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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
13才です。
162/191

49話 平和です。

それっぽくないですが、季節は夏です!w


《お嬢、ジョジダ》


ジョジダ? ・・・・・・女児だ!!


亀様が教えてくれた時は魔法の実技中だったので、うっかりと鍛練場を花畑に変えてしまった。

それに驚いた魔法科生徒が何人か暴発、または発動失敗。それを付いていた教師陣と慌ててフォロー。


「ごめんなさい!」


落ち着いてから皆に頭を下げる。


「いや、大きな術ではなかったので暴発も押さえられましたし、それ以外は花が咲いた程度でしたから。何があったんです?」


魔法科教師たちがそう言ってくれた。

季節感を無視した花々は綺麗だけど、さすがに壁までも花に囲まれると異様に見える。どうやら地下にあった種や壁の隙間にあった種を咲かせたらしく、香りがすごい。ポプリにしようとなぜかエンプツィー様が収穫している。


誰も怪我しなくて良かったけど・・・はぁ始末書だ。


「完全に私事です。領地の侍女長に子供が産まれたと連絡がありまして、」


「「「「「 カシーナさん!? 」」」」」


合宿組から明るい声が上がる。

昨日の夜に陣痛が始まったらしい連絡は受けたけど、私は何もできないし、ケリーさんとこの洗濯班はみんな産婆さんでもあるし、カシーナさんも妊娠中の健康面に問題なかったし、亀様も付いてるしで普通に仕事してろと言われてた。


《すまぬ。もっと気を配れば》


「ううん亀様。産まれたらすぐに教えてって頼んだのは私よ。授業中にそうなる予測もしていた私だけの失態。皆、本当にごめんなさい」


また頭を下げると戸惑うような空気を感じた。

ちょっと頭を上げて生徒たちを伺うと、皆の視線が一人の男子生徒に集まっている。

フィリップ・パスコー。最近私には大人しくなったが、安定の嫌味坊っちゃんである。そんな彼も全員に注目されるとビビるのか、ひきつった顔をしていた。私も見やれば彼はさらにひきつった。


「お、大きな怪我もなかったですし、次は無いように気を付けて下さい・・・先生なんですから」


おお、随分と大人しいコメントをするようになったなぁ。あ、いや、私が悪いのでちゃんと聞いておかないと。


「はい。気を付けます。すみませんでした」


本当、誰も怪我がなくて良かった・・・反省。





今日の業務を全て終わらせてからアンディとミシルも一緒にカシーナさんの元へ。

お産後の母子は、二、三日屋敷にお泊まり。希望があれば延長も可。産後のストレスは大変らしいから、せめてご飯は上げ膳で。

特に今回のカシーナさんは出産年齢としては高齢での初産なので、実は皆かなり心配していた。

産後の体調も安定しているようで本当に良かった。


「亀様ありがとう」


《我だとて見守っていただけだ。カシーナも子も、生命力に溢れていた》


こういう時に亀様がいて良かったと思う。亀様でもどうにもならない事があるとは理解してはいるのだけど、やっぱり安心感が違う。

それがカシーナさんの頑張りになったんじゃないかなぁ。


カシーナさんが休んでいる部屋の扉を開けた時、ルイスさんがタオルに埋もれた赤ちゃんを覚束(おぼつか)ない手つきで抱いていた。それをカシーナさんが愛おし気に見つめている。


「おめでとう。入ってもいい?」


出産後の面会は赤ちゃんが起きている時だけにした。赤ちゃんが寝ている時しかお母さんは寝られないから。少しでも休息を取ってもらって、これからに備えないと。


カシーナさんとルイスさんがにこやかに迎えてくれ、赤ちゃんを抱かせてくれた。軽い。小さい。可愛い。赤ちゃんの匂いがする。

アンディとミシルも順番にルイスさんが抱かせてくれた。


「名前は?」


「ルカリーナにしました。お嬢が受けてくれないから苦労しましたよ」


また赤ちゃんを抱っこしたルイスさんがニヤッと言う。


「名前は親からの初めてのプレゼントなんだから当然。私に名付けをさせたらえらい事になるわよ?」


「カシーナのたっての願いだったのに?」


「それでも。良いじゃないルカリーナ、可愛い名前だわ。きっと可愛く育つわね~、()()?」


「まだ嫁にはやりませんよ!」


ルイスさん気が早すぎだろ! 

皆で笑ってしまって、驚いたらしいルカが泣いた。

慌てたルイスさんがいそいそとカシーナさんにルカを預けるとピタリと泣き止む。すっかり母親の顔になったカシーナさんがよしよしとあやす。

真っ赤な顔で泣いたって、小さな声。

新しい命。


あなたもこの世界へようこそ、ルカリーナ。





***





「ドロードラングで二次会ですと?」


「ニジカイ?」


あれ、そう言わない?


「大きなパーティーの後で規模を小さくしての宴会の事です」


「ああ、そうね、そうなるのかもしれないわね。頼んでも良いかしら?」


「それは構いませんよ。何か希望があれば取り入れますが、ありますか?」


「雪合戦!」


・・・・・・ビアンカ様、いくらドロードラング領でも、春に雪は降らねぇよ? 





来春、ビアンカ様の学園卒業後すぐにルーベンス王太子殿下とのご成婚が決まった。

もちろん王都でパレードしぃのの華々しい結婚式を挙げる。そのスタッフメンバーに入れられなかったのでゆっくりその様子を見られると思うと今からとってもとっても楽しみである!


夕食を済ませ、寮部屋でミシルとルルーとマークとだべっていたら、ビアンカ様のお付きさんが来た。ビアンカ様にもイヤーカフを渡しているから使えばいいのにと呟いたら「(わたくし)どもを使うのも、ビアンカ様の仕事なのです」と苦笑されてしまった。なるほど、そーでした。


そしてお呼ばれされて、皆でビアンカ様の部屋にいるのだけど。


「そう、よね・・・雪合戦は無理よね・・・」


うわ、ビアンカ様めっちゃ落ち込んでる! 背筋よくシュンとしてる! ヤバイ! 

代案を急いで出さねばと焦っていると、先程のお付きさんがそっと教えてくれた。


「ビアンカ様のご両親がいたく雪合戦に興味を示されまして、ドロードラング様にご相談の運びとなりました次第です」


なるほど。

雪は降るけど積もる事はないバルツァー国。そこのお姫様であるビアンカ様はドロードラングでの雪合戦をとても楽しんでくれた。


村長と朱雀の結婚式の後のドカ雪で、またも国王軍VS王妃軍での決戦が行われ、前回に続き王妃軍勝利に終わり、ドレスが発注された。あざす!

王子たちは国王軍、その婚約者も含めた姫たちは王妃軍に組み込まれ、婚約者の分のドレス費用は王子持ちである。負けて払わされるのにアンディがニコニコなのが腑に落ちぬ。兄王子たちも悔しそうじゃないのが不思議。国王は六人分(王妃✖4、姫✖2)だからいつも悔しがってるんだろうか?

・・・あざす!


子供たちと一緒に雪まみれになって、さらに雪だるまもつくって、かまくらで芋もちを食べてといつもの事しかしてなかったのだけど、ビアンカ様は楽しんでくれていた。また来年も!という程に。


それをよっぽど面白おかしく国への手紙に書いたのだろう。なんたって青龍をも泣かせる文章を書く人だ。結婚式のついでに雪合戦が出来るか?という手紙が届いたそうだ。


・・・ご両親てさ、国王と王妃でしょ? 普通やりたがる?雪合戦。

うちトコの国王夫妻が変なのだと思っていたけど、そうでもないのか?


嫁いでしまえば頻繁に会う事は難しい。親といえどもビアンカ様はうちの国母になられるから、気が向いたから~なんて気軽には会えない。色々と手続きが要る。

雪合戦が最後の親子の時間になるのだろう。・・・ふむ。


「結婚式の後ではなく、その前の冬にご招待しますよ? バルツァー国は年末年始は忙しいですか?」


バッとこちらを見たビアンカ様。


「もちろん移動は亀様に頼みます。そしたら直ぐですし、半日程度の休みであれば雪合戦とその他を十分にできると思いますが」


「年明けの日の出までは夜通し騒ぎ、その後さらに二日間は静かに過ごすのがバルツァー国です。仕事初めは四日めからで、王家も民衆も同じです」


ふるふるするビアンカ様の代わりに先程のお付きさんがそう教えてくれた。あらま、うちより冬休みが短いじゃん。


「じゃあ、そこら辺で日程が決まったら教えて下さい」


お付きさんがにこりと「畏まりました」と言ったのを確認してビアンカ様を見ると、抱きつかれた。


「ありがと、サレスティア・・・」


そんなにか~。・・・そうだよね、まだ14才だし、王族とはいえ家族がそばにいて当たり前の年齢だよね~。

としみじみしていたら。


「これでお兄様に勝って絶対ドレス代を手に入れてやるわ!」


ふふ、うふふふふ・・・

というのを聞こえないふりでお付きさんを見ると、仕方がないなぁという顔で笑っていた。


は? 兄妹対決? それを見るのを? ご両親は楽しみにしている? はぁ?


・・・仲、良いんだ、よね・・・?










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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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