続続17話 開園です。<鶴の一声>
三人からの助言を盛り込みながら、本館と一号館の部屋代を上げ、食事処や大風呂は館毎に時間を区切ってトラブルを減らせるように苦心した。
本館は風呂付きの部屋なので、大風呂が嫌ならその部屋を選ぶだろう。
食事は基本ビュッフェ。個室で食事は割り増し料金に。
それでも安いと言われたけれど、後は何で取ればいいの~?
「サレスティア嬢。こう言っては何だが、貴族は見栄を張らねばならん。安心してぼったくれば良いぞ?」
「おお!ブライアンさんもそんな事を言うんだ~!」
セドリックさんが大袈裟に驚く。
「大店の商人もそうですね。これだけの金額を払えるんだよと見せつけなければいけないそうです。大変ですよね」
「究極の話、同じ食事でも金持ちは三倍も払ってくれるよってね」
セドリックさん、軽いな・・・
三人の話を聞いているとこんがらがってくるな~。いや、楽しいんだけど。
「あ~! 面倒くさ~い!」
私がぐったりすると三人が笑う。
ルルーが空になったカップにお茶を注いでくれる。
あ。
「マーク、ルルー、二号館の値段をどう思う?」
「そうですね、スラムからは全然手が出ませんけど、農民なら年に一度の贅沢ってところですかね」
「私も二号館はこれでいいと思います。一号館は王都で泊まったあの宿の値段を真似てはどうでしょう? うちの方が少々小さいですが、部屋数も同程度ですし、お風呂の維持も含むのですし、先程の協議での一割増しが妥当かと思います」
王都のあの宿は良かったよね! 本当は本館があの宿を真似るんだったんだけどなぁ。
「お嬢はよくわかってないみたいですけど、スパイダーシルクって高級品なんですよ。 寝巻きから寝具からスパイダーシルクで作られた宿なんて無いって侯爵が仰ってました。それだけでも皆さんの提示金額で俺は納得です」
そっか~。
「でもさ~、こんな辺境でこんな高級宿っておかしくない?」
「あのエレベーターが付いてるだけでも俺は高級宿で売り出していいと思います」
「私も同じです。お嬢様が製作に関わっているから材料費が恐ろしく少なく済んでいます。同じ物を普通に作るなら何年も掛かりますしその分人件費も膨れ上がります。完成したらその分も料金に含めなければ採算が取れません。お嬢様が悩む値段では、きっと回収できずにつぶれる事になるでしょう」
そっか~。
「まあ、高過ぎて人気が無いってわかってから値段を下げても良いんじゃないですか?」
マークの鶴の一声!
「じゃあ、そうしようかな」
お、侯爵が丁度こちらに来た。
「侯爵~!ご意見下さ~い!」
私の言葉で侯爵を確認した三人が起立をする。
「おお、どうなった? ルルー、すまんが儂にも茶をくれ。皆座りなさい」
私も倣って一斉に礼をし、着席する前にメモを侯爵に渡す。
「ふむ。無難じゃろう。本館はあと二割足しても良いな」
マジっすか!? え~!どんどん上がっていく! 恐い!!
「王も学園長も満足していたではないか。お前も言っていたじゃろう? 金を持ってる奴はドロードラングに落として行けと」
侯爵がニヤニヤしながらお茶を飲む。
他の三人は唖然としている。ん?
「もう既に、王がいらしていたのか・・・」
「だから道路整備を・・・」
「・・・まさかだけど、今の言葉、王に向かって言ったのかい・・・?」
「? はい、言いました。国王のくせにしみったれた事を言ったので、金を出せと、」
恐いっ!! この娘、恐いよっ!!?
セドリックさんとドナルドさんが抱き合い、ブライアンさんは魂が抜けかけた。
その様子を侯爵が大笑いし、マークとルルーはため息をつく。
・・・何で私、誰といてもこういう空気になるのかな~?
***
メルクの絵描き屋も開店。画材はクレパス。
とにかくメルクの描くスピードが尋常じゃなく速い!
B5サイズのキャンバスに、一人五分で色まで塗り終わるって、凄い!
布も使うわ、手も使うわで、描き終えるとメルクがとにかく汚ない。いや、色んな色が付くから綺麗なのか?
クレパスなので写真よりは絵らしくなるけれど、やっぱり写実的なので侯爵たちは驚いていた。
人物の背景に遊具もちょろっと描いてくれるので、遊んだ記念にとバンクス子爵がお買い上げしてくれた。
それを見た人たちが休憩がてらに注文していく。
わ。何人待ちですって看板必要かも。
それにしても、メルクは楽しそうだ。鼻歌まじりで描いている。
いつもはおどおどしてるのに、キャンバスに向かっている時はモデルのお客にも微笑んでいる。
あ、メルクの後ろに音楽隊がいてもいいかもな~。要議題っと。
そうそう、私らの絵は侯爵たちにも馬鹿ウケでした・・・いや、サリオン以外の絵ね。
おすまし私をホテルに飾れと笑いながら言われても、チラリともそんな気は起きず、屋敷の部屋にしまっておくことにした。
アンディには婚約発表したら持って帰って良い?と聞かれ、微妙な気持ちになる。だってあれ私と違う! ・・・まあ、婚約者だから絵姿は要るよね・・・。
何だかアンディもメルクに描いてもらうって言ってるし。
レシィにはタイトのが欲しいと言われて驚いた。真っ赤になって、すんごいボソボソ声で言うもんだから、何回も聞き返してしまった。
・・・タイトか~。身分的にもだけど性格的にも応援しづらい。アイツ、女の子の扱い雑なのにな~。・・・まあ、姫の周りにはいないタイプだろうし、初恋だろうし、可愛いから絵はあげちゃう!
私らの婚約発表でレシィは除外されているので、エリザベス姫もこのまま決まらなければ今回は除外されるようになるらしい。
王子の分だけでもいいんじゃね? 姫にはもっとじっくり時間をかけてあげて~。
画材は王都での購入なのだけど、この勢いで減っていくならもっと近場で調達したい。我が領の紙はまだまだ発展途上なのです。
と、ドナルドさんが、王都の画材屋にあるキャンバスはダルトリー領の物ですよと教えてくれた。運賃が抑えられるので王都で買うより値引きできます、だって!
是非取引を!! でも独占はしませんから! 他にも絵描きさんいるし!
セドリックさんは、これからカーディフ領で何を融通出来るか調べると言ってくれた。
ブライアンさんは、うちは野菜しかないと言う。とそこへ子爵がキラキラとしてこちらにやって来た。満喫されたようで・・・。
そしておもむろに、「ブライアン!子爵、お前に譲るわ!ワシ、ドロードラングで遊んで暮らす!」とのたまった。
ブライアンさんの目が光った。よし、うちは父を教育係として貸し出そう!と言う。ダンス以外は何でもいけるぞと言われたので本人そっちのけで決定。子爵は、ん?とニコニコだ。
うわ!ブライアンさんズルい! とセドリックさんが叫び、侯爵とドナルドさんが笑う。
あれ? もしかして人身売買になっちゃう?
子爵には給料だしますから!
売買じゃ無いから!
お疲れさまでしたm(_ _)m
今回も何とか投稿出来るくらいに文字数がたまって良かったです…
後半、セリフが多いですが、誰が誰か何となくわかればよいかな~程度にしかしてないので、読み辛かったらスミマセンm(_ _)m
まだしばらく迷走しそうです……何か!楽しいこと!思いつかない!ぎゃふん!
また次回お会いできますように。




