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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
9才です。
40/191

続13話 まさかのお客です。<国潰しの大精霊>


国王御一行は、子供のようにホバー荷車をあれこれと見て触り乗って騒ぎ、畑やら家畜小屋やら、作業小屋、保管庫、大蜘蛛飼育場、羊・馬

牧場を幼稚園児の遠足のようなテンションで通り抜け、亀様の所へ。


《お初にお目にかかる》


やはりどんな人でも驚いた時は口が開くようだ。


玄武・・・と学園長が呟く。

ハッとすると《通称だ、真名ではない》とすぐに聞こえた。

ホッとした。


「まさか、生きている内に幻の四神にまみえることができるとは・・・」


《我も今回は人間と関わる事が出来たのでな。末長くよろしく頼む。せっかく此処まで来たのだ、時間の限り寛ぐと良い》


おお!亀様があからさまに釘を刺した! 

王と学園長がひきつった。


《そうだ、お前たちの護衛はどうする? 侯爵の屋敷ではサレスティアの視界に居なかったのでな、連れて来てはいるが領地の外に置いてあるぞ。ただの見学というならば合流させるが?》


「何故それを!?」


学園長が驚くので、ずっと抱っこしていた亀様ぬいぐるみを左右に振ってみた。それを見てハッとする学園長。亀様本体と見比べる。


「転移は、玄武の技か・・・!」


ハイ正解~。学園長、解読頑張って下さい。私にはまだ無理です。





四神。

青龍、白虎、朱雀、玄武。

水、風、火、土に属したそれぞれの魔物のボスを指す。らしい。

名前だけならば前世の兄がやっていた別ゲームのレアボスだったので、やられては騒ぐ姿を見ていて知っていた。四頭もレアボスって、レアじゃ無いじゃん。と思ったのは内緒。


まあ、ゲームだし。

王家は神の末裔となっているが、かといって一神教でもない。敬う一族ではあるが、その土地毎に奉られる神様はそれぞれにいたりする。

が、それにもあまり拘らない。宗教はかなり自由だ。


ちなみにドロードラング(うち)では祀る神様は特に無いけど、最近は私が騒ぐから皆もなんとなく太陽信仰だ。洗濯物が気持ちよく乾くからね! 晴れた方が作業が捗るし!

もちろん雨も大事。作物が育つし、水が確保出来る。風が無ければ季節も変わらない。雪だって、あの踏みしめた時の感覚は他には無い貴重な物だ。今じゃ年明けに領地あげての雪合戦大会が催される。


騎馬の民も草原なりの神様がいる。狼はその眷属だとかいう話もあるらしい。長い歴史の中で廃れることもある。でも、それによる祟りも特に無い。


てきとうなのか、おおらかなのか。

どんな世界も神様とは、人には計り知れない存在だと思う。



この世界での四神は特にレアではない。モンスターだから、何年かに一度の頻度で現れては討伐されている。まあ、被害は甚大になるので「神」と呼ばれ、現れるのは嫌がられているけど。


討伐の様子は、お伽噺やら劇になって語り継がれてる。よく聞く昔々~と始まるヤツだ。


ただ、土の属性だけはいないとされていた。

レベルの高い魔物は人語も話す。その人語を使う土属性の魔物が、己は玄武ではないと言う。


何故学園長が亀様を「玄武」と呼んだかというと、何代か前の学園長が討伐したその時の青龍が、玄武についての質問に、大きな亀だと教えてくれたらしい。たったそれだけ、代々学園長に引き継がれて行く資料に残されていたそうだ。


地面が揺れると国が消える。

かつて国のあった所は荒野に変わる。生き残りなど誰もいない。微かに残った魔力が土属性を示しただけ。

それは「気まぐれな国潰しの大精霊」の行いであり、「四神の玄武」とは別物だと思っていたと学園長は言った。


他の四神は討伐の記録がある。だから、被害はあるだろうが玄武が現れても討伐出来るだろう。

しかし「国潰しの大精霊」は無理だ。生き残りがいない。そして、被害が他の四神の比ではない。


国の端で地面が揺れたとの報告に青ざめたと言う。


報告は鳥で届き、三十秒程の揺れで収まったとのメモの到着がその揺れの日から五日経っていたことから、学園長は訝しく思った。

地面が揺れるということは、何処かの国が無くなっているということだ。そしてその揺れは七日七晩続くと伝承にはあった。


なのに何処からも、何の報告も無かった。

震動の発生源と思われるドロードラング領に、なぜか弾かれて入れないというもの以外は。


当主は奴隷売買に手を染めていたが、領地については何もしていなかった。無駄とも思える領地の収支報告を無理を言って王に見せてもらったが、この収支で経営を語るなという程の物だった。その貧乏領地に魔法使いを集めたという形跡も無い。傭兵を集めたというものも無い。

何も変わらない。


確か隣国とを隔てる山脈があった。それが崩れたのか?それが響いただけか、と一応の納得はしてみたが、領地に入れないというのは何なのか?


気にはなるが、平穏な毎日にそれにばかりを構ってはいられない。第一に自分は学園長であり、学園の生徒の教育を任されている。優秀な魔法使いはほぼ学園の教師であり、他は貴族お抱えなのだ。無理を頼めない。月に一度の偵察を騎士団から借り受けた兵士に頼んでいたが、魔力を持たない者でも目に見えない壁に阻まれるのは変わらなかった。


一人モヤモヤとしながら過ごしている内に王都で強大な魔力の動きがあった。大道芸広場。王城のすぐそば。

結局それも正体のわからない芸人一座のやったもので、花を咲かせて王都住民を喜ばせていなくなった。


隣国で活動する一座と知ったが、問い合わせてもやはり正体はわからなかった。


その答えが目の前にいる。


ラトルジン侯爵から預かったがよく解らんと、見たこともない魔法陣を見せられた。それも二つ。既存の物に似ていて細部が違う。

ラトルジン侯爵は魔力が無い。

その魔法陣の紙を持って侯爵家に行き、奥方の車椅子を見つけてしまった。


魔法使いは特別だ。その数を確保する為に世間をそう操作した。

だから無駄に気位が高い。他の職業に就く者を蔑む傾向にある。

この車椅子のように、魔法使いと職人の技が合わさる物は少ない。


目が覚める思いだった。


誰が作ったのか、侯爵はあっさりと教えてくれた。

お主まで届くとは、なかなか難儀な物なのだなと言いながら。

来月付き合えとも言われた。


国王に、そういう訳で来月休みを取ると言うと、自分も行くと言う。

休みは取れんが半日どうにかする。ラトルジン侯爵の所に行ったアンドレイとレリィスアが変なのだ。今までも無かった訳ではないが、最近意欲がありすぎる。


変だと思うならあなたは動いては駄目だろう。


お前が居るなら安全面は変わらん。


そんなやり取りを経て、当日に侯爵の屋敷に行くと、先に着いていた王子と王女が真っ青になった。

王女は泣き出し、兄王子に引っ付いている。

お父様が来た~!

本気で嫌がられている事に少し凹んだ様だ。撫で肩になっている。それを見た侯爵夫妻は苦笑している。


大丈夫だよ。お嬢はそんな事じゃ怒らないよ。そうだ、お父様と学園長には侍従のふりをしてもらおう。それなら問題ないよ。お祖父様の侍従ならお嬢の領地に何の権限も無いよ。


そう宥める兄王子の言葉に納得したのか、王女はこちらをじとっと見た。


その父は撫で肩のまま、その案を受け入れた。お嬢って誰だと呟きながら。









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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
― 新着の感想 ―
可愛い娘に、顔を見て泣かれてしまう父親…そんな事になったら、自分も泣けます
初めて感想書きます! 国王のなで肩設定がここで出てきてツボでした笑 お話すごく面白いです!ここまでは一気に読んじゃいました!ここからもガンガン読んでいきます!
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