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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
8才です。
23/191

続8話 弟です。<王都デビュー>


大きなリボンをつけて亀様を抱いて、歌姫sの後ろを歩く。


その後ろにはメイン護衛のトエルさん、ルイスさん。先頭はクラウス。ヤンさん、ダジルイさん、ザンドルさん、バジアルさんは人波に(まぎ)れての配置。ちびっこ達はカシーナさんと宿で留守番。マークは別行動。


大道芸広場は早い者勝ちらしく、申込みは必要ない。

さてさて。



花びらが、ヒラヒラと舞う。

そのことに通行人が立ち止まる。広場にいる人々も気づく。

子供が、あそこも花びら!と面白がっている。

そして、無造作に舞っていた花びらが、広場中央の噴水前にいる三人の少女の元に集まって、その足下に花の絨毯を作った。


伸びやかな歌が始まる。

厳かな歌は綺麗な和音を奏で、人々の耳に届く。

緩やかな旋律が心地いい。


歌の抑揚に合わせて少女たちの手が動く。

その手の動く先に花が咲く。

おおぉ!と歓声。

足元の花びらも花に変わる。

歌のフィニッシュに三人ともがサッと空に腕を伸ばした。


瞬間。

噴水の水が花に変わって、さらに勢いよく噴き上がり、広場中に花が降り注いだ。


わああああ!!


歓声が起こる中、広場沿いの食堂から店の人が飛び出してきた。恰幅の良いおっちゃんだ。


「ちょっと、ちょっと!困るよ! すごかったけど、これ、片付けてもらえるのかい!?」


「もちろんでございます」


クラウスがパチンと指を鳴らすと、全ての花が消えて無くなった。

呆気にとられるおっちゃん。そして、観客。


「幻ですので」


クラウスがにっこりお辞儀するのに合わせて、少女たちも同じように礼をした。



後から聞けば、広場開放以来の歓声だったとさ。

よし!





その夜。


『おじょう?』


「わ、お兄ちゃん? 良かった、使い方すぐにわかった?」


『うん。ちゃんと書いてあったよ。今日はすまなかった。随分嫌な思いをしたろう? ごめん』


ちょっと声が震えてる。真面目だな~。


「いいよ。それを言ったら正体を知らないことをいいことに私達の方は無礼だったじゃない。両成敗?」


『昨日僕たちは楽しかったんだ。両成敗は不公平だ。だから、ごめん』


「わかった。じゃあ、謝るのはこれで終わりね!」


『良かった・・・ああ!妹は今日からリボンをつけているよ。お母様や侍女たちもとても綺麗な色だって言ってた。量産出来るようになれば、いけるんじゃないか?』


「本当!? そういう情報スゴく助かる! そっか~嬉しいな~。他の色も試しているから、いつかそれも見てね」


いや~夢が膨らむな~。


『そうだね・・・』


しゅんとした声音。うん? あ、そうだ。


「ねえお兄ちゃん、頼みがあるんだけど。イヤーカフさ、そのまま持っててくれない? 一応うちの秘密道具だから誰にも内緒だけど。妹ちゃんは内緒の話はまだ難しい? 大丈夫そうならお兄ちゃん判断で教えてあげてね。そんでさ、たまにお話しようよ。この時間なら私は大丈夫だよ。どう?」


『え、・・・と、何で・・・?』


「あの従者の愚痴を聞くわ。あんなの愚痴らず我慢してたらおかしくなっちゃうわよ! もちろん話なんて何でもいいよ、お兄ちゃんが困らない話題なら。庭の花が咲いたでも、好きな物が夕飯に出たでも。そして良ければ私に助言をして」


『助言?』


「さっきみたいに、リボンの色が評判良さそうとかさ」


『・・・』


・・・あれ、何で無言? やっぱり面倒かな? 王子ともなると日常会話も気を使わなきゃいけないもんね~。


「もちろん、私を信用できないならこれっきりで構わないわよ」


『そうじゃない!・・・僕は、友人がいないから、楽しくないかもと思って・・・君の助けになれないかもしれない・・・』


「お兄ちゃん、面白い面白くないはとりあえずお話してみないことには誰にもわからないわ。私だって昨日は楽しかったのよ! そして私はいまだに淑女に程遠いって怒られてるような女よ」


『ぶっ』


「オイ。・・・ふふ。ね?難しくないわ。じゃあ私が友人第一号ね!」


『一号・・・』


「そうよ。これから増えるんだから! そうだ、記念に明日広場で花を咲かせるわ。街の方向を見る時間はある?」


『え?花?どうやって?』


「それは秘密!ふっふっふ」


『あ、えっと、昼はずっと部屋で勉強してる。昼食も自室だよ。ここからも街は見える』


「よし!じゃあ昼前にやるから楽しみにしててね! そうと決まれば明日のためにもう寝るわ。おやすみ、お兄ちゃん!」


『うん。・・・ありがとう、お嬢・・・楽しみにしてる。じゃあ、おやすみ』


「明日感想聞かせてね」


『・・・うん、明日』




「王子様って大変そうですねぇ・・・」


もう皆でベッドに入り、明かりを消そうかというタイミングだった。恋ばなで盛り上がってしまい、私は就寝時間を大幅に過ぎていた。もう十時くらいかな?

彼はこの時間まで一人になれないのか。支えるはずの従者はアレだし。

ルルーがお兄ちゃんと話すのに起きあがった私に肩掛けを掛けて、そのまま隣に座っていた。お兄ちゃんの声は聞こえなかったろうが私の会話から察したのだろう。皆、神妙な顔をしていた。


「でも、明日の演目が決まりましたね。巨大化は豆と花ですね!」


インディが楽しそうに言う。

ふっふっふ。そうね。やってやんよ! ちゃんと見なよお兄ちゃん!


「よし!寝よう!おやすみ!」


「「「 おやすみなさーい 」」」




***




今日のメインのちびっこたちが、白をベースにした揃いの衣装に、男児はバンダナ、女児はリボンをして、歌いながら手に持った小さい籠から花びらを撒く。元気な歌につられて観客も笑顔だ。

歌が終わると、子供達は豆の種を取り出した。それぞれ足下に置く。ジッと見る。しゃがんで見る。お客も見る。


ポン。ポポポポン!


芽が出たと思ったらどんどんと伸びていく。子供の高さを通り越してもどんどんと伸びていく。どんどんと伸びながら豆の蔓は太くなりながら絡まり大木のようになった。

有り得ないことを目の当たりにして観客は呆然としている。


その間も豆の大木は天に浮かぶ雲に届く程に育っている。もはや豆の先は見えない。しかし、伸びが止まったようだ。


ポン。ポポポポン。ポポポポポポポポポポン。


今度は豆の花が咲いた。大木に合わせた大きな真っ白い花は蔓のあちこちに咲き、観客を楽しませる。花の間から何本か細い蔓が降りてきた。そして、一座の子供たちを絡めとり、そのまま引き上げてしまった。女性からは小さい悲鳴があがる。と、花が萎み始め、大きな豆の房が現れた。房はみるみる膨れ上がり、あっという間にはち切れんばかりになる。


ドクンドクンとリズムを打つ房に観客がざわめく。


パァン!


弾けた房から飛び出したのは、大きなしゃぼん玉。

ふわふわと、ゆるゆると漂うしゃぼん玉に、先ほど絡めとられた子供たちがそれぞれ入っていた。

子供たちのしゃぼん玉はゆっくり降りてきて、地上一メートルの所で割れると、子供たちは上手に着地をし、一列に並んでお辞儀をした。


大きな拍手が広場に響く。すると、まだ空中に漂っていた泡は、陽の光を受けて虹色に輝きながらゆっくりと大木を回りながら上昇していく。

いくつかが、大木にくっ付くと吸い込まれるように消えていく。


そこから花が咲いた。やはり考えられない程の大きな花だ。

大木から芽を出し、育ってそして花を咲かす。

また別な泡が吸い込まれると、今度は違う花が咲く。

そうしてどんどんとたくさんの、色とりどりの花が空高くまで咲き、大きな花束の様になった。




『お嬢?』


「お兄ちゃん! どう、見えた?」


『うん、見えた! すごいな、こんな派手な花束見たことないよ!』


「ふっふっふ。お祝いは派手にしないとね!」


『ありがとう・・・嬉しいよ。お嬢たちが隣国で有名な旅芸人一座か。魔法を使うというのは本当だったんだ』


「え! 知ってたの?」


『有名だよ。すごい芸を披露するのにどこで公演をするのか全くわからない、観られたらとても幸運だって、囲いこもうとしても捕まえられないって貴族の間で噂になってる』


「ははっ! そうそう、上手く逃げてるよ」


『すごいな。あ、そうだ。大変な魔力の動きがあるって、王宮でも今大騒ぎだよ。おかげで僕は部屋に一人だ。今から兵士が広場に行くかもしれない』


「ぅえ!?面倒くさそうだから逃げる! 情報ありがと!またね、お兄ちゃん」


『うん。 またね、お嬢』


会話が終わると一座の皆がこちらを見てた。


「お疲れさま。急いで撤収よ!」


観客の誰もが花束を見上げてるうちにそっと宿に戻りました。

そして私らが宿に入った瞬間に幻は消えたとさ。


あ~、張りきり過ぎたーつかれたー、楽しかった~。








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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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