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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
13才です。
171/191

続51話 やった!です。<大きい子供>



ちなみにマークの準決勝の相手はテオ先生こと、テオドール・トラントゥール様!


ジアク領での抜き打ち襲撃の後にコムジに誘われ、休暇の全てをドロードラング領にてなぜか猛特訓した先生は、なんとマークと接戦だったらしい。そんな短期間でと思ったら、やっぱり元々センスがあったようだ。

(ちなみにこの時の先生の休暇は有給消化含め一ヶ月。王都からジアク領まで馬で一週間。ドロードラングから王都へは亀様転移)


コムジも結果を喜んでいたし、ニックさんにラージスさん、タイトまでがお祝いしようかと言っていた。

トエルさんが亀様に断ってから自分のイヤーカフを先生に貸していて、毎日の仕事終りにも先生はドロードラング領で鍛えていたとか。そこまでか。すげぇな先生。


何より喜んだのは上司の財務大臣ラトルジン侯爵。「文官も体力だ!」を信条にしていても、まさか部下が出場し、おまけに勝ち上がるとはつゆほども思っていなかっただろう。

勝ったのはマークだったけど「よくやった!」とテオ先生を労ったそうだ。


実は決勝戦でのマークの最後の相手はシュナイル殿下。

二人とも結構ボロボロだったけど、例年、決勝戦は回復せずにすぐ行われるらしく、ヘロヘロのまま開始。それでも目を見張る動きだったらしい。

が。テオ先生にだいぶに手こずったマークのスタミナ切れもあり、シュナイル殿下がギリギリ優勝。


「騎士団の面目躍如だな」とハーメルス騎士団長はひきつった笑いだったそうだけど。

まあね、準決勝に残った四人が騎士二人に田舎従者と文官だもんね。騎士団員もホッとしたろうね~。




で。

夕飯を終えた今、ドロードラングに帰って来たマークを囲んでたんだけど・・・


()()()()()に負けるなんて何やってんだテメェは!」


()()()だって強くなったんだよ! テオ先生があんな強くなかったらシュナイルには勝てたわ!」


「言い訳結構! テオ先生は文官だぞ、何を手こずってんだか。ダッセ!」


「~っ!! お前がテオ先生に色々教えたって先生から聞いたぞ!タイトこの野郎!」


「お前が苦手にしてる事は教えたが本当に対戦するとは思わなかったわ。それに基本はほぼコムジだからな!」


マークがコムジを振り返る。


「コムジ~~ッ!?」


「うわっ俺にも来るの!?」


「すっっげぇやり辛かったぞ! 原因はお前か!」


「いやだって、先生の体術が騎馬の民のものに似てるしさ、体術がすごいなら俺は相手したくなるわけよ。真面目だし覚えもいいしで教え甲斐があったなぁ」


「あったなぁ、じゃねぇよっ!?」


「ニックさんとラージスさんにザンドルさんだって楽しそうに教えてたよ?」


「うあっ! 文句を言い辛い!?」


「ごちゃごちゃ終わった事をうるせぇんだよマーク。そうそう、お前のためにある御方に特別特訓をお願いしてある」


またタイトを振り返るマーク。忙しいな。


「は? 聞いてねぇぞ、そんなの」


「言ってねぇよ優勝すると思ってたからな。俺らだって冗談のつもりだったが、今回の結果を知ってご了承くださった」


腕を組んで神妙な顔をするタイト。マークがはたと動きを止め、そしてタイトを窺う。


「・・・予測はつくが一応誰なのか聞こう」


「クラウスさんとシン爺だ」


「二人だと!?殺す気かこの野郎っ!? 二人がかりの上限最高位だろうがっ!? タイト!コムジ!」


「死ね! このくそ忙しい収穫期にせっかく送り出した武闘会でポッと出の文官に手こずるような従者は死ね!」


「あはは!準優勝なのに散々だね!頑張って~!」



・・・・・・なんて言うか、仲の良い大きい子供だな。

皆が笑って三人の追いかけっこを眺めてる中、呆れているのはルルーと私だけ。

だけど・・・ふっ!おっかしー!

やっぱりルルーと笑っちゃった。





***





「ちょっとサレスティア、どうにかならない?」


ビアンカ様の眉間にシワが寄っている。


「いやあ、こうなってる理由を聞かされたらなかなか止められないですよ」


「冬休みに入る少し前からこのようになられて・・・悪い事ではないのですが・・・」


いつもはキリリとした眉が下がっているクリスティアーナ様。


「分かるわクリス。悪い事じゃないけれど、こんな反動があると分かっていれば無理矢理相談を受けたのに・・・」


ビアンカ様の眉も下がる。


「無理矢理・・・そうですね、不甲斐なくも全然気づきませんでした・・・」


クリスティアーナ様が肩まで下げる。


冬休み。新年の雪合戦のため、皆さんドロードラング領に来てます。

そしてロイヤル女子部屋にお邪魔してるんだけど。


私ら三人の残念なものを見る目の先には、にやにやニヤニヤにやにやしているエリザベス姫がいる。

その左手には私もアンディからもらったものと同じ、レース編みの指輪が()まっていた。


指輪の送り主はテオ先生。わお。


武闘会で勝ち残ったテオ先生は、文官だからと騎士の叙任を辞退。代わりにとお願いしたのは姫にその指輪を渡す事。


ただのレース編み指輪だけど直接は渡せず、騎士団長と来賓で出席していた学園長の手を経て安全を確認されてから、エリザベス姫の手に渡った。


途端、姫ははらはらと泣き出した。


騒然とする会場。それに構わず、さらにボロボロと泣く姫。


「と、トラントゥール様、あ、ありがとうございます・・・ありがとう、ございます・・・」


指輪を大事そうに胸に抱え、どうにか淑女の礼をするエリザベス姫。

泣き顔を国民に晒すというあってはならない事態に、しかし誰も動けなかったそう。


姫の視線の先にいるテオ先生は片膝をつきつつも、姫を真摯に見つめていたから。

見つめ合う二人を誰も邪魔できなかった。


が、その空間を破った者が現れた。フリード国王である。


「トゥラントゥールよ、何ゆえこの様な事をした?」


姫はサッと青ざめ、父である国王を振り返った。テオ先生を見据える国王の姿に今度はテオ先生を見る。テオ先生は片膝をついたままの格好で顔を臥せていた。


「はい。・・・エリザベス姫に、私の思いを知っていただきたかったのです」


するりと答えたテオ先生を姫が凝視する。その顔色は真っ赤で困惑。

それを確認した国王が、テオ先生を見る。


「ん? 恋仲なのではないのか?」


「滅相もありません。畏れ多い事です」


淡々とした否定に国王が眉をひそめる。姫を見れば、エリザベス姫は頷いてテオ先生を肯定。


「恋仲でもないのに指輪を贈るのか」


国王の問いに、テオ先生は一拍置いてから答えた。


「優勝をしてエリザベス姫を賜りたく。しかし負けましたので、苦し紛れの告白です」


姫がテオ先生を凝視する。


「来年も大会はあるが?」


「・・・それまでに姫が嫁がれない理由がありません。婚約者のいない今が最後の機会かと」


ハスブナル国の王子との婚約解消はもう皆の知るところだ。やらせだった事は私らを含めた一部しか知らない。

友好の旗頭になったが相手国が攻めて来たために婚約解消。抑止力に成り得なかったという事で姫の評判は下がっていた。


分からんではないけれど、どっからそんな話になったのか一人ずつ殴りに行こうとした私を止めたのはエリザベス姫自身だ。


修道院に入れば何も問題はない。


そう言いますけどね、問題ありまくりですよ。恋心を押し殺し、王族として見事な振る舞いをし、不名誉な噂を信じられたまま世俗を絶ち切るなんて。あんまりだ。

そう騒げない身分なんだと分かっているけど、悔しい。

私らが分かっていればいいなんて、若い子が言わないでよ。


「領地が欲しいか」


「いえ。エリザベス様のみが望みです。家は関係ありません」


「・・・エリザベスを平民に貶めるのか」


「はい」


「・・・トゥラントゥールよ、エリザベスを最後まで守れるのか」


「・・・残念ながら、その保証は致しかねます。ですが、私の全てで出来うる限りの事はします」


「権力が足りぬ」


「・・・承知、しております」


いつの間にか会場中が国王とテオ先生のやり取りを見ていた。

テオ先生を見つめていた国王が、ふとエリザベス姫を向く。

そしてまたテオ先生に直る。


「だがまあ、現在国内の権力状態は安定してきたが、婚約解消の余波もあり、エリザベスが降嫁する先はまだ未定で選定もやり直しだ。本音を言えば外国にはやりたくないし、国内はどこに嫁いでも変わらん」


国王の砕けた言葉に思わず顔を上げるテオ先生。国王は目が合うとにやりとした。

会場中が呆気にとられる中、構わずに続けた言葉は。


「エリザベスは今まで一言もお前の名を出した事は無い」


テオ先生は、ゆっくりと再び顔を臥せた。


「まだまだ子供と思っていたが、正しく淑女に()()()()()。努力の女だ、平民になったとてどうにかするだろう」


また顔を上げたテオ先生と、困惑したエリザベス姫とを確認した国王は、


「お前たち二人が真に望むのであれば、この場での婚約を認めよう。さらにこの会場の三分の二の承認があればな?」


と、面白げに続けた。


この場に私がいたら、きっと叫んだ。


「いいぞーっ!国王ーっ!!」







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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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