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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
8才です。
19/191

7話 攻略対象です。


何だか、ラブが多くなってしまいました。

苦手な方は、すみません!



5才の妹の手を引いて裏路地を歩く少年。

先程から大通りに向かっているはずなのにまったく辿り着かない。喧騒の大きい方に進んでるつもりなのに行き止まりばかりだ。


妹はさっきから泣いている。こんなに泣いていたらそのうち疲れてしまい、この子を背負わなければならなくなるだろう。

まさか自分の住む街で迷子になるとは。

なぜ妹の言うままに歩いてしまったのか。一所懸命に兄である自分の手をひく姿は可愛かったが、まさか従者から離れる程に素早く動いてしまうとは。


歩きやすい格好にして良かったけど、後から怒られるなぁと憂鬱になる。だから妹も泣いているのだろう。

まあ、二人一緒で良かった。一人だったら自分も泣いていただろうし。こんな小さな妹を一人になんてしていられない。


しかし困った。


と思った瞬間、角から人影が飛び出した。

慌てて妹を背後に庇う。


「あ、この泣き声は君か~、会えて良かった! 私迷子だから寂しかったんだ~。一緒にいてもらえないかな?」


角から飛び出した少女は、少年と妹に笑いかけた。





いやあ、裏路地って無駄に不気味なのよね~。何でかしら?

日中だからわりと明るいのに。いつも一緒の亀様がいないからかな~。


一人でうんざりしていた所に聞こえた泣き声を辿って行ったら、黒髪美兄妹を発見!ラッキー!こんなところで目の保養~!


とりあえず、泣いている彼女に保存リュックから木筒のレモネードを出す。まずは私が一口飲む。コップがなくてごめんねと渡すと喉が渇いたんだろうね、ゴクゴクと飲んだ。お兄さんにも分けてねって言ったら素直に渡す。・・・可愛い・・・。

あとは、干し葡萄入りクッキー。


干し果物作りはルルドゥとタタルゥに頼んだ。うちよりも空気が乾燥しているようで、出来が違うのだ。より旨い。仲良くなってて良かった!

葡萄は、トレント狩りのついでに見つけた物だけど、時期になったらまた収穫に行く予定。地主のない森で良かった!うっしっし。


クッキーを三人で食べて、やっと妹ちゃんは落ち着いたもよう。


「おいしかったです。ごちそうさまでした。おねえさん、ありがとうございました」


か~わ~い~い~! ちゃんと言えて偉いね~! オバチャン飴ちゃん持ってるよ~!

は!飴はまだ無かった。結構砂糖を使うから後回しお菓子に仕分けされたのだった。


「とりあえず、これから騎士団の詰所に行こうと思ってたのだけど、どんな場所にあるか知ってる?」


「どんな場所とは?」


「なんとか通りの道沿いにあるとか、街の東西南北のそれぞれにあるとか、知らない? 私ね、5才まではここに住んでたんだけど家の中にばかりいたから街の様子がよくわからないんだ」


少年はちょっと考えてみた。


「確か、アーラ通りに沿って、東西と中央の三ヶ所があったと思う」


「おお!やっぱり地元の人に聞くのが一番ね! で。今いるここは街のどこら辺なの?」


「・・・・・・すまない。僕もわからないんだ」


真っ赤に俯く美少年。・・・・・・なにこれ。誰の為のご褒美よ。ありがとうございます!


「そっか~。じゃあ誰かに聞けばいいね!三人で詰所を探そう! 私がはぐれると困るから、妹ちゃん手を引いてくれる?」


「うん! あ、はい」


言い直し、か~わ~い~い~! やっぱり貴族の子かな。いい素材の服だし、手はツルツルだし髪の毛も艶があるし。二人とも綺麗な髪。

ふと、妹ちゃんが私の頭を見つめる。


「おねえさんのリボン、キレイな色ですね」


「綺麗?嬉しい! このリボンはうちの職人さんがずっと研究してくれて、やっと染め上がったんだ~。褒めてもらえて良かった~」


そう。あの結婚式から服飾班と薬草班と騎馬の民から染織班が分離。ずっと研究実践で、更に美しく淡い色を染めることが出来た。もっと長いスパンでいつか出来たらいいね、なんてお茶を飲んでたら出来ちゃったみたいな勢いで進められました。


真面目っていうか職人気質っていうか、オタクだな、あののめり込み方。


まあ、こうしてどこぞのお金持ちのお嬢様の目に止まったから、かなりいい出来なのは保証されたかな。

今日のリボンは、淡いラベンダー色。スパイダーシルクだから少し光沢もある。私の様な子供が着けてもおかしくない。素晴らしい!


ただ、迷子防止用の為、デカイ! 編み目が服に比べて大きいのでフワッと軽いけどね~。興行で子供はお揃いで着けることになった。女の子はリボンとして、男の子はバンダナとして。目印があると見つけやすいし、イヤーカフを落としてしまうこともあるだろうしね。保険はいくらあってもいい。


「お兄さま。私もおねえさんと同じリボンがほしい」


「そうだね。帰ったら探してみようか。君のところではまだ数が少ないのだろう?」


「そうなの。どれくらい見込めるかの様子見だから少ししか持ってきてないの。私が勝手にいいよとも言えないし。私の連れと交渉してみて?」


「わかった」


妹ちゃんのじっと見つめる目にやられたので、綺麗な黒髪に合わせてみたくなってきた。


「ね?これで良ければ着けてみる? 似合いそうだよね~」


「え、いいの!?」


さらっとほどき、少年の了解をとる前に、デッキブラシで空を飛ぶ黒いワンピースの魔女みたいに結んであげる。

うわっ可愛い! 黒髪に映える~!

似合うか不安なのか、上目遣いでこっちを見る。だから!誰得!? ありがとうございます!!


「可愛い~!」


はにかむ美幼女。ヤバイ!失敗した!誘拐しちゃう!

しかし少年はさらっと、似合うねと言っただけだった。

え!?もしやこのレベルが都会の一般的なクオリティー!?

どんな魔窟だここは!!


「お嬢~、です?」


頭上から聞きなれた声がしたと同時に私の背後に影が立つ。少年の目付きが鋭くなり妹を庇う。・・・素早い。冷静だな~。同い年くらいなのに動きが洗練されてる感じ。

私では素人判断しか出来ないことは放っといて、振り返る。


「おお、ヤンさんだ。さすが狩猟班! お疲れさま、一番よ」


「何で目印の筈のリボンを外してるんですか。リボンを見て声を掛けたのに別人だから焦ったじゃないですか。言っときますけど、上からじゃ髪の毛の色なんて確認し辛いですからね」


説教は尤もだ。まだ見つかるまで時間がかかると思ったとか、この子の方が似合うと思ったとか、探す方には関係ない。


「ごめんなさい。浅はかだったわ」


「まあ見つけたから良いですけどね。なるべく目印は外さないで下さいよ」


「その人は誰?」


まだ警戒したままの少年が、ヤンさんから目を離さない。


「私の従者の一人よ。スゴく身軽なんだ~」


実は、迷子になった私を探す訓練をしてたということを話す。これは偵察の練習も兼ねている。

今回の選抜メンバーがどの程度出来るか、実際に都会ではどの程度通用するのかの確認も含めての迷子作戦である。最初なので建物には入らないというハンデはあったけど、夕方までかかると思ってたのに大分早かったわね。ヤンさんスゴいな。


迷子訓練だけ話したけど、信用してくれたみたいで少年は警戒を解いた。妹ちゃんがモジモジしてる。


「あの、リボン、ごめんなさい・・・」


もう何やっても可愛いな、チクショー!

いいのよ。私がいいよって言ったんだから。


「で?こちらのお子さんたちは、どちら様で?」


「迷子仲間よ。一緒に騎士団の詰所に行こうって移動中だったの」


へー、じゃあ行きますかと、ヤンさんは妹ちゃんをひょいと肩車した。


「何をする!?」


案の定少年が血相を変える。


「何って、このリボンが俺らの目印なもんですから、目立つように肩車ですよ。坊っちゃんでもいいんですけど、手を繋いで歩くには小さいお嬢さんじゃやり辛そうで。どうせズボンだし恥ずかしくはないでしょ? 詰所に着くまでお願いしますよ。それに、」


今度はヤンさんが少年を見つめる。


「やんごとない方々を見失ったと大慌ての人間とすれ違いましたので、少し目立った方がいいかと思った次第です」


少年が俯く。そして、小さな声でお願いしますと言った。

ニヤリとしたヤンさんは右手に少年、左手に私と手を繋ぐ。


「じゃあ行きましょうかね~」


「ところでヤンさん。私を肩車する案が無いのは何故?」


「お嬢を肩車したら真っ直ぐ目的地に着かないからですよ。寄り道ばっかりじゃないすか。キョロキョロし過ぎるから、お嬢を肩車すると肩が凝るんですわ。40才越えには厳しいんで、お嬢は抱えて集合ってクラウスさんとニックからのお達しです」


ぐぅの音も出ない!









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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
― 新着の感想 ―
[良い点] >オバチャン飴ちゃん持ってるよ~! 飴ちゃん文化が全国に広まれば良いのに、なぜか大阪のイメージが… >だから!誰得!? ありがとうございます!! 私得です!ありがとうございます!!ご…
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