25話 ゲットです。
年が明けた。
この冬は通常積雪量だったので雪像造りはせず、冬季休業中の遊びは雪合戦のみ。
なのに、国王&お妃ズ、騎士団長夫妻が参加。
指揮を取ったり前線に出たり、後方でひたすら雪玉を作っていたり、最後には皆雪まみれになって終わった。
宰相は、娘さんを慮って&留守番の為に不参加。団長夫妻をよろしく頼むと一筆いただいた。
・・・おつかれさまです。
その後は皆で温泉へ。
・・・なんすかね、本当に皆で風呂に入ったんです。ぎゅうぎゅうです。何で王妃様はOK出したんだろう?
・・・なんとなく思っていたけど、雑なんだろな。お付きの方々も仕方ないって感じだったし・・・
でも、姫たちや子供たちと洗いっこをしてる姿を見て、「お妃様方がこんなにはしゃいでいらっしゃるのは本当に久しぶりです」と初老の侍女長が小さく笑ったので、良しとした。
今日は亀様ガードを高くしてもらったよ!
・・・え?スタイル?・・・ええ、まあ、何人かは男のロマンが詰まってましたよ・・・誰とは言いませんけど!!
「アンドレイの婚約者が貴女になると知った時、こんなに楽しくなるなんて思っていなかったわ」
アンディ母、マルディナ様が、風呂上がりの麦茶を飲みながらフフフと笑う。・・・まあ、未来の義母にそう思われるのは素直に嬉しい。うぅ、こそばゆい。義母!だって!
そんなマルディナ様は、後方で雪玉作りに精を出してました。
「本当よね。王とラトルジン侯爵と学園長が三人がかりで決めたなんてどんな問題児かと心配したけど杞憂だったわ」
王妃、ステファニア様も麦茶をおかわり。
雪合戦では的確な指揮を取り、国王軍を手玉に取って女傑ぶりを見せつけた。女帝としてもやっていけそうですねと言ったら面倒だから王には頑張ってもらうわと笑ってた。
「ある意味問題児ですわよ。剣に向かって頭突きなど考えられません」
マミリス様、しれっと私の事を言いましたけど、あの時「剣を握り潰してみたい」って仰ってましたよね!? ってか笑ってるし。
雪合戦では先頭に立ち特攻隊長として大活躍。年齢どうなってんの!?
「そういう保護があるのでしたら、私たちも掛けてもらえるとよろしいのでは?」
二の側妃、オリビア様が言う。今はアーライルの属国だけど、元はハスブナル国に属していた国から嫁いで来られたから、特に自衛に興味がありそう。でもあれ、慣れないとぶっつけ本番では厳しいですよ?
オリビア様も後方で雪玉作りをしていたけど、作るついでに回り込んで来た伏兵に的確に雪玉を当てていた。
「そうね私は是非欲しいわ。何かの時には盾になりますからね!」
一の側妃、パメラ様はなんと武闘派でした。他のお妃方よりも若干動きやすそうなドレスを常に着ているなとは思っていたけど、そういう理由だったとは。今は風呂上がりなので簡易な服だけど、それでもしなやかな体とわかる。手には剣ダコがあったし、なんと剣は両利きだそうだ。息子である第二王子もそうなのだろか?
マミリス様と共に敵陣に攻め込む姿は頼もしくもあり、うっかり国王頑張れと応援してしまう程容赦なかった。
良かった・・・子供たちを外してて・・・
え、侯爵夫人? 侯爵夫妻は見学です。てか審判してもらいました。厳正なる審判に誰も逆らいませんでした。
私はもちろん未成年の部で、魔法無しの従魔無しで、前線への玉運び係でした。レシィは後方で玉作り。
アンディは何故か国王軍で、エリザベス様は王妃軍へ。
二人とも旗頭にされ、エリザベス様に当てられない国王たちを嘲笑うように王妃軍は攻め込んだ。
因みに王妃軍の優勝賞品は新しいドレス。
撫で肩国王様、ご注文ありがとうございます!!
「お嬢。はい、入学祝い」
執務室でちょっとだけ書類確認をしていた時に、アンディがスッと出して来た。包みを開けると押し花を貼り付けた栞が五枚。か!可愛い・・・!
「わ・・・これ、手作り・・・?」
驚いてアンディを見るとはにかんだ。ぐはっ!
「うん。子供たちに教わって、お祖母様の花壇から花をもらって部屋で作ったんだ。上手く出来たのを持ってきたよ。色が移らない薬剤があってお祖母様に教わって塗ったんだ。試しに本に挟んでも色移りしなかった。
僕が学園に入学する時に保存袋に刺繍をしてくれたでしょ? 僕も手作りで何かをあげたかったんだ」
レシィには内緒だよ、安っぽいって怒られそうだからと口の前でそう人差し指を立てる。
安っぽいって何だ!押し花を綺麗に作るって結構難しいよ!
花びらがバランス良く開いていて、四季折々の花がある。一年かけて作ってくれたのか・・・
・・・あのへなちょこ刺繍に対してのこのクオリティー・・・申し訳なさ過ぎる・・・!
でも。
「・・・ありがとう! とっても嬉しい! 遠慮なく使わせてもらうね!」
そう言うと、良かったと破顔した。
・・・美人万歳っ・・・!!
***
王族たちのバカンスも終わり、開店に向けて試運転を兼ねて皆でホテルの準備を開始。
「師父!?」
ホテルでお昼を食べている時に、コムジが外に何かを見つけて窓に張りついた。
何だなんだ?と近くにいた面々は外を見る。
と、大通りを橙色の服に菅笠の様な物を被った二人の人物が歩いていた。
が。
「半袖ーーっ!? コムジ! 知り合いなら風呂に突っ込んで来いっ!」
辛うじてマントを纏っているけど、どう見ても雪の残る地域の格好ではない! 「は、はい!」とコムジと他に何人かが慌てて出ていく。ホテルのお風呂も開店前の様子を見るのにもう沸いているはず。昼食も終盤だったけどスープが残っているか確認。料理班の一人が指で丸を作ってる。よし。私もホテルの玄関に向かって走った。
そうしてたどり着いた玄関扉の向こうでは、盛大に震えて凍った鼻水をカチカチ言わせた小さい爺ちゃんと大きいオッサンがいた。よく歩いて来られたな!?
侍女が向こうから「湯加減丁度です!」と叫んでくれたので、有無を言わさずに二人とコムジを男風呂へ亀様転送。
侍従の何人かもコムジを手伝うべく走って行った。誰かが、手足の先からお湯をかけてと叫んでいた。
うん!そんな感じでちょこっとずつゆっくり温めてやってー!




