続続3話 躾です。<危機>
薬の備蓄がある程度出来たので、本日抜き打ち避難訓練をします!
私の弱気発言に添って、何かがあった時の為に避難経路の確認をするようになった。そのための道具もなるべく用意。スケボーモドキとスケボーモドキ改のキックボードと荷車。いやあ、土木班はともかく、ネリアさんには睨まれてほっぺをブニッと摘ままれた。
避難先への先触れと、道中の安全確保の為に、先発隊はスケボーに乗れて操作が得意な人。王都からの付き合いの二頭の馬に引かせた、子供を抱えてギリギリ十人が乗れる荷車を、女、子供、老人が乗りきれる分と、荷物も一台分。スケボー、キックボードをそこそこ扱える人はそれで移動することに。
まずは、全員揃っての避難を目標にする。
その為に私は殿。もしもの時に私を拾ってもらえるようにニックさんとクラウスに付いてもらう。クラウス、侍従長の鑑!と思ったら、なんと元王宮騎士だって!
更になんと、ニックさんより強いらしい。・・・マジですか。20才くらいの歳の差があるよね? 現役引退した年もだいぶ違うよね?
・・・そういや、案外あっさりスケボーを乗りこなしてた・・・ここにもチートいたのでは?
まあとにかく、安心の二人。
本日の目標は、荷物を持って乗るものに乗りこむまで。
ちょいちょい練習をしてるけど時間はどれくらいかかるかなー?
『緊急警報!緊急警報! 西の山脈にモンスターの大群を発見、西の山脈にモンスターの大群を発見。領民は速やかに避難準備をしてください、速やかに避難準備をしてください』
『お嬢!何スか、今の!』
「マーク!とにかく皆を避難させる!動いて!」
『了解!』
・・・信じたかな?
執務室のバルコニーに出て、そこから指示を出したり通信機でしたり。
『お嬢!全員準備完了したぞ!どこに向かうんだ?』
早っ! ほぼ五分くらいでニックさんから連絡が入る。
さて急な避難訓練でビックリさせたから怒られますか、とバルコニーから乗り出すと、地響きを感じた。
え、地震?珍しい。こっちの世界で初めての地震だわー。あ!やばい!皆は慣れてないんだった!
「皆、落ち着いて!地震は少し揺れれば収まるから!でも屋敷が崩れる事があるから、少し離れて!」
その間もゴゴゴゴゴゴゴ・・・と続いている。長いな。
「クラウス、ここら辺て火山がある?」
「いえありません。無いはずです」
『お嬢!馬が暴れて押さえきれません!』
「ヤンさん!馬を放してやって! 惜しいけど怪我人を出すわけにはいかないわ!」
『了解!』
「クラウスも外に出て。私は上に上がってどこがどうなってるのか確認する」
「わかりました。お気をつけて!」
同時に動く。スケボーで屋敷の屋根に上がる。見渡すけど全体が揺れている。何なの!?どこに避難させたら・・・?
ドガガガンッッ!!!
破壊音のした方を向くと、でっかい亀が地面から出てくるところだった。
・・・・・・・・・・・・亀?
オオオオオオオオオンンンン・・・
・・・・・・・亀って、吼えるの・・・?
オオオアアアオオンンンン・・・
・・・・・・あれ、都心にあったドームくらいあるんじゃない・・・?
『お嬢!何が見えた!?この吼えてるのは何だ!?』
ハッ!!そうだった!皆を避難させなきゃ!!・・・でも。
「でっかい亀が西の丘から出てきたんだけど、あれ、何?」
『は?カメ?・・・・・・おわっ!!何だ!?あれ!!』
ニックさんにつられて皆が確認したようだけど、誰も知らないようだ。とにかく、パニックが酷くなる前に避難をさせなきゃ。
「とりあえず皆は東に向かって! 私はあの亀がそっちに向かわないようにしてみるから! 皆!練習したように落ち着いてね! あ!!?」
巨大亀の動きを注意しながら指示してたけど、甲羅部分の土と共に落ちていく物を見て飛び出した。スケボーに乗り、風魔法で高度そのままに亀に向かう。
気を失うことを考えてなかった。だから、自分の限界まで魔力を練り込んだ。耳元で誰かの声がするけど、聞こえない。
亀だけを狙う。距離を測る。魔力を具現化する。それを掲げてスピードをあげる。
今の私には、怒りしかない。
出現した時から、ずっと吼え続ける亀に向かって叫ぶ。
「うちのお墓を崩してんじゃねえぇぇぇーーーっ!!!」
そうして、亀の頭を、その大きさに合わせたハリセンでぶちのめした。
ハリセンの形に頭を凹ませて気絶した亀を確認して、私も意識を失った。
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