お嬢の料理なら外でも食べたい」


いや駄目だろ。試食はアンディに一番に持っていくはずだったのだけど、皆予想以上の食い付きだったのよ。ごめん。

にしても、アンディの専属シェフもおおらかな人で良かった。庶民料理は奥が深い!だって。


そう・・・なのかな?








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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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