続続続24話 収穫祭です。<やれやれ>
今回仕掛けた罠は「アンドレイ王子」と「私」。
ドロードラングを狙うならどうやる?
と、元盗賊、元スラム住人、そして騎馬の民に聞いた。
まずは客に紛れて下調べ。これはしないと話にならない。
狙い所を決める。戦利品を何にするか。ホテルと遊園地以外で見るものは畑しかないので、商人には保管庫を見せていた。保管庫を買ってくれてもレンタルでもいいと説明しながら。だから、お客さんもたくさんの食料の入った保管庫を見ることは出来る。
行事の確認。無差別に入り込めるイベントがあれば人数を多く配置できる。タイミングを決めれば仕事は早く終わる。そのための潜伏場所も確認。収穫祭は丁度いい。調理を外でするのでホテルの中が手薄になる。スパイダーシルクの布も高く売れる。
軍の確認。鍛練している所を見ることができるが護身が中心。軍や警邏としての働きは無い。侍女たちは特には何もしていないようだ。
騎馬の民がいるが会場までは少し距離がある。他の客がいれば、弓矢は使えないし馬に乗っては危なくて近づけない。
全てが終わったら客が持っている金目の物も手に入る。
という訳で「金目の物を持っている最たる人物、及び身代金もガッポリ取れる人物」として、許嫁である「アンドレイ王子」に囮になってと頼んだ。まあ国王からは、というかほぼ皆にはいい顔をされなかったのだけど、予想外だったのはレシィが自ら参加すると言い張った事だ。
「危ない事はわかっています。でも、私一人が増える事で更に賊の目がこちらに向けば、お客さんの安全が少し上がると思うの。自分で言うのも何ですけど、拐う価値はあります」
・・・8才の女の子って凄いわ~。
もちろん国王の大反対にあったが、王妃様と母親である三の側妃がOKを出した。えぇ~! 「よく言った!女を見せて来な!」とレシィの肩にガッチリ手を置く王妃。えぇ~っ!?
「では私たちも」と手を挙げたのは侯爵夫人。隣で侯爵が顰めっ面をしていたが「子供たちは守ろう」と言ってくれた。いや、侯爵たちも守りますよ?
「ワシも入れてくれ。魔法使いが関わっているようならば直に確かめたい」学園長も加わる。
では、と手を挙げかけた団長を制し「あなたは王都に居なさいね。私が代わりに見届けます」とマミリス様が良い笑顔に。青い顔色の団長が「ワカリマシタ」と引いた。
宰相はどこぞを見ながら無言を貫いた。
その盗賊団は仕事が静か過ぎる。と、ルイスさんが言った事から魔法使いがいるのでは?と疑問が。
大袈裟にいえば、アパートの隣の部屋で暴れているのを気付かないなんて事があるのだろうか?
痺れ薬はあり、それを煙に混ぜる事もできる。それならば薬の痕跡はあるそうだ。その家が火事で燃えたとしても外に漏れた薬は残ると、薬草班のチムリさんが言う。
それに眠っている住人を叫ぶ間も無く斬りつけたとしても、家探しをする音はいくらかは響くはずだ。
魔法なら、部屋から漏らさない防音や、音そのものを消す消音がある。
元盗賊たちは魔法使いが賊になってるなんて聞いたことがないと言う。
元スラム住人は貴族お抱えの魔法使いには魔力の少ない者もいるらしいと言う。
ここで、以前王都スラムから引き取った子供たちに「孤児は魔法の実験に丁度いいと聞いた」と言われた事が合致した。
まあ、全てのお抱え魔法使いがそうではないだろうけど、秘かに黒魔法を行っている奴がいると予想する。
生き残りがいないという事はそうなのだろう。
魔法使いがいるのなら私も罠として役に立つ。何故ならシロウとクロウがいるから。私がいなくなれば従魔のシロウとクロウはフリーになる。上手くいけばこの二頭が手に入る。
内情を知っていればそれは不可能とわかるが、知らなければただただ魅力的だ。
そして、私を目的とするなら敵は絞る事ができる。
王都偵察のヤンさんとダジルイさんに、降格した貴族たちを調べてもらった。その中で不審な動きを見せたのがワージントン子爵領。子爵の顔を確かめたのはヤンさん。すぐにあの時のアンディの従者と判った。
九十九パーセントの目星を付けて、収穫祭に向けて準備を進めた。
ドロードラングを訪れた全ての人が泊まるとは限らない。日帰りのお客さんもいる。
収穫祭の前の晩に客室をまわって、赤いリボンをそれぞれ一人ずつ手首に結んだ。明日の収穫祭はそれを見せると食べ放題になりますと言って。
当日に来たお客さんも領の入り口で手渡して、結ぶのを確認。
このリボンは、私が手渡した人以外が身に着けると青くなるという魔法を亀様に付与してもらった。
青いリボンを見せたらお客に成り変わった賊だ。
もちろん客として受け取っている賊もいるだろうが、染み付いた血の匂いは、コトラ、シロウ、クロウがわかると言う。
成人しても背の小さい子達に、コトラに付いて幼児のふりをしなから青いリボンの人物を探してもらい「恐いよう」としがみついてもらった。
成り変わられたお客さんは縛られて、最初の爆発のあった保管庫にいた。
うちの保管庫が少々の爆発に耐えられない訳がない。ホテルだって出来上がった時に保護の魔法が掛かっている。火事にならないように必死だっつーの。
亀様の魔法なのでリボンが一度外されると亀様にはわかるため、保護する事が出来た。
とにかく何かが起きたら私が一番に目立つようにした。
だからテーブルに乗った。
剣が刺さらなかったのはやっぱり亀様ガード。皆が着けているイヤーカフに付与してもらった。
練習はした。マークやニックさんは私を木剣で殴るのを躊躇ってユルい当たりだったのに、ほんと、タイトは容赦ない。アイツ、女の子を大事にできんの?と心配になる程だ。おかげで本番は冷静でいられたけど。
料理班のトンファーは、かつてコムジが僧侶見習いの時に片手でも使える武器ということで修行していた物を教えてもらった。慣れるのにコツがいるけど、あれなら直接殴ったりしないし手の守りにもなる。料理班からは好評だ。
そして騎馬の民からは、群で獲物を狙うなら囲いこみになると言われた。攻め方はパターン化しているはずと。その事から賊の頭は全体を見渡せる高い所にいるか、魔法使いなら領の外にいるかもしれないと見当をつけた。
そして、その騒ぎに乗じて他の三領が狙われる、またはドロードラングを助けられないように騒ぎを起こすかもしれないという案も出た。
そこから狩猟班を四つに分け、ヤン、ラージス、ニック、ルイスをそれぞれ臨時班長にし、騎馬の民と元盗賊を組分けした。
ヤン班はバンクス領。ラージス班はカーディフ領。ニック班はダルトリー領。ルイス班はドロードラング。ルイスさんはクラウスの後釜なので基本動かない。
腕の立つ元スラム住人はほとんどがルイス班へ。料理班の半分はスラム住人がコック服を着て偽装。そしてお客としても偽装。
知った顔がたくさんいるから子供たちもあまりパニックにならなかった。
そしてうちの武器は木剣。真剣と打ち合っても負けない木剣。亀様ガードだ!どーだ!
で、だ。やっぱり三領でも騒ぎを起こすべく雇われていた賊がいて、うちの連中が主導で捕まえたけれどそれぞれに置いてきたらしい。「面倒くさいんでヨロシク」と。・・・オイ。
とりあえず蜘蛛糸で縛って吊るしたからと言う。・・・どんな感じに吊るしたんだい!?
宝石を地面に埋め込まれた事に全く気付かなかったけど、亀様は知っていたようだ。《いつでも不測の事態は起きる。その経験だ》お前を上回る事もないものだったしなとも言われ、ちょっと複雑な気分に。
まあ、試した事もない逆探知が上手くいって良かったけど。
あの竜巻を見て、学園長には「お嬢の無茶は無茶なのだなぁ」としみじみ言われた。
それも何だか微妙な気分に。
とりあえず、また、一段落かな。
は~やれやれ。
お疲れさまでした。
予定では、もう一個エピソードがあったのですが、諦めました……おかしいな~…
それを入れる為、どこかを縮小しようとして逆に増えました。ガビン!Σ( ̄□ ̄;)
まあ、あっても無くても特に困らないのですけどね。
そして、騎馬の民が全く活躍出来なかったのが心残りです。戦闘シーンというものも難しいですね…いつか、颯爽と駆ける彼らを表現したいものです…出来るのならば…
説明ばかりで、申し訳ありませんが、少しでも楽しんでいただければと思います。
※銅の加工についてですが、屋台で使うような鉄板サイズは難しいそうです。ファンタジーということで見逃して下さいm(_ _)m
また次回お会いできますように。




