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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
142/191

続43話 反省房です。<内情>


空腹ってそれだけでしんどいのに目の前で料理を食べられたら心折れるよね~。だからダイエットって続かないのよ。

ドロードラング式拷問です。ニックさんにはエゲツナイと引かれたけど、血も出さないし結果美味しいものを食べられるし良い方法だと思うけどな。


死にかけを急速に治癒すると目覚めた時にものすごくお腹空くんだってよ。チェンは死にかけじゃないけど、普通の人間は三食抜けばかなりツライ。応援のくせに緊張しすぎて決勝戦の日は前日から何も食べてなかったとかマジ信じらんないんですけど。


「ほれ茹で上がったぞ~」


「こっちも焼けましたよ」


マークは水餃子、ルルーは焼き餃子。ハンクさんは包み方担当、早い!


「うまー! 水餃子の皮もっちもち~! さすがハンクさん!」


「餃子を焼くなど、初めてだ・・・」


水餃子を食べたジーン王子が焼き餃子にも箸を伸ばす。


「水餃子とは皮が少し違うんですよ。私は焼きの方が好みですね!」


「はああ~、スープもおいしい~・・・」


器からゴクゴクとスープを飲んだチェンが一息つく。


「でしょう? 鶏ガラもそうだけどどの野菜を入れるかでまた味が違うのよね~。あと乗せの刻みネギがいいでしょ?」


「はい! あとこの胡麻油は? どこで作られたものなんです?」


胡麻油の香りをわかるのかい。スゴいねチェン。


「胡麻は騎馬の国よ。製造はドロードラング」


「は?騎馬の国? タタルゥとルルドゥじゃないのか?」


「え、それも知らないの? おたく(ハスブナル)のおかげで合併して一国になったわよ、とっっくに」


「あァ、そう・・・」


気まずそうにしても水餃子を食べるジーン王子。騎馬の国を知らないとは。まあ、短時間の王子教育じゃ省かれる事か。


「へぇ。タタルゥもルルドゥも胡麻は生産してたけど、こんなに美味しい油になるなんて。ジーン、騎馬の国との交易は見直した方がいいね」


「そうだなぁ」


お。チェンがそんな事を言うんだ? ジーン王子も普通に受けている。


「ほんと、あんたらどういう関係よ? 恋人?」


二人とも噴いた。


「んなわけあるかああっ!!」


「げふぉ!ごほっ!」


「口から飛ばさないでよ、汚いなぁ」


「お前が言うなっ!?」


「何よ別に良いじゃない? まあ一般的じゃないけど本気なら応援するわよ。ジーンなんてこんなに餃子やスープのいい匂いが漂ってるのに全然気づかない程焦ってたもんね?」


「「 違うからっ!!」」


二人揃って青い顔で叫んだから本当に違うんだわね。なぁんだ。


「従兄弟! いとこなんです!」


「あ!バラすなよ!」


「ジーンは好きだけど恋人は女の子が良いんだ僕は!」


「俺は違うみたいな言い方するなよ!? 俺だって女が良いわっ!」


「なんだ、つまんない」


「「 つまんなくないっ!!」」


ふふっとミシルたちが笑う。


「息ピッタリですね」


ハッとして少し赤らむ二人。


「で?どこまでが本当の事なのよ。食べながらでいいから、あ、よく噛みなさいよ」


そうして聞き出した事は。




ジーンの父親はハスブナル国の現王太子。母親は以前に侍女をしていたが、妊娠が分かり一人市井に下る。そこで世話になったのが侍女の姉夫婦の家。裕福ではなかったが貧乏でもなく仲良く暮らしていた。


「母は産後に体調を崩し、俺を産んで一月後に亡くなった。先に産まれていたチェンのおかげで俺は伯母に乳をもらえたんだ」


ジーンを引き取ると言う王太子を断り、そのまま四人で暮らした。独身の王太子のしかも男児など王宮に行けば明日の命も無い。

妹の忘れ形見をそんな危険にさらせるか!

愛する女との子供だ!

そんな言い合いをし、仲裁に入った伯父の取り成しで一家は王太子からの援助を最小限に受けることにして慎ましい生活をしていた。


国の隅で十五年間、王家の血を引くことを誰にも知られずにいたはずの家族は予想もしていなかった事態にみまわれた。


魔力保有者の招集。


チェンの父母は微力ながら治癒魔法が使えた。

かすり傷は瞬く間に治せるが大きな傷は血を止めるまでいかない程度のもの。

それでもその地区では重宝されていたし、夫婦は魔法を出し惜しみしなかった。


「指先に火を灯すのがやっとの人も国に連れて行かれたそうです。僕はそれすらもできなかったので誰にも魔力保有者と知られておらず、見逃されました」


戦争の爪痕はまだ微かに残っていたが、それぞれに癒し忘れる努力をしていた。

平穏。

やっと、その言葉を実感し始めた矢先の招集だった。


「連れて行かれて誰も帰っては来ない。でも、どうしているか残された誰もが分からない。父からの知らせは伯父伯母たちが連れて行かれた次の日に届き、また数日後にチェンの魔力に気づかれる前に逃げろと知らせがあった・・・だが」


暮らし慣れた家を離れられない。両親の安否が分からないならなおさら。幸いチェンに魔力があることを近所の誰も知らない。


「だけどある日御輿(みこし)に乗った爺に見つかった。俺の事もバレた」


あの目に捕まった。恐ろしくて恐ろしくて無様に震えて逃げられなかった。隣で同じに震えるチェンの握った手だけが温かかった。


お前が(わし)の血筋なら使い道がある

そこな小僧と共にと言うなら大人しくついて参れ

否は無い




「そういうわけで俺たちはアーライル国に来る事になった」


「そう・・・で?本来の目的は?」


「もちろん青龍と白虎だ。姫との婚約なんてどうでもいい・・・あとは、アーライル国の破壊」


こちら側に緊張が走った。

チェンが箸を置いて手を握りこむ。ジーン王子は落ち着いている。


「破壊? たった二人で?」


「はっ、あんな物(・・・・)を持たされても二人では無理に決まっている。だから俺たちは破壊のための目印だ」


こめかみがピシリと鳴った。


「・・・目印?」


ジーン王子が真っ直ぐこちらを見る。


「・・・あれ(・・)からどれくらいの時が経った? 遅くともアーライル国からの苦情がハスブナルに届き次第発射(・・)すると言っていた」


発射? 何を? 自分の孫を目印にして何を発射するって?

こめかみがピシリピシリと鳴る。


「俺の血が膨れる事で遠くにいても感じ取りやすいらしい・・・俺からはさっぱり分からんけどな」


「それ・・・僕は聞いていないよ?」


「・・・血の繋がりで俺がどこにいても爺には分かるらしい」


耳鳴りまでしそうだ。


「チェンだけは、どこかに逃がしたかったのに・・・」


「僕たちは兄弟だ。兄が弟を離すわけないだろ? まあ、何の力もないけど・・・」


「・・・ふん、たかだか一週間早く産まれただけで兄貴風吹かせるなよ、泣き虫」


「ううううるさいな! だから最後まで一緒だって言ったの!」


どこか諦めた笑顔の二人が切ない。


「何が発射されるの?」


「俺は知らない。うちにいるという朱雀も俺は見たことは無い。チェンも上手く感じとれないらしい・・・爺と会ったのもアレ(・・)を渡された時が最後だ」


血の飴。


「王太子は?」


「・・・父は、何も出来ない。対外的に生かされているだけだと言っていた。何度かは会えたが・・・ここのように檻越しだ」


「・・・僕にも謝ってくれました」


王太子の僅かな支援はそれが精一杯だったのだろう。

ジーンたちは本当に慎ましく生活していたようだ。父親への恨みもあまり感じられない。

チェンのご両親に会ってみたかったな。


フッと青いタツノオトシゴが現れた。

目を丸くする二人。私らも驚く。何だどうした?


《お初にお目にかかる。我は四神が一、青龍だ》


突然の事に声も出ない二人。変な()があいた。


《ん? ハスブナルの城で我のような気配を感じなかったか?》


ハッとしたチェンが目を瞑った。


「・・・すみません、よく、分かりません・・・」


十秒程皆が息を詰めたが、チェンはしゅんとした。


《ふむ。やはり朱雀の力はハスブナル国に行き渡っているのだな》


「「 え? 」」


《産まれた時からその気配の中で生きているのだ。気づかないのもおかしくはない》


《だが魔力持ちは効きが悪いのだろう。それ(・・)もあって招集されたのだろうな。まあ第一の目的は魔力の補充だろうが》


「「 誰!? 」」


急に声だけ参加した亀様に動揺したので、キーホルダー亀様をテーブルに乗せる。


「は? 亀が何だ?」


「玄武よ。黙っていたけど私はこっち。白虎は別なの」


《四神の一、玄武だ。朱雀の地からよく来た》


キーホルダー亀様のフレンドリーな対応にジーン王子は「はああああっ!? 玄武だあっ!?」と叫び、チェンは気絶した。








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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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