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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
151/191

46話 朱雀です。


【 塵が騒いだところで 何も出来ぬわ ふふははは 】


じりじりと髑髏に空いた穴はふさがり、また得意気に喋りだす。

そして、にゅぅぅ・・・ポン、にゅぅぅ・・・ポンとねっとりした感じで、黒い霧から黒光りする骨がまたたくさん飛び出す。


「ありゃ、矢が足りないな」


ルイスさんが前方を睨みつけながら言った。


「良いじゃねぇか。剣が届く所まで来たら叩き落としゃあよ」


同じくニックさんも目をギラギラさせながら言う。その肩には自分の身長と同じ程の大剣を担いでいる。どんな武器だよ。剣の形した鈍器だろソレ。初めて見た時は呆れ驚いた。


「出た。毎回言うけどね、誰もが自分と同じだけの(パワー)を持ってると思わないでよ」


「んじゃあ今度はお前が見学な!」


声だけ呆れるルイスさんにニックさんがやっぱり楽し気に返す。


「お嬢、雑魚は任せろ!予定通りさっさと本丸吹っ飛ばせ!」


ニックさんがスケボーに乗って青龍の背から飛び出して行く。

はい。シロクロ&白虎監修の元、空まで自在に飛べるスケボーになりました。領では私のだけだったのに・・・

シロクロの魔力を重ね掛けして、本人の血をプラス。気絶しても板から落ちない仕様。そして気絶する事があったら亀様転移。

そしてニックさんに続き、ラージスさんたちも各々武器を片手にスケボーで飛び出す。もちろん騎馬の民もスケボーを使う。嬉々として飛び出して行く戦闘班を見送る。


「見学って、そうもいかないっつーの」


そう言うと、ルイスさんはおもむろに三十センチの高さの壺を出し、それに一メートルくらいの真っ直ぐな竹ひごをごっそりと突っ込んだ。竹ひごには風魔法が掛かっている。さらに、ちゃぽんと音がしたので壺には液体が入っているようだ。


「俺らは魔力が無いけど、シロウとクロウの風魔法とミシルの聖水のお陰でこんなんでも武器になる。聖水が残ってて良かった」


矢じりも矢羽も無い竹ぐしのようなただ細い棒を弓に添わせると、あっという間に射った。それは戦闘班を大きく迂回してこちらに向かって来ていた魔物を貫いて昇天させた。

・・・まじか!


「ほお! やっぱダルトリー領の竹は使えるなぁ!」


ルイスさんそういう問題・・・? いやうん、ギラギラしてるなぁ・・・


「んじゃお嬢、こっちは任せて行ってらっしゃいよ。そんでカシーナに無事な姿を早く見せてやって」


ニカッとした笑顔にOKと親指を立てる。


「あんな生き生きしてるニックさんたち初めて見るや・・・」


「そうね、こんなに賑やかになるとは思ってなかったわ・・・」


マークとルルーが呟く。呆れてるけれどその目はキラキラしてる。()の師匠が生き生きしてると嬉しいのかなぁ。私にはよく分からんけど。


「ドロードラングの人たちって、なんか、凄いね・・・」


本当だねミシル。・・・いや私のせいじゃないから、彼ら元々ああ(・・)だからね!?

でもまあこっちは大丈夫そうだから、いっちょ行ってきますか。


「よし! ルルー、ミシルの事よろしくね!」


「お任せ下さい」


「ミシル、浄化を頼むね!」


「うん! 頑張る!」


「クラウス、マーク、行こう!」


「「 了解! 」」


アンディに手を伸ばす。


「アンディはまだ空飛ぶスケボーに慣れてないから、私と手を繋いでね?」


「うん」


スケボーには慣れてるし簡単に落ちない仕様だけど、空を飛ぶのはまた違うので手をしっかり握る。

そして一斉に飛び出した。


【 無駄無駄 ふはは お前たちなどに何が出来る ふふふはは 】


何ができるって? できる事をやりに来たんだよッ!!

目指すはハスブナル城。

その地下! 朱雀!


ぞぞぞぞぞと黒い霧が地上から髑髏顔に集まる。


【 ははははは (わし)の糧になれ 】


密度を増した髑髏顔が私たちを飲み込もうと大口を開ける。

その口の中は真っ黒。その漆黒の奥で何かが蠢いている。

キモッ!!


「思いきりどうぞ」とアンディがマークのとこに移動したのを確認してからハリセンを巨大化。上から下に両手で振りかぶった。

魔力を込めたその風圧で、嗤いながら縦に真っ二つになる髑髏顔。


「邪・魔!」


髑髏顔が割れた下の地上の黒い霧も割れ、綺麗な景色の向こうの方に一際大きな建物を見つけた。

赤い屋根。その建物を囲む巨大な塀に堀。


「あれがハスブナル城だね」


「思ったよりちょっと遠いっすね、クラウスさん」


「このスケボーならすぐですよ」


「よし。お嬢より、城の場所を確認!これから破壊する!」


『こちらミシル!了解です! こっちも準備完了。浄化を開始します!』


『了解。朱雀を確認次第そっちに行くぞぃ』


「了解! んじゃ私が突っ込むからクラウスたちは後ろの事をよろしく~」


速度を上げてハスブナル城を目指す。割れた霧がまたぞろりぞろりと集まり始める。

途端。光のドームが空を覆った。


【 ぐはっ 】


青龍、白虎、亀様を基点にした呪文強化の魔法陣に、ミシルの浄化魔法が注がれた、オリジナル浄化陣。ぞぞぞぞぞと蠢いていた黒い霧の動きが止まった。


国ごとの浄化なんて初めての事だとエンプツィー様たちベテラン魔法使いたちは最初は渋った。屋敷一つ浄化するとしても大変な魔力を使うし、上位魔法に区分される程度には難しい。というか浄化は適性に左右されるらしい。


だがしかし。今現在うちにはミシルがいる。朱雀を助けるためにあの特訓をこなしたミシルが一番に燃えていた。そして四神のうち三体もいる。しかも頼むとあっさりと了承してくれる。

それがベテラン魔法使いたちの探求心をフッと(すく)ってあっという間に鷲掴み。おっさんたちがワクテカですよ。


で。戦力が揃ってんのに何で一個ずつ相手せにゃならんのかということで、朱雀を助けるついでにハスブナルを浄化することに。人がいなくなった広大な土地なんて荒れ放題になるし、いつかどこかで無用な争いの原因になる。 


それに。自覚のないうちに巻き込まれて死ぬなんて。こんな無念あるか!


【 ぐはあっぁ 】


優しく眩しい光がじりじりと黒い霧を減らしていく。いつの間にか再生された髑髏顔はあまり薄くなってないようだが。

どれ。さっさと呪いの元に行くわよー。

黒い霧は髑髏顔の維持だけでなく、ご丁寧にも私らにも向かって来る。それをハリセンでなぎ払う。それでもうち漏らした奴らはクラウスとマークが。


「うへぇ!? 感覚があるような無いような!?」


「そうですね。変に腕に力が入ってしまいますね」


「よし、慣れて来たから二人とも僕から手を離していいよ。少しだけど浄化を付与する」


いやんもうアンディも何だかんだ色々とできる~。水系魔法が得意な人が浄化もできる確率が高い。唱えた短い呪文は初級浄化だ。でも助かる。付与された剣で黒い霧を払ったマークとクラウスが驚いた。


「おお!」


「なるほど」


「ミシルのように完全浄化は無理だけど、お嬢、後ろは任せて。このまま行こう」


ありがと!


ぐんぐんと近づく城に向かって魔力を練り上げる。城内にいるだろう人達は亀様が何とかしてくれる。何とかできなかったら私の魔法は亀様ガードの掛かった城に弾かれる。そしたら素直に城内に飛び込んで全ての人を連れ出した後に内部から破壊。

朱雀の姿を確認するまでの作戦。


スケボーの上で向きを変え、バッターボックスに立った野球選手のように構える。まあボールなんて飛んでは来ないけど狙う所は変わらない。瓦屋根タイプの城は大陸では珍しいけど、ドロードラングの建築部なら資料さえ残っていれば再現できるだろう。だから一旦破壊します!


「いっけえええっ!!」


振り抜く瞬間に風魔法が塊となってえらい勢いで飛び出していく。


ドッガアアアアンンッ!!


一瞬で粉々になった塀と城の上半分の瓦礫はそのまま風に乗って、城下町を越えて遠くへ飛んで行く。ついでに周辺の黒い霧も吹っ飛ぶけどこっちは浄化されていない。・・・チッ、一階部分が半分残ったか・・・じゃんじゃん行くよ~!


「ぅらああああっ!!」


女子の掛け声じゃねぇよって、うるさいよマーク! この方が気合いが入るの!


ドッガアアアアンッ!! ガガァアアンン!!


っしゃあ! 計三回で地上部分と黒い霧もだいたい綺麗になったので地下への入口と思われる階段の近くへ降り立った。


【 このぉお! 塵芥の分際でェ! 】


私たちの足下から黒い炎が巻き上がった。

熱い、のかもしれない。

よく分からないのは空気が痛い方が強いから。肌がチリチリする。なんなら少し息苦しい。

三人が私にくっついてくれて、わずかにホッとする。亀様ガードも万全なのに、敵も流石だわ。


オオオオおおヴォォォォおお・・・


・・・どこまで。


『お嬢!!』


「大丈夫よニックさん!亀様が守ってくれてる! 四人で無事よ!そっちは?」


『こっちは何て事は無い! ただ浄化は進んでるが思ったより遅い』


「んじゃ引き続きミシルをよろしく! もしもの時は魔力回復薬を飲ませてやって!」


『はっ、はっはっは!それでこそお嬢だ! こっちは任せろ!』


見上げれば、三人とも笑う。

顔色も悪いし汗も異常にかいているのに・・・頼もしい。


「聞こえた? そういう訳だからこのまま突っ込むわよ」


「まあ、動き(にく)いなら進むしかないなぁ」


「では私が先頭になりましょう。アンドレイ様、浄化の付与をお願いできますか?」


「あまり効力がなくて申し訳ないけど掛けさせてもらうよ」


「クラウス、私が先頭になるって」


「いやクラウスになってもらうんだ。お嬢にはまだ頼らざるをえないから、少しでも温存して」


アンディが真剣に言う。


「女だからって庇えないところがお嬢だよな!」


おいマーク。


「お嬢はどんな時でも可愛いよ」


お、えっ!?


「お嬢様はどんな時でも可憐です」


・・・クラウスって案外乗っかるよね・・・


「・・・うん、こういう時にこの手の冗談は()めるわ・・・」


そうしてちょうだい。地味にこっちもダメージ受けるから。

さて、気を取り直して一歩を踏み出す。

服や皮膚が焼けたりはしないけど、空気がひどくまとわりつく。水の中を歩いているようだ。そう思うと余計に息苦しい。


【 今少し 今少しで 我が悲願をォォ 邪魔をするなァァァ! 】


ぞぞぞゾゾゾゾゾゾぞぞ


黒い炎がうねる。圧が増す。息苦しい・・・だけど。


「ハアッ!!」


クラウスの剣が黒い炎を裂いた先に地下への階段を見つけた。着いた!

途端、黒い炎は上へ巻き上がる。ゴゴゴゴとまるで滝が逆流するような勢いで。たぶんその流れに私らも巻き込もうとしてるんだろうけど、亀様ガード発揮中! 四人で踏ん張る。

ふっと濁流が切れた。


グエェエエエェェェ!!


『お嬢! 黒い霧が鳥の形になったぞぃ!』


エンプツィー様の通信に空を見上げると、尾の長い真っ黒い大きな鳥が羽ばたいていた。

腹の部分が髑髏顔になっている。

・・・わかりやすく笑える程気持ち悪い。


その思いが通じたのか、黒い巨大鳥がこちらに向かって来た。


『お嬢!!』


「ミシル乱しちゃ駄目! 大丈夫!慣れてるから!」


黒い鳥は、きっとハスブナル国王が想定してたより小さいのだろう。だって髑髏顔が(わら)っていない。無言で私らに向かって一直線。

すでに巨大化しているハリセンを構える。三人には地下階段へ一時的避難をしてもらう。


思いっきり振り抜いてやる! 


さ、こーーい!









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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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[一言] 【 このぉお! 塵芥の分際でェ! 】←余裕が無くなるの速すぎで草 最後のシーン、思わずコンバット・マーチが脳内再生されましたw
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