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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
119/191

続続36話 夏合宿その3。<最終日>

そして陽が暮れて。



テーブルに乗った、会場を飾る花があちらこちらからぼんやり光り出す。

眩しくなる前にまた弱まる光。

何度か繰り返し、一斉に強まって、ふっと消える。

同時に屋敷の扉が光で縁取られ、歌姫たちの歌が始まり、騎馬の民の弦楽器も響く。


ゆっくりと左右に開いた扉をゆっくり進むのは、白い衣装の新郎ダンと新婦ヒューイ。


ヒューイのドレスはいつかの雪像のドレスのように花をモチーフにした飾りがたくさん付いている。そしてベールがとても長い。足元まで流れるベールにも小さな飾りが付いている。


二人のお辞儀に合わせて、また花たちが淡く光り、屋敷から亀様像に続くバージンロードも、二人の歩みに合わせて淡く光る。


亀様像の前で止まり、一礼する。

すると、亀様像の草花で作られたアーチも色鮮やかに光り出す。


《今宵、新たな夫婦を迎える事を嬉しく思う。晴れ渡る夏空の様に、お前たちの日々が心豊かに過ごせる事を、我は望む》


初めて亀様の声を聞く人が何事かとざわめく。


《新郎ダン。新婦ヒューイ》


二人が亀様に寄り、像に手を置く。


《二人の・・・婚姻を結ぶ証に、誓いの言葉が要る。・・・新郎ダン》


「はい」


《健やかなるときも、病めるときも、どのような時も、変わらず、妻となるヒューイに愛を捧ぐことを誓うか?》


「誓います」


《新婦ヒューイ。健やかなるときも、病めるときも、どのような時も、夫となるダンに愛を捧ぐことを誓うか?》


「・・・はい、誓います」


《二人の誓いを受け取った。今この時より、二人は夫婦となった。その命の限り、二人に幸があるように、誓いの口づけを》


向かい合い、ダンがヒューイのベールを捲る。

そして両の手を取った。真っ直ぐヒューイを見つめる。


「前も言ったけど、亀様の前でもう一度ヒューイに誓う。

俺は病気にならない。長生きする。だから、永くヒューイのそばにいる。子供もたくさん育ててヒューイを寂しくなんかさせない。だから、俺と幸せになろう」


そうして、涙を流して微笑むヒューイにキスをした。


はぁ~!カッコ良くなったな~!


「ダン、格好良いね」


隣に座るアンディがこそっと言う。アンディも同じ事を思ったのがおかしい。ですよね~!だよね~!


「フフッ、そうね!」


会場の盛り上がりと祝いの歌に合わせ、小さな光がふわふわと上空へ集まる。速いもの、遅いもの、幾つもいくつも現れてはふわりふわりと昇っていき、一つに集まっていく。


もう一つの月のように輝く光に、マークからそっと渡された弓を、新郎ダンが構え、射つ。

光る魔法の矢は光の軌跡を残しながら天空の光に吸い込まれ、破裂した光が小さくキラキラと降ってくる。


会場中に降り注ぐ光に歓声が上がる。


そして新たな曲が流れ、新郎新婦の周りを三年の生徒たちが白の揃いの衣装を着て簡単なワルツを踊る。

男子は詰め襟のシャツにスッとしたパンツ。騎士科だけにスタイルが良い。

女子は袖のないAラインのワンピース。胸元やスカートの裾にもらった綿レースが使われて、大人可愛い感じに。


ふっと、ベールの裾端をダンが両手に持ち、ヒューイがそれに手を重ね、生徒たちと一緒にクルクルと回りだす。


ふわりと膨らむベールが綺麗で、それに合わせて光も舞う。

女子の翻るスカートの裾にも光が舞い上がる。


会場のどこからか手拍子が始まり、全員が揃った。

叩いた手からも光が飛ぶ。会場中が更にキラキラとする中、静かにダンスが終わる。


新郎新婦と踊り子たちがお辞儀をすると、また大きな拍手が起こった。


そこに、ハンクさんがいつものウェディングケーキを運んでくる。

ナイフを渡し、息を整えた二人がケーキにナイフを入れる。また、拍手。ナイフを受け取ったハンクさんが笑う。


「おめでとう」


そして二人は会場の人々にまたお辞儀をした。



今回はお色直しは無し。

なんと、ベールに付いていた小さな花は女子生徒が縫い付けたんだそうだ。

触っただけで緊張する綺麗な生地にキャシー先輩ですら手が震えたそうで、食事が始まる頃には皆がホッとして大泣きした。


「お嬢が先生になって生徒さんを連れて来るって聞いたから、思い出にしてもらおうと思ってお願いしました。付けてもらえて私もとても良い思い出になりました」


ヒューイが女子生徒一人一人にありがとうと握手をし終えてから教えてくれた。


なるほどね~。良かったー、私誘われなくて!


「お嬢様にはご自分のベールを縫ってもらいますよ」


嘘でしょカシーナさん!? マジですか!?



男子は男子で、今美味しそうに丸焼きになっている子豚を仕留めたそう。何だかんだと男子生徒の世話を率先してやってくれたのはダンだったから、お返しになればいいとアイス先輩が言った。


二人の後ろで踊ってもくれたし、皆ありがとう、お疲れさま!

いっぱいご飯を食べなさいよ~!



そしてホテル勤務と交替しての第二部。と言っても、料理を追加してワルツを披露して、だけだったけど。


皆が「あのダンがな~!」と微笑むのには笑ってしまった。

確かにちょっと早い結婚な気はするけど、ヒューイへの誓いの言葉は良かった。


最後は皆でわいわいごちゃごちゃと踊って結婚式は終わった。

は~、今日も良いお式でした。



後片付けをしてる時、手を動かしながらアンディが「僕も、こっちで結婚式挙げたいな」と言った。


「え?」


「皆がお嬢にどんなドレスを準備するのか見てみたい。光の結婚式でお嬢がどれだけ素敵になるか皆に見せたい」


にこっとするアンディに見惚れながらも想像してみた。


服飾班渾身の衣装を身に着けたアンディの隣で、鼻血を抑えるのに必死な私が見えた。


・・・あれ?





***





ぎぃゃゃあああああぁぁぁああ~!!


おおぅ、見事だな~。

ジェットコースターから響く悲鳴に感心しながらの合宿最終日。

今日は仕事はせず、午前中に遊園地からの温泉コース。お昼を食べてからシロクロ荷車で各々を送って行く。


新しいアトラクションはモンスター(おばけ)屋敷。

・・・だったんだけど。腕の立つ人がバンバンと壊していくから、これはちょっと保留だわね。お客さんに怪我をさせる訳にはいかないし。


まさかの反応だったわ~。だよね~、魔物と出会ったら殺られる前に殺れが基本だもんね~・・・それにしたって張りぼてでも壊されると修理費が・・・


悲鳴をあげながらもジェットコースターは好評で何度も乗ってもらえた。


「最初に空を飛んだからか、恐いは恐いが面白い」と先輩たちが言う。


「お姫様になった気分!」とメリーゴーランドも女子に人気。


全ての遊具で楽しんでもらえたので良かった。



「なんか、掃除してないのにお風呂に入るのが申し訳ないわ~」と服を脱ぎながらキャシー先輩たちがぼやく。

今日はお客様気分になっていいのよ~。


大きな浴槽、景色を見ながらのお風呂に、男女とも満喫してくれたようで良かった。

屋敷のお風呂も大きめだけど、外の景色を見ながらも良いでしょ?




「はぁ、最後の食事か・・・」


生徒たちがため息をつく。

あれ?最後の晩餐みたいになってる。


「正直、家に帰ってからの食事がツラい・・・」


誰かのぼやいた言葉にハンクさんが笑う。


「そんな事を言うけどな、育った家庭の味が一番だよ」


「いえ!落ちこぼれと言われても学園に入って良かったと思ったのは美味しい食事がたくさん食べられる事です!」


スミィの力説に平民生徒が力強く頷く。

ハンクさんはさらに笑った。


「じゃあ王都の店で料理を教えよう。向こうの奴らに話をしておくよ。いいですかいお嬢?」


OK~。


「え!やった!」「あ、じゃあ僕も参加して良いですか?」「すみません!私も!」「ぼ、僕もお願いします!」


「待て待て、そんなに大人数用の厨房じゃないから、何人かに分かれてだな。学園の勉強が優先だから、お嬢と学園長と相談しながらだよ」


はい!!


と元気な返事をして、おろしハンバーグ定食を食べた。

おお、スゴい勢いだ・・・


「お嬢はどんどん忙しくなるね」


できるだけ手伝うよとアンディが笑った。


・・・あれ? また自分で首しめた!?







お疲れさまでした。

これで一応合宿は終わりです。無理矢理感がありますけども終わりです!

次回はミシルの村でしょう。…たぶん…


ではまた次回お会いできますように。


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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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