続続続13話 まさかのお客です。<当主>
「お前の騎士は強者揃いだな」
王がしみじみと言う。
そうですよ~、良いでしょ~、ニッシッシ。それが伝わったのか、王が苦笑した。
「確か、弟と領民が守られれば、両親を告発するのだったな?」
「はい」
それは変わらない望み。
「お前が断罪されても構わないとも聞いた」
「間違いありません」
クラウスが拳を握りこんだ。その片方を私の両手で包む。
「両親の罪は、二人だけではおさまらないと思っています。ドロードラング家が歴史から消えても仕方ありません。私も侍女たちを蔑ろにした記憶がありますので、共に裁かれることを受け入れます」
また、王と見つめ合う。
「・・・裁いたふりをしてお前だけを囲い込むことは、出来んのだろうなぁ・・・」
ぬいぐるみ亀様に視線を移して国王がぼそっと呟いた。できませんよ。
「後任の人選をお任せしてよろしいでしょうか」
ん?と眉を上げる王。
「できればラトルジン侯爵に後任をお願いしたいと思っていましたが大変そうなので、弟と領民と亀様を守ってくださる方であれば誰でもいいです」
王が学園長と目を合わせ、侯爵にも視線を向ける。
思案気に顎をなでる。三人で。
・・・コントか。
「居らんな」
王が言い切った。頷く二人。
「え!? どこかに一人くらいいるでしょう!?」
私の知らない貴族なんていくらでもいる。三人で考えたなら何人か挙がるでしょうよ。あまりにあっさりと言い切られてパニくった。
あ!
「クラウス!クラウスがいるじゃん! 駄目?」
隣を見上げると、侍従長の顔をしてにこりと拒否された。・・・なんという笑顔のバリエーション!
「クラウスは相続権を放棄して縁を切ってあるでな。ラトルジンとは関係無いことになっているのだ」
はあ!? クラウス笑ってるし!
いーやーっ!? ちゃんとした人が見つかりますように!!
「まあ、一人だけ心当たりはあるんだが、面倒でなぁ・・・」
面倒!? 面倒って何? ちょっと王様、誰それ?
「ああ! 頑固で、そのくせ発想が読めんしのぉ~」
学園長がそんな風に言うとは! その人やめとく? いやでも!
「いや、ここを任せるには適任だと思いますぞ。残念な性格ではありますが」
侯爵~!? 残念で面倒な人って不安しかない!!
クラウスは笑ってるし! ちょっと、次に世話する人だからね?クラウスが大変になっちゃうよ? わかってんの!?
「サレスティア・ドロードラング」
「はい!」
「そなたを、ドロードラング男爵家当主と認める」
「はあ!?」
ちょっとパニくってる時に思いもよらない事を言われたので、素で返してしまった。
「帰ったら正式な文書を出す。捨てるなよ?」
え!? え!?
「お嬢よ、女として残念な顔になっとるぞ」
「そんな顔をすると年相応にみえるのぉ。ほっほっ」
ジイサンどもが笑う。 え!? だって! 残念で面倒って・・・
ぶふっ
隣の人が私の頭の上で噴いた。見上げると同時に向こうを向く。・・・肩、震えてますよ、クラウスさん。
「サレスティア」
王も笑いを堪えたような顔をしていたが、目が合うと真顔になる。
「お前の両親は許されん。お前は覚悟を決めていたようだが、お前たち三人が刑を受けたところで足りん程の証拠がある。関わった者全てに罰がある程の証拠がな。お前の罪は何だ? 子供の我儘など全ての家で行われている。それを取り締まると国から子供が居なくなってしまうぞ?」
え。
「領地にやられたお前は、そこまで義理立てる程に可愛いがられていた記憶はあるのか?」
・・・無い。だから、告発に躊躇いは無かった。
「お嬢様が侍女を要らないと言った時には、屋敷の侍女は皆奴隷だったそうです。たまたま丁度に売られたのでしょう。先程、ヤンが保護したと連絡を寄越しました」
クラウスに張りついた。顔を押し付けて、服を皺が残るほど握りしめた。
ありがとう
クラウスの大きな手が私の頭を撫でる。
「どう見てもお前を此処に置くしかあるまいよ。理由としてまずは玄武だ。国潰しの大精霊と知って、それを友と言える図太い神経を持つ人間を私は知らん。ちなみに私が一貴族だったとしても無理だ。断る」
「遊具の設計図を見せられたところで莫大な魔力が必要なことに代わりない。ワシだとてお主と同じものが造れるかギリギリじゃ。余裕で出来るのは眼鏡くらいじゃろう。無意識に使っているようだが、お主の魔力量はおかしいからな? 学園の教師連中は無理だぞ」
「お嬢の発想は儂には考えつかん。ここまで発展し、それに慣らされた領民など扱い難いだろうよ。無理じゃ無理ムリ」
・・・どいつもこいつもニヤニヤしやがって。そんなに私の泣き顔が酷いか!
「こういった理由から、お前はドロードラング領に置いておいた方が何かと平穏だという結論だ。まあ子供だが、お前の働きはそれに値する。男爵家当主を名乗る事を許す。特例だ」
反対者は此処に寄越す。お前の領地を見せれば腰を抜かすだろうよ。
悪い顔をして笑う王に淑女の礼をとり、すぐさま駆け寄った窓を開け放って叫んだ。
「アンディ!レシィ! あんたらの父ちゃん思ってたよりもいい男だったーーっ!!」
叫びながら窓から飛び出した私を、タイトが慌てて受け止める。そこに駆け寄ったアンディに抱きつく。
「ありがとうアンディ!ありがとう!」
戸惑いながらもうんうんと頭を撫でてくれる。フェミニストめ!
寄ってきたレシィも抱きしめる。
「レシィもありがとう!」
良かった~!とレシィも泣いてしまった。泣いても可愛いなんてどうなってんのさ!
それから、皆と木陰にいたサリオンにも抱きつく。
「サリオン!お姉ちゃんあなたと一緒にいられるって!嬉しいよ~!」
苦しくないようになるべくそっと抱きしめてたら、サリオンが光だした。
は?え!?何事!?
光はみるみる手乗りサイズに集まると、サリオンから離れ、ぽん!と音がしたら、地面に猫が降り立った。
背中に黒の縞模様のある、目が金色の、毛並みの真っ白な子猫。
二度見した。
だってその容姿!!
服の胸元をぎゅっとする感覚に目線を下ろすと、サリオンと目が合った。
サリオンと、目が、合った。
その小さな手が、私の服を掴んでた。
お疲れさまでした。
今回また一つの区切りになったかと思います。
…なったと思ったのですが、どうでしょう…あっさりしすぎかな~?
あ、「国潰しの大精霊」は感想からいただきました。亀様が急に格好良くなった瞬間でした(笑)
ありがとうございました!m(_ _)m
まあ、色々といただきながら話を書いています。まだまだお待ちしております(笑)
ではまた次回、お会いできますように。




