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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
86/191

続続26話 入学です。<ミシル>



「新入生諸君。学園での生活が有意義な時間になることを祈る」


在校生代表として、そうルーベンス殿下が締めくくった。


長かった~。式ってのはどこの世界も長いのね~。領地のオープニングセレモニーなんて五分だったのに。


学校体育館くらいの広さのこういう式のためのホールに、新入生、在校生、教師たちが集まった。式には侍従侍女は入りきらないので参加できない。顔が見渡せるくらいの人数しかいない。こうして見ると、一クラス三十人前後だろう。二年生も三年生も同じくらいだ。


そして生徒は全員、学園の制服を着用している。白を基調としたブレザーな制服は、流石ゲームである。普通無いよね? どんなに気をつけたって汚れるよね!? なのに一年生と三年生の制服の見た目がほとんど変わらない! くすんだりしないの!? 素材は何!? 汚れたらお取り替え!? うちは余分なお金はありませんよ!


ちなみに学年の区別がつくようにとスカーフの色が違う。

・・・ブレザーにスカーフって・・・男子はアレです、シャツのボタンを一個二個開けてスカーフを入れ込む、イタリア出身のちょい悪オヤジ系ファッションです・・・わりと似合う人が多く違和感が少ない。

女子はリボン結びに出来るので、ちょっと大きめリボンで可愛いねという感じ。


今年は一年生が赤。二年生が緑、三年生が青になる。学年が上がっても持ち上がりなので私は卒業するまで赤色だ。・・・留年すればその学年の色を再購入になる。


ちなみに侍従侍女は私服。というか家で使っている執事服、侍女服で構わない、と。

マークの執事服姿に大笑いしてしまったのはしようがないと思う。

着せられてる感が!

ええ、謝りました。


そうそう。一般は学費は無料。商家は一律、貴族は階級毎に納入金の額が異なり、うちは伯爵になってしまったのでドンと払う事になった。

入学を止めようとも思ったけど、私がいなくても領の運営ができるかを見たかったので、断腸の思いで入学。


まあ、さっそく親方たちを呼びつけたりしたので私の方が離れていられるのか?って疑問もある。親離れの試練か? 領主だからそんな思いはしなくていいだろうけど。


どんな賭けをされてるのか悔しいのでなるべく呼びつけないようにしたい! 



そして、式の間チラチラと注目を集めていたのが、我が一年魔法科の最後尾にいるピンクブロンドの髪の女の子。

ヒロイン。


なんだけど。


肩上で切り揃えたらしい髪はパッサパサ、体はガリガリ。制服が可哀想になるくらい浮いている。そして、薄い本でくりくりと輝いていた瞳は落ち窪み、その下には隈がペイントですか?というくらいガッツリ付いている。


さらに注目の理由である禍々しいオーラ。十分に一回は「うっ!」と呻く。その度にそのオーラが蠢いている気がする。

オーラなんて見えないのにね! 


彼女を見かけた時、二度見三度見どころかガン見した。




《サレスティア、何かが敷地に入った》


亀様にそう言われたのは、マーク兄貴によるぶん投げ会に飽きた私たちが、お昼も近いし食堂に行きたいな、でもアンディはどうしようねって話していた時だった。

次の瞬間、私にも感じとれたその気配はとても強大な物だった。


ぶん投げ会(その時には組み合っての練習になっていた)を強制終了させ、アンディを自室へ帰し、私たちはその何かを追う。そして部屋の前で学園長に案内されていた彼女と対面した。


「は、初めまして。サレスティア・ドロードラングと申します。隣の部屋になりますので、これからよろしくお願い致しますね」


ちょっと圧倒されながらも何とか挨拶をした私に、彼女は、


「ミシルです。私の事は放っておいて下さい」


と小さな声ではっきりとそう言った。そして学園長にも無愛想な応対をして部屋に入っていった。あれま。


私の後ろで長いため息が聞こえた。マークがルルーを支えているが、二人とも顔色が真っ青だ。

あ。


マークと頷き合い、学園長とも視線を合わせる。


「何かわかったか?」


「はい、とりあえず一つ。彼女は魔物に憑かれていると思われます」


なんと!と学園長が驚いた。私ら以外の耳に入らないようにと部屋に入る。ルルーがお茶の準備をする。


「うちにもおりますので」


「!・・・サリオンか。しかし、サリオンにはこんな風に感じた事は無いが?」


「失礼します。亀様は常に魔力を抑えてくれています。ですがその姿を現した時、そして白虎を追って風の遣い、シロウとクロウの前身ですが、彼と対峙しました時も俺たちはこう(・・)なりました」


なんとなんと、とマークの言葉に呆然とする学園長。


《魔力を多く持つ人間にはそれがあまり感じられない傾向にある。実際、サレスティアは顔色も変わらずにいた。一瞬の恐怖はあったようだが、学園長もそうなのだろう》


テーブルの上に鎮座するキーホルダー亀様が言う。


「ねえ亀様? ミシルに憑いている魔物はわかる?」


《正体の特定はまだ出来ん。済まぬ》


「あの様子では早く魔物を分かれさせないとミシルが危ないんじゃない?」


《そうだが、どういう状況なのか詳しく調べんと娘だけが危険な事になる。それは望まんのだろう? 魔物との融合は離す方が難しい》


そっか。そうだよね。


「学園長、とにかくできるだけミシルの傍にいるようにはします」


「・・・危険な事を頼んでしまって済まんな・・・まさか魔物とは・・・とにかく、暴走に対しての結界をさらに幾つか学園に張っておく。何処まで通用するかは不安があるが、やらんよりはいいだろう。お嬢も、危険を感じたら必ず逃げるように」


「はい。わかりました」



そうして、現在入学式の終了までは呻く以外は何も無い。

ホールまで一緒に行こうと誘ったけど扉を隔ててあっさり断られ、それでも待っていたら「近くに寄りたくないので先にどうぞ」と言われ、結局前後に分かれて移動。十メートル近く離れられて話す隙も無い。

むぅ、手強い。


その後も入学式終了後は解散なので部屋まで一緒に「いえ、一人で戻ります」、夕飯を一緒に「いえ、部屋で自炊します」、寝る前のおしゃべ「いえ、寝るので」等々、こちらに被せてのお断り。


むうぅ、手強い!


「セドリックさん!女の子の口説き方を教えて!」


『はあ!?』


カーディフ領主のチャラ男に助力を求めたが、自分に気のある()としか遊んだ事がないというしょうもない結果だったので早々に通信を切った。


「お嬢様。ミシル様とは本日お会いしたばかりですし、急には無理ではないでしょうか」


ルルーが私の髪をすきながらそう言う。・・・うん、じゃあ、また明日だね!


「はい。終わりました。・・・あの、私、お嬢様に付いてなくてよろしいのですか・・・?」


「ん?うん。私よりもマークの方が慣れない事に参ってるんじゃない? 執事服も窮屈そうだったし、夫婦なんだし夜くらい一緒にいなよ。私には亀様がいるし、何かあっても大丈夫よ」


「・・・では、何か有りましたら必ず呼んで下さいね?」


はい!と元気に返事をしたのをちょっと笑って私の寝室を出ていくルルー。

その耳がうっすら赤い。


・・・まだまだ初々しいのぉ・・・・・・・・・寝よ。








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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
― 新着の感想 ―
[一言] 転生、悪役令嬢、ヒロイン、ここまで揃ってるのにこのヒロインは予想外だわ。助かりますように…
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