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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
9才です。
32/191

11話 ご招待です。


ちゅどーーん!シュシュシュシュシュ、バラバラバラバラ・・・

ちゅどーーん!シュシュシュシュシュ、バラバラバラバラ・・・


「・・・なんじゃこりゃあ・・・」


どこかで聞いたようなフレーズを侯爵が呟く。

隣にいる、お兄ちゃんことアンディと、妹ちゃんことレシィ、そして侯爵夫人にお供の人々も呆然としている。


そんなに不思議かなー? 作業としては楽なんだよー?

畑の土を噴き上げてー(ちゅどーーん!)、森から持ってきた腐葉土と乾燥させた雑草をみじん切りにして(シュシュシュシュシュ)土と混ぜてー、それを空気を含むようにまた畑にパラパラ戻す(バラバラバラバラ)。ついでに(うね)も作る。はい、出来上がり~。


本日の種蒔き部分を耕し終えると、待ってましたと子供たちが種を蒔く。種蒔きや雑草取りはやっぱり人力。私の腕がイマイチなので魔法ではかなり雑な仕事になってしまう。

畝の半分に種が残ってなかったり、雑草と一緒に畑を吹っ飛ばした時には落ち込んだ・・・いまだに吹っ飛ばすので練習も禁止になってしまった・・・


子供たちは競争しながらも丁寧に種を蒔いて行く。農業のプロのオッチャン、オバチャンが確認して、勝利者を決める。ここら辺厳格なのだけど、種蒔き作業だけの評価をする。普段が生意気だろうが乱暴だろうが、農作業への評価に影響しない。

そういう決まりを作った。


スラムの子達の自己評価の低さを鑑みての措置である。年長組はほぼ人格が出来上がっている。スラムでの生活が長いので自己防衛が強い。どうしても周りに対して攻撃的になりがちだ。もう敵はいないと理解はしているのだが、染み付いた習慣は早々抜けない。


無駄な自己防衛を発揮して落ち込む、ということがあったのだ。

それをマークに相談してきたのだから、マークの面倒見の良さに脱帽である。


口が悪かろうが仕事をきちっとするなら問題ない。乱暴だろうがそれだけで君の全てを否定しない。それを彼らが実感出来るようにしたい。


まあ、大人組の忍耐もかなりに鍛えられたようだけど、そこら辺は柔軟な年寄りが多くて助かった。

年寄りって頑固で不器用なイメージだったけど、やっぱりおおらかだし注意にも説得力がある。ありがたい。


前世のじいちゃんは私が思い描くヤンチャの原点だ。仕事もご近所付き合いもきちっとする人ではあったけど、どうなのってね・・・私の尊敬する人はばあちゃんですって作文に書いたわ~。


反抗期真っ盛りの子が一番になって、よくやったと撫で繰りまわされるのに文句は言っても逃げ出さない。やっと少しずつ笑うようになってきた。

年の功ってスゴいわ~。


「いいなぁ・・・」


お兄ちゃんがぽそりと呟いた。


「アンディもやる? 初心者だからチビ達の組に入ってね! おおーい!一人追加ー!」


え!?えっ!? と戸惑うアンディを無理矢理引っ張り、種蒔きの仕方を説明して、放置。オッチャンがよーいどんと声を張り上げた。慌てて動き始めるアンディ。隣のチビを見ながら見よう見まねで種を蒔いていく。拙いながらも中々のペースで進む。


「よし!頑張れアンディ!負けるなみんな!」


一番にはなれなかったけど、初参加で健闘したアンディを皆で撫でくった。髪の毛グシャグシャ王子。ははっ!





レリィスア姫の誕生会から半年。

その間に新年の挨拶にかこつけて再度家捜しをし、我が家の不正証拠はクインさんと王都に残ったヤンさんとダジルイさんの働きで現在までのは出尽くした。伯爵家、その他貴族についても、ラトルジン侯爵が裏付けを取ってくれている。騎士団に所属してる家もあり、捜査の人選に難儀したと愚痴られた。すんません。


キルファール伯爵含め、今は外堀を固めて逃げ場を潰しているところだそうだ。奴隷市場から縮小開始。対象貴族に気付かれないように用心深く誘導してるらしい。流石。


で、こちらの本命、サリオンと領民なのだけど、ラトルジン侯爵は自分の目で現状を確認してから決めると言うので、休日である今日、お越しいただいた。

無理繰り取った休みが二日とのことなので、もちろん亀様的移動である。馬車で移動なんて一月(ひとつき)かかる。


ついでにお兄ちゃんと妹ちゃんもお誘い。いつも頑張っているお兄ちゃんをいつかは連れて来たいと思っていたので、ついでって言うのは変だけど。


休日を祖父母と孫の水入らずで過ごす会、という名目で侯爵家に集まったところを、侯爵夫人に挨拶をしてから侯爵家の選抜メンバー侍従四名侍女四名も一緒にご案内~。


目を白黒させている十二人には、こちらで用意した服に着替えてもらう。領地見学はホコリっぽい所もあるから汚れても平気な服にしなきゃね。


今日のホバー荷車は、お客様仕様にしました! いつもの荷車にクッションを敷けば良しと思っていたら、侯爵夫人は膝を痛めたらしいと聞いたので椅子型の四人乗りを制作。乗るときは地べたで、乗り込んだら地上三十センチを浮いて進む。まあ、目線は従来の馬車と変わらない。三台連結したので全員乗ってもらう。侍従侍女たちも今日はお客様なので歩かせないよ!


それと、夫人専用の車椅子(車輪無し)も作った。私も車椅子は使った事がないので、車輪が無い分振動が少なかろうという想像しかできない。使ってもらって、夫人に聞きながらカスタマイズすることにした。これのお披露目は後で。



ジャジャン!とホバー荷車の登場に侯爵が大騒ぎ。こんな怪しい物に乗れるか!と叫ぶ横をすり抜けて夫人が乗り込んだ。お。


「こんな珍しい物に乗れるなんて素敵じゃないですか。時間が少ないのですから、文句があるなら歩いてついてきて下さいませ。さ、行きましょう」


振動の無い事に夫人は喜び、侯爵、他は戦々恐々としている。これなら夫人には車椅子は喜んでもらえるかな?


さて、いつもの護衛メンバーを従えて進んでおります。今日はモンスターが出るのはさすがに不味いので、森の見回りを強化。

おかげで豚どもは出なかったけど、大蜘蛛見学で皆さん真っ青になったので休憩を兼ねて食糧庫へ。有り得ない貯蔵量を誇る保管庫を見て侯爵の顔色が白くなってしまった。・・・あら?


最近ハンクさんが作るのにはまっているカスタードクリームのロールケーキとお客用の買い置きの紅茶で休憩。疲れた時は甘いもの!喜んでもらえた!やったねハンクさん!



休憩後は私の魔法を見てもらうのに畑へ向かう。そうして冒頭へ戻る。グシャグシャになって子供たちと笑うアンディに侯爵家の皆は目が点だ。不思議に思えば、夫人が教えてくれた。


「あの子は人見知りがひどくて、初対面の相手には絶対に笑ったりしないの。もちろん、社交として笑顔で接する事は出来ますよ。だから私たちはとても驚いているわ。・・・あんな風に笑うなんて・・・」


ふ~ん?あれ?迷子の時はどうだったかな?・・・あ~、だいぶ警戒してたかな。

オッチャン、オバチャンからチビッコにまで撫で繰りまわされて笑うアンディを眺める。あ、くすぐられてる。


・・・・・・私、彼が侯爵の孫って紹介したよね・・・?


「コラーーッ!!やり過ぎーッ!!」


「イヤだって、お貴族様に触ることなんてないから有り難くてね~」


いやいや、「王子」と「姫」だって、大人たちには言ったよね?子供らは緊張しないように「貴族の孫」で通そうって打ち合わせしたよね? 


「貴族にそういう御利益無いからっ! むしろ怒られるからっ! ってか私も貴族なんだけどっ!?」


「「「 ええっ!? 」」」


「・・・よし。お前らそこへ直れーーっ!!」


私の怒声と同時に子供たちが笑いながら散らばる。

呆然とする侯爵家の皆様を置き去りに、逃げる方も追う方もスケボーを駆使し、それこそ縦横無尽に動き回る。

だがしかーし! 私のはアンタ達のより出力上だからね!

五分で全員捕まえてやったぜ!フンッ!


すばしっこくなったなぁ・・・








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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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