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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
15才です。
184/191

続続55話 怒涛です。<今日はむり~!>


二人で一歩ずつ、亀様の像へ近づく。


ふらついても、アンディががっしりしてるので誰にもバレていない。はず。


出会った頃は、遊んでいる間に何度も一緒に転げたのに。

いつから倒れなくなったんだろう?

身長も同じくらいだったのに。

いつから見上げるようになったっけ?


声も低くなった。

剣も上達した。

王城での仕事も忙しい。


私の、旦那様になるひと。


(ようや)く、だな》


像の前に止まると、今度は亀様の楽しげな声が。


「はい」


穏やかにも楽しげに応えたのは、アンディ。

なんか二人だけで通じ合ってるし。


「なあに? 今日の事を知らなかったのは私だけなの?」


そう言うと亀様の他にも笑い声が聞こえた。え、子供たちも知ってたの? うわぁ、気づかなかったー!


《ドロードラングからの、サレスティアへの成人祝いだ》


成人祝い?


「僕のわがまま()聞いてもらったんだ」


アンディのわがまま?


「珍しいね?」


そうでもないとアンディは笑った。


「公式の結婚式はまだ先だけど、お嬢が成人するのを、結婚できる歳になるのを待ってた」


いつから。

アンディはいつから、こんな風に笑うようになったっけ?

毎度照れる。

好かれていることを実感できる。


「お嬢の、()()()()()()()姿()を早く見たかった。そして、ドロードラングの()もお嬢の花嫁姿を見たかった。意見の一致だよ」


公式の結婚式はドロードラング領では行われない。

アンディが祖父であるラトルジン侯爵家に入り、ラトルジン公爵領の当主となる。私はそこにお嫁に行く。


ただ、サリオンが成人するまでは後ろ楯としてドロードラング領に関わる。

それもあって今年、学園を生徒として卒業できる。


とにかくしばらくは忙しくなる。

まあ、ドロードラング領を運営する人材はほとんどが残るから、言うほど私が忙しくなることはないとは思う。


気兼ね無くドロードラングで無茶ができる、最後の冬。

そして、成人しての最初の冬。


じわじわと、温かくなる。

じわじわと、実感する。


「・・・嬉しい・・・」


ベール越しの景色が揺らぐ。


《まだ泣くな》


亀様の楽し気な声に、逆に涙が溢れて決壊寸前。

無理だよ亀様。

だってこの結婚式は。


うちの侍女たちが全員で私の結婚の準備をする最初で最後の機会。

カシーナさんが私にベールを取りつける事のできる最後の機会。

こんなに近くで、皆が私をお祝いしてくれる最後の機会。


考えないようにしていた機会。


だっていつかは離れる。分かってる。だけど。

寂しい。寂しいよ。離れるのは寂しい。

だから。


今日の。この日を。迎える事ができて。


嬉しい。


ありがとう。


いつも思う。ありがとう。

生きててくれて。

出会ってくれて。

私のそばで生きてくれて。

ありがとう。



だからごめん。


「む~り~ぃぃ! うあああああ~ん!」


泣かずにいられるわけないじゃん!




豪快な泣きっぷりに、会場大爆笑。


繋いでくれたアンディの手もちょっと震えてる。おい。


カシーナさんとルルーがベールをまくって顔にタオルを押しつけてきた。おーい。



でも、笑ってしまう。


いつも通りの事に、なかなか涙が止まらなかった。








《そのままで良いという事なので始めるぞ・・・ふっ!》


本物の亀様のもとへ会場ごと転移しての仕切り直し。


私がひぐひぐしてるだけでギリギリ厳かな雰囲気だった会場が、亀様のせいでまたくすくすとなってしまった。いやまぁ、原因は私ですけどもね。

化粧直しもしないなんてアンディに失礼なはずなんだけど、そこはほら、アンディさんなので、問題無しだそうで。そうですか。


でも、うん。私たちらしいか。


《では。二人の末長く続く婚姻を結ぶ為に、誓いの言葉が要る・・・新郎アンドレイ》


「はい」


スッとさらに姿勢を正したアンディ。大声ではないのによく通る。この声も好きだなぁ。


《健やかなるときも、病めるときも、どのような時も、変わらず、妻となるサレスティアに愛を捧ぐことを誓うか?》


「誓います」


いつもなら向かい合った新郎新婦の間に亀様像があるのだけど、今日は並んで亀様に向かってる。

ちょっとだけ。ちょっとだけ、私の触れているアンディの腕に力が入った。きっと、手を繋いでいたらギュッとされたんだろう。嬉しい。


《新婦サレスティア》


「はい」


さっきまで泣いていたので声が震えた。でも、カシーナさんに叩き込まれた姿勢は、今一番綺麗にできている!はず!


《健やかなるときも、病めるときも、どのような時も、変わらず、夫となるアンドレイに愛を捧ぐことを誓うか?》


夫となるアンドレイ・・・

本当に、本当に、この日が来るなんて。

隣に立って、その腕に触れているのに、何だかまだふわふわしてる。

誰かと結婚するなんて、想像もしていなかった。

婚約が決まった時もまだまだまだまだ先だと思ってた。

15才なんて、前世じゃあまだ子供。将来に向けてやっと準備を始める頃。


国を見据え、自分の役割を理解し、そのために努力し成果を出しているアンディは、まだ16才。


なのにこんなにも頼もしい。

まだ少し幼さの残るところがあっても、どうしようもなく頼もしい。

まいった。


「誓います」


《二人の誓いを受け取った》


亀様が一息ついた。空気が(やわら)んだ。


《今、この時より、二人は夫婦となった。その命の限り二人に幸があるように、誓いの口づけを》


・・・あ・・・そうだった・・・

やばい!めっちゃ緊張してきた!

いや、学園でも皆の前でそれらしいことしたけども! あれはほら!嘘ンコだし!


どうにか向き合い、ガッチガチになって冷や汗をかく勢いなんだけども、ゆっくりと上げられるベールからアンディが見えると、スッと落ち着いた。


「緊張するね」


整えられた髪のせいか、いつもよりも色気が。

でも、こそっと私の緊張を解いてくれる、いつも通りのアンディ。


「うん、緊張する。へへ」


緊張しても、格好つけなくていい相手。

ありのままの私を包んでくれるひと。


「アンディ大好き。あなたのお嫁さんになれて嬉しい」


思わず出た言葉は。

今までに見たことがないほどに、アンディを真っ赤にさせた。


観客大歓声。

口をパクパクとしたアンディは、両手で顔を覆ってしまった。耳も首も手まで真っ赤。


「ここでそれを言う・・・!?」


くぐもってよく聞き取れなかった言葉をもう一度と思ったら、アンディは真っ赤なまま手を離した。


()()()()!」


そうして、その両手は私の両頬に触れ、あ、と思う間に口づけられた。

触れるだけ。


触れるだけの誓いの証。


だけど、最強の四神の縁結び。


「今から、だよ」


照れくさそうな顔。

きっと私も同じ顔。


「はい」


涙が、また出た。


「泣き虫」


頬の手はそのままに、おでこをこつりとする。何度したっけ?

そしてこれから何度もするのだろう。


「なんとでも、言ってよ、もう、今日は、むり~!」


そう言ったら、ふわりと抱きしめられた。


「いいよ。あーあ。ずっと抱きしめていたいところだけど、今日は無理だなぁ」


「さあ!アンディ!お嬢を寄越しな!お色直しだよ!」


体重を預けようとしたらケリーさんの元気な声がした。そしてあっと言う間にまた担がれた。ぎゃあ!


「運営が雑過ぎないかいケリーさん!?」


「こういう事は手早く迅速に、だろ?」


そうですけども! 花嫁をじかに担ぎ上げるってどうなの!? 今までしてきた結婚式で誰もやってないよね!? そんな特別仕様いらないんだけど! 


なにより恥ずかしいんですけどぉぉぉっ!




「その手を離せーーっ!悪の使徒ーーっ!!」


ドオオオオンンッッ!!


《ぐあっ!》



亀様が揺れた。















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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
― 新着の感想 ―
[気になる点] アンディが祖父であるラトルジン侯爵家に入り、ラトルジン公爵領の当主となる。私はそこにお嫁に行く。 公爵と侯爵になっていますがアンディが王族なのでラトルジン侯爵家の爵位が上がると思って…
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