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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
10才です。
62/191

続続19話 罰掃除です。<エリザベス姫>


さて。


エリザベス姫がアンディのとこに来た理由は、授業終了後に先生が財務室に戻るまでに質問をする為だそうだ。その証拠に教本に栞を挟んで持ってきている。

先生はアンディの前に、短期間エリザベス姫にも付いたらしい。が、姫には女性の教師が付くことが多いらしく、侯爵の働きもあり、先生はアンディ担当となる。


そんなこんなで、今私たちは前を歩く先生と生徒にくっつきながら、侯爵に案内をしてもらっている。今の時間は休憩のアンディも一緒に。


しかしあれだね~、可愛い姫をガン見していて思ったけど、


「エリザベス殿下は先生が好きなの?」


とアンディに聞いてみた。

鳩が豆鉄砲くらった顔をしたアンディが歩みを止める。そっと言ったつもりだったけど侯爵にも聞こえたらしい。止まった彼もアンディと同じ顔をしている。

あれ? 違うのかな?


だって先生に向ける顔が明らかに可愛いんだよ。うっすらと頬が赤くなるし。目が合うと潤むんだよね~。ああ、可愛い。

あ、置いていかれる!と、二人を追う。


そんなこんなで財務室に着いてしまった。

本日もありがとうございましたと姫が礼をすると、質問はいつでもお受けしますが、あまり根を詰めないようにして下さいねと先生が返す。

わかっていますわと言う姫様は可愛い。

お部屋までお気をつけて下さいと言う先生は優しい。


そして先生は私たちの方を向き、礼をして仕事に戻って行った。

姫は扉が閉まる寸前にこちらを向いた。


「私もサレスティアさんの案内についていっても良いかしら?」


やった! 右に姫、左にアンディで両手に華!!


「お嬢様・・・」


ハッ! ル、ルルーさん! 大丈夫です! ヨダレなんか垂らしません! お願いカシーナさんに言わないでっ!!


ちょっとパニクった私は、何か話を逸らそうとうっかりと口に出してしまった。


「殿下は先生が好きなんでフガッ!」


姫の両手が私の口をがっつり押さえた。その勢いのまま後ろ歩きをして壁に後頭部を打ち付けた。痛い。

それでも真っ赤な顔をした姫がふるふると睨んでくる。

と思ったら、にっこりした。


「私の部屋で、ゆっくり話しましょうねえ?」


・・・笑顔に迫力ある人が多すぎない・・・!?




「あまり誰がいるか分からない所で迂闊な事を仰らないでくださる!?」


「は!申し訳ございませんでした!」


ただ今エリザベス姫の部屋に全員でお邪魔しております。女の子らしい明るいふわふわとした内装で、部屋の主人が怒ってなければなお素晴らしい事だったと思われます。

・・・ええ、怒られてます、ハイ。


土下座まではしてませんが、腰を90度に折って誠意を表してます。

他の皆はお茶を飲んでます。ええ、私一人です。


お部屋にお邪魔し、扉を閉めた途端、真っ赤な顔でうるうるとした姫が振り返り、


「サレスティア様、困ります!」


と、開始。

随分と溜まっていたようで勢いのまま姫は全てを吐いてしまいましたとさ。


先生をいつから好きだとか、良い所をばんばん挙げ、アンディや侯爵が勢いに押されてそれらを肯定すれば、それはそれは喜んだ。ああ可愛い。


家格の釣り合わない事は分かっているし歳の差もある。第一に自分は王女、国の益の為に嫁がなければならない。想いを遂げられない事は重々理解しているつもりだが今はまだ諦められない。

彼が独身の間は誰にも嫁ぐ約束をしたくない。


きっと彼が結婚するのはもうすぐだ。恋人がいないと聞いたけれど23才だ。その仕事ぶりからいずれは侯爵からの紹介もあるだろう。

どうせすぐだ。

だから、その時まで、ただ彼を想っていたい。


・・・11才って、こんなに情熱的なの?

ええこの間、私は90度でございます。


「この想いが知られては先生の迷惑になります。今後このような事の無いようにして下さいませ」


「は!肝に銘じます!」


「よろしい。さあ、貴女もお茶をどうぞ」


「は!ありがとうございます!」


なんだこれ・・・とマークが呟くが、やっと体を起こす事ができた私にはどうでもいい。あーしんどかったー。


「姉上、僕たちも聞いてしまいましたが良かったのですか?」


姫は基本、部屋には一人でいるらしく、侍女たちは部屋の外に控えている。怒ってはいたけど怒鳴ってはいないので、今の話は聞こえていないはず。

一人の時間は存分に先生を想うのだそうだ。可愛い。でも部屋に籠る理由にしている自主勉強もちゃんとやっているとか。真面目だ! 

ということでルルーにお茶を淹れてもらう。


「・・・あの状況で隠しきれるわけもないでしょう。知ってもらった方が口止めがしやすいと思ったのですわ」


「え、侯爵に応援を頼まないのですか?」


「サレスティア様!それが先生への迷惑になります! ・・・ただでさえ質問という形で邪魔をしているのです・・・侯爵の元で働く先生をこれ以上煩わせたくはありません」


切なげに俯く姫が、私の懐かしい記憶を思い出させる。

そうだよな~、好きな人に近づきたいけど近すぎて嫌われるのが恐いんだよね~、あったあった、うんうん。


お節介はしないようにしよう。先生が姫を好きならお節介し放題だけど、彼女は「姫」だ。本当に余計な事になってしまう。失恋する為の手伝いは、正直しづらい。

ならば。


「誰にも話せなくて辛い時は私が聞きます。呼んで下さい。または、領地にいらした時に夜通し女子会をしましょう。美味しいお菓子とお茶を用意します」


ぽかんとした姫も可愛いな~。




***




「ただいま~」


今夜も子供部屋(10才までの男女)にお邪魔します。コトラが赤ちゃん部屋を卒業してこちらに移ったのを追いかけて、私もここで寝ている。

養子縁組がなかなか進まないのだけど、子供たちはあまり気にしていない様子。・・・あれかな、大人たちがめいっぱい構い倒すのが良いのかな? 大人たちは子供らが良いならそれで良しとするスタンス。どの子も皆可愛いよね~。


「おじょう、おかえりなさい」


「ロイ! 遅くなってゴメンね」


ぎゅうっと抱き合う。苦しいよと笑うロイ。ロイが離れると他の子たちが抱きついてくるのを抱きしめる。


コトラ(サリオン)はもう寝てるので、おでこにキスをする。

おやすみ。


誘拐事件の後から暇さえあればロイにくっついている。

そして、子供たちには三人以上で行動するように伝えた。もちろんそれが難しい時もあるので、一人になる時はどこに行くのか誰かに伝えてから向かうようにと念を押す。それがたとえトイレでも。


私がずっと背負っていた亀様のぬいぐるみは、今は子供たちが順番に持って寝てる。・・・そろそろ洗濯をしてあげたいんだけどな~。

真っ白だった亀様がくすんできてる。隙を見てしよ・・・


後から後から、子供たちの「今日はね!」を教えられる。同じことを言う子がいるのは一緒に行動したのだろう。よしよし、守ってくれてありがと。

この時間がつい苦笑するほど長いけど、欠かさないようにしている。この寝る前のこの時間しか、お互いにゆっくりできないから。


ロイは一週間くらいうなされた。昼間は何ともないが暗がりや夜は少し震えた。だからなるべく一緒にいた。私がいられない時は、ニックさんや、ルイスさんなどに頼んだ。子供同士の他に必ず大人が付くように。


抱っこしながら寝て、ロイが寝ついた時に起きている子たちにまた、いつも気にかけてくれてありがとと言う。この子たちは必然的に下の子たちの面倒をみてくれてる。大人の届かない所を見つけてくれる。ロイが震えてるのを教えてくれたのはこの子たち。


ロイを起こさないようにサリオンの隣にそっと転がすと、起きている子たちの話も聞く。

大人の見逃した所は子供が見える。

今日も誰も震えてなかった。

良かった。


あんたたちも無事で良かったと、一人ずつ、名前を呼びながら抱きしめた。








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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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