2話 色々です。
感想、ありがとうございます!
どうぞ、広~い心でお願いします……m(_ _)m
「よっしゃあ! 出来た~!」
女子だけの服飾班専用部屋で、出来上がったばかりの物を掲げる私。
「これが、お嬢様の仰っていた・・・なるほど、機能的ですね」
「でしょ? 私はいいけど、皆は年頃なんだから絶対必要よ!もちろん女性は誰でも!」
出来上がった物、それは、ブラジャー!
平民の下着を見たときの私の衝撃をどう説明したものか・・・。男も女も紐付きトランクス。
ゴムが無いから当然だけど、生地は粗いし縫い目が雑だから長時間座ってるとお尻が痛くなる。更に女子はブラが無い!
いやいやいやいや。
そりゃ前世でも私の胸はささやかな物でしたよ。でも必要でした! 大事なのでもう一度。必要でした!
でも服ゴム的な物がないし、ゴムの作り方が解らない! 貴族用のコルセットなど言語道断! 何よりまだ食料の方が切羽詰まってたから後回し。布地だって、おしめに使うくらい柔らかい物を部分的に使いたいが、そんな物を買う余裕も無かった。
でもね。
食事をしっかり取るようになると、女子の体つきが気になってくるのよ! 侍女さんたちはまだエプロンがあるからいいけど、奥さんたちが!お母さんたちが!!
そうやって一人で焦っていたら狩猟班が良いものを見つけてきた。スパイダーシルクを吐き出す大蜘蛛を!
全長1~1.5メートルの姿に、女子一同子供全員男子一部が叫んだけれど、伸縮性のある布地が出来るとわかった私の顔に領民全員が戦慄した。失礼な。
で、まずはパンツを作った。ショーツね。
皆が使っていた従来の物に比べて布地が少ないけど、身に着けた女子はたちまち虜になりました。まあ慣れるまでは変な感じだろうけど、概ね好評。服飾班総出で製作。
そして試行錯誤の末やっと完成したブラ1号。小、中学生が使うスポーツブラのようだけど、悪くない出来。試着は似たような体格の侍女たち何人かに順番にしてもらった。
「なんか、楽な気がします。体を動かしてもずれないし、胸を固定してるはずなのに苦しくもないです」
よっしゃ! 即製作開始! これを着けてると年を取っても垂れないよと言ったら皆の目の色が変わった。・・・うん、ちょっと恐かった。
とりあえず心配事が一つ解決したので子供たちとお昼寝しようっと。まだ6才なんで。後は任せた!
***
「え? 物価が上がってる?」
本日は休息日。
作業をしない日を作って子供たちと遊び倒すことに決めた。
残念ながら今うちにいる子供たちの半分は孤児だ。皆で面倒をみているが当然偏りは出てくる。戸籍を整理した時に適当に養子縁組をする案も出たけど、ほとんどの子が親を亡くしたことをわかっている。
孤児出身のマークが、物がわかるようになったら決めさせた方がいいと言って、そのままに。それまでは寂しがって泣いた時はそばにいる誰かが抱きしめるようにも決めた。
まあ、私が常に抱っこされて寝てるので子供たちも大人に抱きしめられるのを喜ぶのだけど、なんか複雑。だって精神的には抱っこする側だからね私。本当なら。
現状、屋敷から独立できる家庭は無い。
大人側ではいっぱい遊んで相性を見ようって目論見もある。養子縁組はそれからかな。
で。私は現在何をしてるかと言うと、一応領主なので執務室で書類仕事中です。事務は嫌いじゃないけど私も遊びたい~!
と黙々やっつけてたら、クラウスが買い出し係を連れてきた。
屋敷の料理長ハンクさんと、なんと元傭兵だったニックさんの同僚ルイスさん。
値切りのプロを買い出しに頼み込んで護衛を一人付けたところ、見た目がかなり若いルイスさんは料理長の弟子にしか見えず、修行の為と言って聞き込みがしやすいと判明。食材に限らず、色んな話を仕入れて来てくれる。見てくれも人当たりも柔らかいのでとても傭兵とは思わない。仲良くなるのも老若男女問わない。料理長もコワモテだけどよく笑う人なのですぐ馴染む。早くも最強値切りコンビ出来ましたよ! 是非とも後輩の育成をお願いします!
うちは国の外れにある有名な貧乏領地だから監査もあまり来ない。それは良くない事だけど、その隙を利用して隣国に行商に行っている。王都より隣国のが遥かに近い。王都辺りの事は一応新聞で知ることができるから、注意をしながらそっち方面は放っている。
近いとは言え隣国とは山脈を隔てているので、街道を外れたところにバレないように荷馬車一台分が通れるトンネルを作った。
だって最短で5日の山道よ! 大変じゃん! 野菜も萎びるし。
トンネルを作る時は色々確認しなきゃいけないから一週間かけたけど、それが歩きでも一時間もかからず行き来が可能になった。トンネル偉い!
でも馬が暗い所を嫌がったので、光魔法で作った広範囲を照らせるランタンを持って一人が先導することになって、やっと解決。
大人たちもトンネルなんて炭鉱の坑道しか知らないからおっかなびっくりだったけど。私が率先して突っ込んだものだから諦めてついて来て、くぐり抜けた時の顔は冒険した時の様だった。ふっふっふ。
地震や地崩れが恐いので土魔法でとにかく固めて、トンネル表面を風魔法でコーティング。そんな使い方見たことねぇよと言うニックさんとルイスさんを無視して、槍も刺さらない状態にした。更に予防としてトンネルを出入りするときにナイフで削ってみて、刃が刺さるようなら通行止めとした。魔法だって使用期限があるだろうし。
さて。
「どこかで戦争でも始まるの?」
去年から国内外で干ばつや水害は無かったはず。病気が流行した噂もない。そうなると戦争くらいしか急に物価が上がる理由が思いつかない。
「隣国では二つ先の国々に巻き込まれそうな噂がありますね。うちには直接来なさそうですが、油断は出来ません。王都でどう思うかはわかりませんけど」
壁に貼ってある世界地図を指しながらルイスさんが説明してくれる。
「まだ噂なんで、物価が上がってると言っても一割もない程度です。隣国でも決めかねてる様ですが、備蓄は始めてるみたいですね。私らにも小麦なら今高く買い取ると言ってきましたよ」
ハンクさんも自身の意見を教えてくれる。
「ん~。噂から判断するって難しいわね。噂に上がってる二国はたしか昔から小競り合ってんのよね? ・・・今、ここに介入して得をする国ってある?クラウス?」
「無いでしょうね。国自体がどちらも小さいですし、手に入れたところでどちらも国土の半分が砂漠ですから」
「は~、砂漠か~、何も思いつかないな~」
クラウスがずばり言った事に、戦争を回避する何の解決策も砂漠の有効活用も思いつかない。
「ただ、ここの人間は機動力のある戦闘民族ですからね。取り込めるなら使い途がありますよ」
ルイスさんの傭兵らしい発言。なるほどね~。
「とりあえず領地の防衛を強化しよう。田舎で貧乏でも油断しないように。ハンクさんとルイスさんは買い出しの時の情報収集を引き続きお願い」
承知しましたと三人が礼をとる。
「じゃあ休憩にしますかね~」
と、ハンクさんが廊下に置いてたらしいワゴンごと、クッキーとお茶を持って来てくれた。
干し果物が出来たんで練り込んでみましたよ、だって! 杏子よね!やったーーっ!・・・うまーーーっ!!
大人たちが温い目で見ていたけど、美味しいものの前では気にしない!
大変美味しくいただきました。




