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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
130/191

続続39話 夏休みの終わりに。<ハスブナル国>


「・・・そんな事で嫉妬するようでは先が思いやられるな・・・」国王がぼそりと言う。


「ホホホ。あの大人しいアンドレイが成長したこと」王妃が扇子で口元を隠す。パメラ様、オリビア様も同じしぐさを。


「フフフ。我が子ながら頼もしいこと」マルディナ様も笑う。


「アンドレイって、サレスティアの事になると不器用(・・・)よね」エリザベス姫が息を吐く。


「お兄様がお嬢の事を誰よりも分かっている証拠ですよ!」レシィが胸を張る。


・・・何か、色々、言われているんですけども・・・


「今すぐ婚姻を結んでも良いんだけど?」


ボンッ!!


・・・顔の赤くなる音を、まさか自分が出すとは・・・マークとダンだけだと思ってたのに・・・

にこやかなアンディがちょっと恨めしい。


「な、なんだって、ここで、そういうこと、言うかな・・・」


あまりの恥ずかしさにアンディを見られず、俯いて小さな声で文句を言えば、ふふっと言う。


「だってそれくらい言っておかないと、本当に婚約者変更になっちゃうからね。・・・それくらい赤くなってくれればもう大丈夫かな?」


せ!性格悪っ!?

愕然と見上げると、アンディの顔もうっすらと赤かった。

うわ、珍しいものを見た!と凝視してしまったら、自分の顔も赤い事に気づいたのか、はにかんだ。


ぐはあっ!? 性格悪いって思ってゴメンなさい!! その攻撃は防げないっ!


更にダメージを負った私。


「休憩は終わりだぁ!!」


国王の突然の大声に正気に返る。


「そして王子は全員婚約者が決まっているのだから婚姻は上から順に執り行う!」


何をムキになっているやら、と王妃が扇の向こうで呆れてる。

まったく、こどもか。隣で侯爵があからさまに呆れてる。


「息子と言えど目の前で無駄にイチャつかれるのは腹が立つ!」


会議室の空気が更に弛んだ。

奥さんが四人もいる奴が何をほざいてやがる・・・




***




ハスブナル国が朱雀を捕らえているという()はアーライル国でも十数年前に把握していた。

だが、それが今回、真実であると証明されるまでただの噂だと思われていた。ハスブナル国が戦後は大きく動かなかったからである。




騎馬の国の出稼ぎ集団に混ざってハスブナル国に入国。ルイスは市場やらギルドやら時には作業をしつつ広い範囲で調べ、ヤンは貴族屋敷、ギルド、色んな場所に忍び込んだ。

同時に騎馬の民のザンドル、バジアル兄弟も仲間と共にハスブナルの周辺国でそれを手伝ってくれた。


大体の事はアーライル国でも調査済みの事だった。

ただ、ルイスとヤンだけでなく、手伝ってくれた騎馬の民全員が、ハスブナル国に入った途端に空気が淀んだと感じた。

天気は良く、日もよく射し、農地は豊かにも関わらず、水の中にいるような、何かが体に纏わりつく感触があった。

キーホルダーとしても付いて行った亀様が、予定よりも短期で調査を終えるように言い、ハスブナルを出るまでは命の危機以外は何も助けないと宣言した事で皆もその異常さを肝に銘じた。


一人で二、三人分の働きをする騎馬の民が一緒だったこともあり、ギルドで受けた農作業の仕事はほぼ終える事ができた。だから仕事が無いから~とすぐに国を出る事は不審に思われずに済んだ。

何かが追って来ることも無かった。


《役に立たず済まなかった》


ハスブナル国を出てしばらくすると亀様が謝罪をした。


「いえ。亀様が最初に釘を刺してくれたから油断せずに済みましたよ。命の危機には助けてくれるという約束もありましたし、全員が無事に出てこられて良かったです」


ルイスが軽い感じで返す。亀様は本当にウンともスンとも言わなくなってしまったので少しは不安があったが、全員がいい大人だし、何が今回の仕事かは理解していた。


ハスブナル国を出て亀様が話し出すまでは亀様に何かあったかと心配だったが。


「追っ手も無さそうなのでここで言うが、亀様が俺に付かなくて良かった。城の奥はエライ事になっていた」


ヤンが今回初めて息を吐いた。


《我が近づけば相手方に知られると思ってな・・・朱雀の確認は出来たか?》


「場所は把握した。城の見取り図も書ける。・・・だがなぁ・・・」


ヤンと亀様のため息が重なる。


「亀様もため息をつくとは・・・、まあ、想像通りだろうと思う」


ヤンが言い淀む姿を初めて見たルイスは、自身の想定以上の事があったのだと感じた。

他の騎馬の民も同じ思いになった。


《そうか。ならば、サレスティアには我から言おう》


その場にいた全員が、うわぁ・・・と思った。

最強である亀様が伝えるということは、亀様でないと抑えられない程にサレスティアが怒り狂うということだ。


「ち、ちょっとそれって、詳しく打ち合わせしておいた方が良いんじゃないですか・・・?」


恐る恐るルイスが進言する。


「そうだな。それには賛成だ」


ヤンが頷く。


「とりあえず、周辺国に散ってもらった人らと合流してからまとめましょう」


騎馬の民も全員一致でルイスに賛成した。

いい歳だろうと、怒れるお嬢と対面するには心の準備が必要だった。






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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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