39話 夏休みの終わりに。
後半に少々の残酷描写があります。
気にならない方には見つからないかもしれません(笑)
お嬢がニヤニヤしてて気持ち悪い。と、最近よく言われるが自分ではよくわからない。
「仕事に支障はありませんよ」とクラウス。
「所作が以前より丁寧になりましたね」とカシーナさん。
「魔法に頼らない護身も前より動くようになったな」とニックさん。
「は?人使いの荒いのはいつも通りですよ」とルイスさん。
「がに股が直ったんじゃねぇ?」とタイト。してねぇわ!
「お嬢の食への情熱は変わらないですよ」ハンクさん、人の事言えないでしょ。
「何か変わったか?」とグラントリー親方。
「はっはっは。王子を逃がすなよ」にこやかに頭をポンポンとするキム親方。・・・何かが含まれてる・・・
「可愛くなったわよー!」チムリさんそんな大声出さないでっ。
「ふふん、頑張りな」・・・うぃす、ネリアさん。
「もうちょっと髪を伸ばしてアンディにいっぱい触ってもらいな、綺麗になるよ?」・・・・・・返事に困るよケリーさん・・・
「結婚式は張り切って歌うからね!」・・・えーと、うん、そのうちお願いするね、ライラ。
「お化粧もしましょうか?」う・・・ん、まだ子供だからいいよ、インディ。
「今からたくさん狩っておかないとなぁ」・・・張り切り過ぎだって、ラージスさん。
「ふふっ、可愛いですよ」・・・ありがと、ナタリーさん。
「あのお嬢がとうとう・・・アンディやったッスね!」トエルさんに言われるのもなぁ。
「お嬢様顔が崩れてますよ」ハッ!?ありがとルルー!
「ほらな?気持ち悪いじゃん」マーク・・・お前もうちょっと考えろ。
「やっと自覚した?・・・の、かなぁ・・・?」・・・あの、ミシルもできればそっとしてくれる・・・?
「「「 やっぱ、お嬢が気持ち悪い 」」」
子供たちよ、によによと私を見るなああぁぁぁ!!
***
「アンディ兄上は次はいついらっしゃいますか?」
夏休みも後半。優秀なスタッフのお陰で少ない書類を片付けている時にサリオンが執務室へやって来て、忙しいところをすみませんと唐突にそんな質問をした。
今ちょっと微妙な私は机に突っ伏す。
それをクラウスとルイスさん、クインさんがにやりとして見てる・・・気がする。
「姉上?」
「あ、ごめんごめん。えっと、学園に戻る日に来るよ。明後日の朝だわね。急ぎの用?」
「いいえ。舞台での新しい踊りを見てもらう約束をしていたので。皆も納得の出来になったので披露したいなって話してたんです。姉上も兄上と見て下さいね」
え~、私には先に見せてくれても良くない?
さっきの恥ずかしさもあり、ほんの少し不貞腐れてみたら、サリオンがアンディのように苦笑した。
またも突っ伏す私。
「サリオン、アンディに似過ぎ・・・」
「本当!? やったぁ!」
コトラのような元気な動きに笑ってしまった。
「無理してアンディみたいにしなくてもいいんだよ?」
「無理じゃないです。だって兄上は目標ですから。クインだってクラウスだって、兄上は貴族としての見本だと言いました。それに僕は兄上が大好きです!」
くっ・・・キラキラした顔で言うなぁ。
「姉上も兄上を好きですよね?」
「ふぐっ!?」
私の呻き声に執務室に苦笑が響く。
「そりゃあ好きですよ、婚約者ですし。ねえお嬢?」
ルイスさんがによによと仕掛けてきた。
そりゃあそーだとも! 友達の頃から!・・・友だち、婚約者・・・・・・私が婚約者でいいのかなぁ。
アンディからの好意は安心する。あたたかい。
私に見せる顔はいつも優しい。もちろんふざけ合ったりもしたことはある。
ケンカとか、実は想像できない。
ビアンカ様やクリスティアーナ様に嫌味を言われた時。あの時くらいしか怒った所を見たことがない。
何であんなに穏やかなんだろう?
王子だから?
普通、中学生なんて反抗期真っ盛りだったり、無駄に元気だったりするのに。領のその年代はとにかく元気だ。そのすぐ上の代が見張っているからケンカ程度で大きな問題はないけども。
比べる所が違うだろうけど、貴族というものがそうなのだとしたら、アンディは正しく貴族であると言える。
侯爵夫人がドロードラングでのアンディはとても楽しそうと言うので、馴染んでいるのは嬉しい。泥だらけになるのも厭わない。
合宿の時だって当たり前のように参加してくれたのがとても嬉しかった。
それでもふと思う。私に合わせてばかりでどこかで無理してないだろうか?
「僕は、姉上と兄上が一緒にいるととても安心します」
サリオンがうふふと言う。
「両親の事を覚えていませんが、姉上と兄上がそうなのだと思ってます。僕と歳が近すぎますけど」
・・・え、
「マークさんとルルーさんだったり、ルイスさんとカシーナさんだったり、ラージスさんとナタリーさん、トエルさんとライラさん、ダンとヒューイたち、夫婦は二人揃うと同じ雰囲気になります。兄上と姉上にも同じように感じます。
最初はクインに安心がありました。安心という意味も後から分かりましたけど。
初めてお会いしてから、姉上はそれまでの何よりも温かかった。とても心地好かった。でもある時から少し変化しました。何がその原因かはわかりませんでしたが、姉上がとても安心している事が僕にはとても心地好いとわかりました。
兄上がそばにいる時がそうだと気付いてから、夫婦の間にもそれぞれに同じようなものがある事を感じました。
皆に背負われてた時からそう感じていましたよ?」
ちょっと待て。ものすごい事を言われたけど理解できそうでできない。
それでも顔だけ熱くなる。
「だから僕は、兄上を姉上と同じように信頼してます」
たたみかけるように続けるサリオン。
え、だからアンディに似てるの? 親に似るように? 私が信じているように?
「白虎も、僕に接する兄上をアンドレイ様で良かったなと言いました。優しくも厳しい事は白虎にもわかるそうです。僕も姉上の弟で良かったと誰からも言われるように、兄上のように姉上の為に頑張ります!」
またも突っ伏した私の周りで大人たちの含み笑いが起きた。




