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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
15才です。
185/191

続続続55話 怒涛です。<ざけんな!>


亀様の向こうから煙が上がった。正面にいる私たちからは、亀様の後ろ部分としか分からない。


あり得ない光景に誰もが動きを止める。


ドオオオオンン!


また爆発音。


そして、小さい何かが翳った。その影に別な影がぶつかる。


ガキィィィンッ!!


金属音は、誰かとマークが剣を合わせた音だった。

私は降ろされ、ケリーさんたちに囲まれたまま、アンディとクラウス、ニックさんに庇われた。


「その子を離せ!」


マークと切り結んでいる旅装束のたぶん男がこちらに叫んだ。


は? ()()()って誰?


ドオオオオンン!


あ!また! この男が今何かを仕掛けた様子はなかった。てことは、他に仲間がいる?

魔力展開をしなければ!


「全部で四人だ。うち二人は魔力量が多い。マークと打ち合っている男にも魔力を感じる。気をつけて!」


最後の気をつけては皆に向かってアンディが叫んだ。対応早っ。


どうやら他の三人は亀様の後方にいるようだ。狩猟班、騎馬の民が駆けて行く。


「くっそ!邪魔をするなー!」


「ここがドロードラング領と知っての行動か」


マークの声が低い。余裕がありそうだけど、相手の男の攻撃はまだゆるまない。


()()()()()がいるなんて! 早く倒さなければ世界が歪んでしまう!」


・・・は?


「世界のために、玄武を倒す!」


5才の時に戻って来てから今まで、ドロードラング領で私以外に爆発を起こしたのは、いつぞやの賊どものみ。


亀様が攻撃的な何かをした事はないし、ちょっと失敗した()()()で温泉が出た。


()()? 世界が? ()()


()()()()()()()


「玄武を倒して、世界を平和にするんだ!」




・・・・・・・・・ぁあんっ!?


「待てお嬢、とりあえずあの野郎はマークにやらせろ」


飛び出そうとしたのを押さえたのはニックさん。肩に乗る手は優しいが、アホ男を見る顔がひきつっている。

きっと私も同じ顔になっている。せっかくのドレス姿が台無しだろうけど、こめかみの青筋が浮き上がってる気がする。

いつもなら私を振り返るアンディとクラウスが前を見たままだ。あンの頓珍漢(とんちんかん)め!


『お嬢、サリオンと子供たちは無事だ。タイトもジムたちもいるしケリーさんの大蜘蛛もいるから、こっちは任せて』


ルイスさんから通信が入った。こういう時、女子供を優先に安全に現場から離すことにしている。元盗賊たちのドロードラング領自警団に、侍女たちも付いているなら安心だ。少人数に分かれての訓練もしてある。カシーナさんからの通信はないけど、夫であるルイスさんが何も言わなかったから合流済みだろう。

ありがと、よろしく!


『魔法使いらしき人物発見』


『こっちも発見ッス』


年末年始は王都勤務メンバーもドロードラング領に帰って来る。

ヤンさんとトエルさんがそれぞれに魔法使いを見つけたようだ。二人とも小声という事は相手には見つかっていない。


『もう一人は重戦士だな。ラージスが打ち合ってる』


てことは鎧を着ているのか。ラージスさんもパワー型だから相性は悪くはない。


『どうする? 捕獲か?仕留めるか?』


ちょっと楽しげなヤンさんの声。


()()捕獲」


『『『 了解!』』ッス!』


ラージスさんからも返答があった。

よし、これで向こうはOK。ご丁寧に一対一で相手してやることもないし、狩猟班と騎馬の民がそれぞれにサポートする。


さて、こちらに単身乗り込んできた頓珍漢男はまだマークとやり合っている。魔法を使えるかもしれないってのは面倒だ。小技(こわざ)しか使えないのか、一撃必殺なのか。魔法剣なら剣の強度が落ちるものが多いらしいからマークのパワーには長くは耐えられないはず。他に道具を持ってるのか?

その時はアンディとクラウス、ニックさんがマークをサポートするだろう。




亀様、大丈夫?


《少々驚いたが大事ない。あの程度の衝撃では我の甲羅には傷も付かぬ》


良かった~。


《心配をかけた》


ううん。こちらこそだわ。防げなくてごめんなさい。


《それは我の領分だ。サレスティアの結婚に浮かれすぎたな、ははは》




テレパシーとはいえ、今それを言うのかい亀様。

でも、うん。落ち着いた。


どこの誰が世界を歪ませるってぇのか、きっちり説明してもらおうかぃ!


「くそっ! さすがは、魔族の国! 簡単には、いかないか!」


はああああっ!?

このアホ男!


「魔族の国か! ずいぶんな言いようだな!」


マークの声に張りがある。マークはまだ余裕だ。


「四神が!二体も!いて、一緒に!暮らす、とか! おかしいだろ!」


一方のアホ男は、息が切れてきたようだ。

奇襲が失敗したし、アンディの探知魔法にかかったのが四人と人数もバレた。私の探知でも部外者はこの四人だけということは、援軍は無し。ただし飛び道具が来るかもしれないので、私はそっちの待機。


白虎の事も知っている。いやもう隠してはいないけども。


「それに! 嫌がる、女の子を、玄武の、花嫁に、しようなんて!」


「は?」


ぎゃあ!アンディから黒オーラが出た!


「彼女を、離せ!」


「彼女は僕の花嫁だ!」


アンディさん!今つっこむ所そこじゃないから! 黒オーラが噴出してるよ! 恐いよ!


そう思ったのは私だけじゃなかった。アホ男がゆっくりと前に出たアンディを見ておののいた。


「うわ! なんだコイツ!?悪魔までいるのか!?」


はああああっ!? アンディによくもそんな事言いやがったなこの野郎!!


「待て待てお前ら」


ニックさんがまた私ら二人の肩を掴む。


「せっかくの新郎新婦が前に出るな。大人しくしていろよ」


「だってニックさん!あいつアンディを悪魔って!」


「どう見てもお嬢の(つい)は僕でしょう・・・!」


《はっはっは》


「亀様、今は茶化さないでくださいよ、落ち着かねぇから、コイツら」


《成人したと言ってもそうすぐには変わらんなぁ。はっはっは》


頭に血が上った私たちをよそに、笑う亀様と呆れたニックさんとでほのぼのとした空気になっていく。



が。



ドゴオオオオオゥンン!!


ドガァアアアァァンン!!


《ぐおっ》


「亀様!?」


さっきよりもより大きな爆発音と雷が落ちたような音がし、亀様の目が見開いた。

まずい!


「よし!じゃあ俺も!」


マークに押されていたアホ男がニヤリとした。

と同時に全身が淡く光り、見る間に眩しく輝き出す。


眩しさにマークがアホ男から離れた。

何これ。アーライル王家の魔法も光るけど、こんなに強くはない。


光るという事は魔法なら浄化系ではある。色々と派生はあるけど、ミシルがハスブナル国で使ったものはかなり強い。

あの時もミシルは光っていたけど、それよりも強く光っている。

魔物の亀様を浄化しようとしてる?


「俺の命よ! 世界のために輝け!」



命と引き換えの浄化系最強魔法。



このドロードラング領で、自爆?


いつも、いつも私たちを助けてくれる亀様を、


人は面白いと、いつも見守ってくれてる亀様を、


農作物を一緒になって悩み育ててくれてる亀様を、


私らが必死に守ってきた土地で、


たとえよそ者だろうとも、その血を流そうなんて、



「っざ!っけんなああああっ!!」



まとめられた髪が一気にほどけベールが飛んでいった。血が逆流するのに合わせ髪もドレスの裾もうごめく。


そんな魔法発動させるわけにはいかない。

右手にハリセンを具現化。もちろん金色。


アホ男がこちらを向いて青ざめた。



しかし。



「きゃああああっ!」



私らの後方、子供たちが避難しただろう方向から、悲鳴があがった。












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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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