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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
8才です。
31/191

続続続10話 誕生会です。<味方>


「何ということだ・・・。おい、この会談で儂に選択肢はあるのか?」


少女が目を丸くする。そうすると年相応の顔になる。こちらが憮然とすると、先程孫たちと戯れていたように笑う。


「もちろんです。ラトルジン侯爵様にとっての選択肢は色々あるように用意したつもりです」


「嘘をつけ。しゃあしゃあと抜かしおって。孫の機嫌を質に取られた爺には一択しかないではないか」


「ふふふ。申し訳ございません。こちらも命懸けですので手札は思い付く限り用意致しました」


「だが、今すぐ決着が着くわけではないぞ」


机の上の書類を睨みつける。


「承知しております。領地については一度いらしていただきたいと思っております。後任についても引き継ぎの立ち会いをお願い致します」


「・・・よく、儂を人質にしなかったな・・・」


「これからお世話になる方にそれは出来ません」


「見ろ、決定事項ではないか! 茶番か!」


「あら、貴族とは形式を重んじると教わりましたのに」


「全く、全く、正に、貴族らしく形式という名の茶番であったわ! 末恐ろしい小娘じゃな!」


やはり、にこりと微笑むと、少女は言った。


「よく言われます」




***




ラトルジン侯爵を味方にすることが出来た。

ホッとしながらも、やっと第一歩だ。


「お姉さん!」


ラトルジン侯爵とこれからの事を話し合っていると妹ちゃんが部屋に飛び込んで来た。息を切らせてほっぺがほんのり赤い、まあ可愛い~!


「こら、淑女の嗜みはどうした」


そう注意しながらもラトルジン侯爵は笑っている。ですよね~!可愛いですもんね~!叱りきれませんよね~!


「そんなことよりも、お姉さんのことはどうなったの!?」


「レリィスア姫」


ピシリと私がそう呼ぶと、妹ちゃんはビクッとなった。


「この部屋は今、ラトルジン侯爵と私の会談の場でございます。いくら姫様といえど知られる訳にいかない事もございます。入室なさるにはこちらの準備が整ってからになさって下さい。そんなこと、ではございません」


「あ・・・」


今度は羞恥で頬を赤くし、俯く。


「申し訳ありませんでした・・・」


そうしてラトルジン侯爵に謝罪した。うん、偉い偉い。あれ、侯爵が目を丸くしてる。あ、私が注意するのは不味かった!?


ノックの音に、開けっぱなしのドアを見ると、お兄ちゃんが苦笑しながら立っていた。


「入っても?」


「構わん」


ラトルジン侯爵が苦虫を噛んだような顔をして、お兄ちゃんを見る。


「話し合いはどうなりましたか?」


「何が話し合いじゃ。取り引きは儂の負けじゃ。まさか、お前がこういう事をするとはな。意表をつかれている内に良いように持っていかれたぞ」


「それは何よりで。こちらの思惑に乗っていただけましたか」


「アンドレイ、お前は何処まで把握しておるのだ」


「彼女がサレスティア・ドロードラング男爵令嬢であり、魔法を使える旅芸人であるということだけです」


そう、今回の事はお兄ちゃんは全てを知らない。教えない事を許してもらった。うっかりお兄ちゃんに何かがあったら大変に困る。解決したら全てを話すと約束した。良い方向にしろ、悪い方向にしろ。


「ごめんなさいお兄ちゃん。まだ全てを話せない。侯爵様に繋いでくれたのに」


もどかしい思いで言うと、彼は少し笑った。


「いいよ。僕なんかよりも遥かにお祖父様が動ける事は分かってる。レシィとお揃いのスカーフをもらったしね、話してもらえるのを待ってるよ」


む。前からちょっと気になっていたけど、


「それお兄ちゃんの悪いトコね。"僕なんか"なわけないでしょ! 今回私らがどれだけ助かったのか、全て終わったら説教だからね!」


お兄ちゃんの自己評価が低いのは絶対にあの従者のせいだ! 機会があったらやっぱりぶん殴ってやる!


「ええ~、お嬢の説教って恐そうなんだけど・・・」


「お嬢様のお説教を受けた子は必ず泣きます」


「ええっ!?冗談じゃないの!?」


クラウスの一言に青い顔になるお兄ちゃん。ニヤリとする私。お兄ちゃんはラトルジン侯爵にすがった。侯爵の隣に大人しくいる妹ちゃんに抱きつく。


「お祖父様! 僕の安寧とレシィの交友の為に色々本気でお願いします!」


その行為で、侯爵に対してどれだけの信頼をしているかわかる。

良かった。お兄ちゃんが信頼できる人がいて。その大事な人を紹介してくれてありがとう。


「わ、私、さっきお姉さんに注意されたのだけど、それもお説教されるの・・・?」


泣きそうな顔でお兄ちゃんに訴える妹ちゃん。

・・・ぷっ

二人を見て、私を見る侯爵。困ったような呆れたような顔をして、ぽつりと言う。


「・・・見ろ、儂に選択肢など無いではないか」


ぶふぅ!

優しいお爺ちゃんじゃん!

これで仕事させたら「鬼」なんて言われるんだ~。格好いいね!

って言ったら、


「元々、鬼と呼ばれたのはクラウスだ。年に一度の武大会で五年連続優勝して殿堂入りした上に、ハスブナル国との戦で無双したからな。戦場の鬼だの、剣聖だの、二つ名が付いた」


ぐるりとクラウスを振り返ると、「そんなこともありましたね」としれっと言う。

え、ちょっと、初めて聞いたんだけど! あ、そう言えばニックさんがクラウスは強いと言ってたような・・・剣聖!?・・・そんな存在が現実にいるとは!

「昔のことですよ」とにこりとする。

この!執事然としたクラウスが!戦場で無双!・・・カシーナさんの他にも怒らせてはいけない人が!なんてこった!


「ありましたね、ではないわ。真面目に仕事をしているだけで流石"戦場の鬼"の兄上ですな、等と言われ、いつの間にやら"財務の鬼"だ。儂は真面目に仕事をしただけだ!」


いやいやいやいや聞いてますよ、仕事ぶり。ちょっとでも怪しい書類は徹底的に追及して、不正を叩き出すまで終わらないって。見た目だって「文官も体力だ!」と言って鍛え上げ、ひょろひょろ集団の中のマッチョだそうだ。想像だけでもインパクトあるわ~。


「え、"剣聖ラトルジン"? 貴方が? え? お祖父様の弟? え?」


お兄ちゃんが呆然とクラウスを見る。


「そうだ」


本人ではなく侯爵が答える。ちょっと得意気なのが微笑ましい。

お兄ちゃんはだいぶ混乱したようで、うっかり口にした一言に私は大笑いしてしまった。


「呼び名と姿が逆じゃないか・・・!」


侯爵、撃沈。

は~、お腹よじれるかと思った!





別れ際、侯爵がそろっと聞いてきた。


「何故、儂を選んだ?」


「アンドレイ王子の推薦ですし、クラウスが、領地外で最も信頼している(かた)だと言うので」


「!・・・そうか。ふっ、兄離れの出来ぬヤツめ」


ふふっ。

今日一番の笑顔でした。









お疲れさまでしたm(_ _)m


新たなキャラ登場です。人間では最高齢でしょうか?(笑)

もっと厳格な人なら良かったのですが、厳格な性格なんて無理!そんなストックはありません……色々残念(笑)


ではまた次回、お会いできますように。


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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
― 新着の感想 ―
[一言] なんて素敵なお祖父様と孫達だ(*´ω`*)
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