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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
10才です。
53/191

続続続16話 始動です。<陞爵>


案内されるまま重厚な扉の前に立ち、失礼しますと開けてもらう。

執務室なのだろう、その机に地図を広げ、眼鏡を掛けた王が手招きをする。


近寄った私を見ると不思議そうに聞いてきた。


「なんだ? 怒っているのか?」


「・・・何でそんな不思議そうに聞かれるのか、こっちが不思議なんですが?」


「何が?」


「伯爵ってなんですか!?」


「それくらいの地位が無いと、アンドレイとの婚約に支障が出るからだ」


「それだけの為に!?」


「そんな訳あるか。道路整備はお前に頼むのが一番速く済むだろう。お前のとこのあの大通りは良かったからあれでやってくれ。そうすれば領に遊びに行くのも少しは楽になるな!」


「それだけ!?」


「学園長の移動は一人分だし、アンドレイたちと休みが合わんし、俺だって遊びたいのに皆ズルくないか!?」


「いい年したオッサンが、遊びたいって駄々を捏ねてる!」


「お前がこっちに遊具を作らんと言ったのだろうが! 駄々を捏ねて何が悪い!」


「うわっ、開き直った! 公私混同!職権乱用!」


「俺だってサリオンを愛でたい!」


「あぁ、そういう事なら道路くらいいいですよ」


「よし!」


何事も無かった様に地図を覗きこむと、パンパンと手を叩く音がした。そちらを見ると、手を合わせたままのマークとルルーが困った顔をしていて、周りを見れば王のお付きたちが真っ青になっていた。

あ。前に領地に来た人たちは今日はいないのか。


「まずはお茶にしましょう?」


ルルーが苦笑しながらリュックから色々と出した。

ソウデスネ。

王付きの侍女に茶器を貸してもらってお茶を淹れるルルー。マークはハンクさんのお菓子をテーブルに出す。クッキー数種とチーズケーキ。お付きの人数も含めて侍女さんに切ってもらう。


立ったままで行儀が悪いけど、皆でいただきます!

私らはすぐに飲んで食べたけど、王は戸惑うお付きの人が食べてから口を付けた。

は~、今日もハンクさんのお菓子は美味しい!


「お嬢様、どこでも無礼講は駄目ですよ。皆さんが困るから」


ルルーが苦笑しながら言った。


「一応わかってるけど、伯爵にするって言われて動揺が酷くてさ~」


「うわっ、クラウスさん正解! 本当に伯爵って言われたんだ!?」


マークがお茶を噴く勢いで驚いた。


「そうよ! 謁見の間で暴れないで礼をしたことを褒めて欲しいくらいよ。びっくりしたわ・・・え、何? クラウスが何て?」


「アンディとの婚約は今日は言わないだろうけど、せめての釣り合い取るのに伯爵に陞爵(しょうしゃく)されるだろうって」


さすが元貴族。

親の不祥事があるからランクアップは無いと思っていたのに。約束はしてくれてたから男爵に残れるだろうとは思ってたけど。まさかだったわ~。


「伯爵と言っても今までと変わらんようにするぞ。僻地だしな。遠いのも人件費ばかりが掛かって面倒だ」


「王様、何で道路整備です? 幅広い道は軍事的に不味いのでは?」


ケーキを食べ終え紅茶を飲む王は何事もなく答えてくれる。


「確かにそれはあるが産業の発展にも道は必要だ。良し悪しは何にでもある。軍を進め易い道は攻められたとしても読み易い。悪い事だけでも無い」


ふむふむ。


「全てをお前の所に合わせる訳では無いが、途中の地域の発展も考えているのだろう?」


それはそうだけど、改めて聞かれると言い辛いな・・・

苦笑する私に、得意気な顔をする王。


「地域の発展は結局は国の益になる。ならば便乗しないとな」


にやりと笑う。

・・・国王なんて、我が儘なくらいで良いのかもしれない・・・


「婚約発表は皆まとめてやるから、それまでに造り終えろよ」


「え~。いつになる予定ですか?」


「姫の嫁ぎ先が決まらなくてな。あと二ヶ月はかかる予定だ」


「もうちょっと時間下さい」


「なんだ終わらんか?」


「どんだけの道のりがあると思ってんですか」


「あぁ、ちょっと来い。ここら辺にこういう感じで敷けば今までの道よりたくさんの領地に掛かるだろう?」


執務机上の地図を指しながら説明をしてくれる。


「ああなるほど~。ここら辺は民家とか少ないんですか?」


「無いはずだ。スラムがあるかもしれんがお前のとこで引き取れ。山賊、盗賊には懸賞金が出てる」


「やったーっ! ありがとうございます!」


「二ヶ月で終わるならドロードラングの借金をチャラにしてやる。キルファールが案外と貯め込んでたからな」


「・・・まじっスか」


「道路整備にそれだけの見込みがあるという事だ」


「やだ!王様太っ腹~! 整備した途端に簡単に攻め込まれないで下さいよ?」


「はっはっは! 俺だって戦は嫌だ面倒くさい。お前、俺の根回し舐めんなよ」


やっぱり周りは青い顔をしていたようだけど、私はそれに気付かずに王と整備場所の確認をし合った。





***





「じゃあ、行きますよーっ!」


ただいまドロードラング領のお隣さん、バンクス子爵領に来ております。ここの当主はうちのお祖父様と同い年の朗らかなおじいさん。

隣とはいえ奴隷売買には手を出さず、うちとのやり取りをバッサリと断っていた。ここら辺はクラウスがそう仕向けたらしい。


そんな付き合いでも私が産まれた時はお祝いに来てくれたようで、今回挨拶にお邪魔した時に「大きくなったなぁ」と泣きそうな顔で頭を撫でられた。


子爵によく似た次期当主の長男さん(推定40才)には胡散臭げに対応されたけど、王からの命令書と預かった地図を見せたら渋々と現場に案内してくれた。

まあそうだよね。何でこんなに王都からの戻りが早いのかとか、魔法が使えましてなんて言われたって胡散臭いだけだよね~。


バンクス子爵は呼び出されなかったけど、噂や情報収集で大まかに把握していてその確認をしてきた。長男さんはこんな小娘が爵位を持たされた事に不満なんだろうな~。


「この地図の様に道を作るのならこの方向だ。畑が少々あるが、まあどうとでもなる。カーディフ領まで真っ直ぐだ」


長男さんは憮然としたまま説明してくれる。子爵はその様子に困った顔をしていたけど、ちゃんと仕事をしてくれているので全然OKですよ!


ありがとうございます!とお礼をして、カーディフ領に向かってさっそく地面に正座をし両手を付く。

亀様、お手伝いお願い。


《うむ》


魔力を練る。・・・真っ直ぐ、真っ直ぐ。


《修正が効くように少しずつだぞ》


くっ、それが難しいんだよね~。でも他所様の土地だし失敗しないようにしないと。


まずは道筋に添って魔力を伸ばす。カーディフ領との境目だろうと思われる所でストップ。地上には教えられたように畑が少々被るけど、他は何も無い。

よし。


私を中心に半径5mが光り、整備される。そのままの幅でカーディフ領に向かって光と整備された道が出来ていく。

一度造った事のある物だから余裕がある。土魔法で雑草が生えないくらいに密度濃く堅めながらも水捌けも良いように。表面を綺麗にコーティングしつつ、雨や雪でも滑らない不思議仕上げ。感触としてはアスファルト。


亀様に指導されたようにゆっくり進みつつ、周辺の気配も探る。

バンクス子爵領も基本は長閑だ。

作物もうちと似たような物を作っている。

・・・バンクス領の野菜の方が美味しかったらちょっと悔しいな・・・


《サレスティア。集中》


は! すみません!

まずは道! 集中集中!


集中十分、カーディフ領までの整備完了!

シロウとクロウを呼び出し、一緒に来ていた土木班を何人か乗せてもらって不具合が無いかチェックしてもらう。

二頭を見送って振り返ると、呆然とした子爵と長男さんが。


逆側、バンクス領からうちまでの道も整備開始。こちらも十分で終了。


《よく出来たな》


ふぅ。亀様にそう言われたなら大丈夫かな? 一応、残っていた土木班メンバーが歩きでチェックを始める。うん、シロウとクロウが戻ってきたら追いかけるね。


「立ち会っていただき、ありがとうございました」


隣とはいえ交流を断っていたのを、突然、王の命令で来ましたなんて怪しいことこの上無いのにもかかわらず、こうして立ち会ってくれた。

王様すげぇと思うべきかお祖父様ありがとうと感謝すべきか。

・・・両方か。


子爵たちにはこれから改めて領としてのお付き合いをお願いし、王都までの整備を終えたらうちにご招待することに。


まずは、新生ドロードラング領を知ってもらわないとね!








お疲れさまでした。

何というか、ちょっとどうなの?という出来のまま投稿してすみません。

ニックさんとのやり取りは、書き直しするかもですが、筋としてはそのままです。

もう、びっくりするくらい浮かばず、マークで遊ぶことも出来ませんでした…まさかですよ…


また次回お会いできますように。

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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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土木作業とはいったい…ww
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